暴かれるもの
オーズが倒れたことで新たな一幕が開ける。
「フッフッフッフッフッ…!!!たまらねェフッフッフ!!!」
「何がおかしいドフラミンゴ!!!」
高らかに笑うドフラミンゴの前に立ち塞がる白ひげ海賊団13番隊アトモス。そして白ひげはオーズの姿を見ていた。
「オーズ」
「スキを見せたな白ひげ……!!悲しんでるヒマはねェぞ!!!」
白ひげに襲いかかる巨人族の海軍将校ロンズ。だが白ひげはロンズの頭部を掴むとそのまま兜を砕くほどの力をかけた。
「ロンズ中将!!!」
「巨人族がひとひねり!!」
ざわつく海兵。白ひげはクルー達に向かって叫ぶ。
「オーズを踏み越えて進めェ!!!」
「ウォオオオオオ〜!!!」
「ベッキー!!!」
「!パパ」
「お前が先陣だ!!走れ!!!」
「…はい!!」
ベッキーは涙を拭って鬼撫子を手に走り始めた。
「フッフッフッフッ!!何がおかしいって!?この!!時代の真ん中にいる感じさ……フッフッフ!!今この場所こそ“中立”だ!!13番隊隊長水牛アトモス!!」
「……」
アトモスと対峙するドフラミンゴは自信げに笑った。するとドフラミンゴは指をくい、と動かす。アトモスは気付くが遅かった。
「しまった……!!」
「!?」
「お前らおれから離れろ!!」
いきなりアトモスは自分の部下達に攻撃し始めたのだ。
「うわァ!!!やめろドフラミンゴォ!!!」
「ぐわァァ!!!」
「ぎゃあ」
人を操るドフラミンゴの能力でアトモスは次々と部下達を斬りつける。
「“平和”を知らねェ子供達と、“戦争”を知らねェ子供達との価値観は違う!!!頂点に立つ者が善悪を塗り替える!!!今この場所こそ中立だ!!!正義は勝つって!?そりゃあそうだろ
勝者だけが
正義だ!!!」
広場にドフラミンゴの叫び声が響いた。
「オーズの開いた道を閉ざすな!!!湾内へ進めェ!!!」
「!!」
すると、青雉の氷を砕いて一隻の船が現れる。
「!!!砕氷船!!?」
「“氷の魔女”ホワイティベイだ!!!」
白ひげ傘下の女海賊、ホワイティベイが満足げに笑った。
「お手のモンだよこんな氷塊!」
「ベイ!」
「ベッキー、ひたすら走るんだ!!」
いつもは友人同士、楽しく話をしたり共に遊ぶベイとベッキーだが今はそれどころではなかった。ベイの進攻により、湾頭2ヶ所を突破された海軍。同時に海兵達が電々虫でなにやら連絡しているのを白ひげは確認した。
「グラララ何か企みやがったな…!?智将“仏のセンゴク”……!!!」
処刑台に上ってきたのはガープだった。
「ジジイ…」
エースがガープをちらりと見た。
「何をしにきたガープ。作戦に異論でも?」
「……いや相手は海賊…同情の余地はない…」
「今から“あのこと”も話さざるを得ない」
「…?」
センゴクとガープの話を聞いていたエースは“あのこと”というのが気になった。
「悪党に同情はねェが…家族は違う…!!!わしゃあどうすりゃええんじゃい……!!!…………!!!
エース、ビクトリア……!!!なぜわしの言うとおりに生きなんだ!!!」
「ジジイ…!!!」
戦うベッキー。そして捕えられたエース…。
「ええかお前らは強い海兵になるんじゃ!!!」
だが、そんな思いとは裏腹にエースとベッキーは海賊として海へ出てしまった。それがいずれこの結果を招くことなどわかっていたのに…。
「………ガープ、血は争えん……」
センゴクが一歩前に出て
叫んだ。
「総員につぐ!!!」
「!!」
「なんだ!?」
「海軍元帥センゴクだ!!!」
「…!?」
海兵、海賊共にセンゴクを見上げた。
「どうしたんだいきなり…」
「…嫌な予感がするよい」
隊長達も見上げるばかりだ。
「…………」
白ひげは胸の内に感じた不思議な感情がセンゴクによって暴かれる気がした。
「その娘は…白ひげ海賊団2番隊隊員“白い王女”エンターズ・ビクトリアは知っての通り、この火拳のエースと男女関係にある!!!」
「……」
「そんなものはこの世界中よくあることだろう…海賊同士の関係は。だが、この二人は絶対に結ばれてならない!!!」
そう言ったセンゴクの声は一際強く感じた。エースとベッキーが強張る。
(…っバレている…!!全部…)
「結ばれてはならない…?」
「どういうこった…」
戦争の様に唖然としていたコビーとヘルメッポが呟いた。
「火拳のエースは…海賊王の息子!!そしてこの娘…王女ビクトリアの本名は…
エドワード・ビクトリアだ!!!」
「…え…」
「…」
「エドワード…って」
海兵達が呆然としながら呟いた。白ひげ海賊団の面々はどうすることもできないといった顔つき。そして白ひげは――……
「……な…」
「白ひげエドワード・ニューゲートの実の娘がこの…エドワード・ビクトリアだ!!!」
…………
「「「「「「はァァアアァアアア!!!?」」」」」」
エースが海賊王の息子だとわかった瞬間以上に震えた世界の声。驚きを隠せない全世界の人々。だって、ならばつまり
「あの王女が白ひげの実の娘ェエェエ!?」
「じゃあ…まさか!!!海賊王の息子と白ひげの娘が恋人同士ィ!!?」
「ウソだろォォオ!!!」
ベッキーはざわつく中で息を切らして処刑台を見上げた。そしてエースは心配げにベッキーを見下ろす。
「…っベッキー」
「…………」
“その事実”がわかったのはエースとベッキーが白ひげ海賊団に入ってからだった。
「そうだろう白ひげ!!!お前は20年前、東の海の“歌の島”ポルテ島でひとりの歌姫に会った!!それがビクトリアの母親、エンターズ・ソフィーだ!!」
「………」
「ソフィーはお前を愛し、子を宿した…だがお前は大海賊…ひとつの島に錨は下せない!!そしてお前は生まれたばかりの娘に名を付け、島を去った。その後、ソフィーは体調を崩し、フーシャ村に移住。娘も一緒にな。そこでエースと出会い、共に過ごすうちに互いに想い合う仲になった!!」
「…っ」
センゴクの言うとおりだった。エースは今でもはっきり覚えている。ベッキーを見た時のあの感覚。年頃になるにつれて彼女への想いが募っていった日々。そして互いに愛を感じ、キスをしたあの日。恥ずかしげに笑うベッキーが可愛かった。
「やがて海へ出た火拳と王女はスペード海賊団として名を上げ…白ひげ海賊団に入った。その時、気付いていたんだろう!?白ひげ!!ビクトリアが自分の娘だと!!」
「…あァ」
「パパ…!」
「おれの娘だ……一目見ただけでわかったさ…ソフィーと同じ顔をしていやがる。…目は、おれと同じだ」
白ひげの敵を射抜くような金の瞳はそのまま、ベッキーに受け継がれていた。
フーシャ村では誰も言葉を発しなかった。ベッキーの父親が誰なのか…そしてこの場にいるソフィーの涙がすべてを物語っていた。車椅子の上で、ソフィーは映像を見ながらそっと呟いた。
「…ニューゲート……」
暴かれるもの
■あとがき
ついにベッキーの父親が明らかに。次回、白ひげとソフィーの過去話メインになります。
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