マリンフォード頂上決戦
彼は今
処刑台の上にいた。
これから始まるエースの公開処刑は全世界に生中継される。海軍の見せしめ。世界中の人々は固唾を飲んで見守る。この戦いには各地から腕のある海兵達を集め…さらには海軍の三大将、王下七武海も立ち会う。すべては白ひげ海賊団との決戦に備えてだ。
「…これより
ポートガス・D・エースの公開処刑を始める!!!」
センゴクの言葉がマリンフォードに響き渡る。エースは諦めきっていた。その身体中には痣や切り傷、その表情は暗い。すると、センゴクがエースに言った。
「…火拳。お前の父親の名前を言ってみろ」
「!!!」
エースの顔色が変わった。海兵達や中継を見ている人々は訳がわからない。エースの父親など、なにか関係しているのか。だがセンゴクはすべてを悟っている。
「…おれのオヤジは白ひげだ!!」
「違う!!!」
センゴクはエースを見下ろしながら
運命の一言を放った。
「お前の父親は
海賊王ゴールド・ロジャーだ!!!」
「「「「「!!!?」」」」」
全世界が沈黙した。そして後から湧き出る驚愕。生きていた。生きていたのだ。
「海賊王の血が…!!!」
エースの父親は海賊王ゴール・D・ロジャー。そして母は南の海のポートガス・D・ルージュである。ロジャーの死後、ロジャーに関わった人々は処罰を受けた。もちろん、海軍もロジャーの血縁については長年にわたり調べてきた。だが一切見つからなかったのだ。…母ルージュは腹の中にいた子を守るため、20ヶ月もの間エースを腹に宿し続けた。そして海軍の手が届かなくなった時、ようやくエースを産んだ。並大抵の精神力ではできない。それは子を想う母の強さ。だがエースを生むと同時にルージュは亡くなってしまった。死ぬ前、ロジャーは長きに渡るライバルだったガープにエースのことを託していた。ルージュ亡き後、ガープはエースを引き取り、山賊ダダンのもとに預けた。そこでエースはルフィやベッキーと幼少期を過ごしたのだ…。つまり
ルフィとは実の兄弟ではなかった。
「……っ」
悔しげに唇を噛み締めるエース。これは彼の最大のコンプレックスだった。世界最悪の犯罪者の血をひく。エースは幼い頃から自分の生まれた意味に悩んでいたのだから…
その時だった。
湾内に浮かぶ巨大な影。
「!!!」
「まさかあれは…」
ざわつく海兵達。見つめる三大将。
そしてついに
「モビーディック号だァァ!!!」
白いクジラの海賊船。しかも、コーティング船だ。
「やつらめ、コーティング船で海底を進んできたのか!」
センゴクが呟いた。モビーディック号には白ひげ海賊団の姿。
さらにはその後ろから多くの海賊船が姿を現したのだ。雷卿マクガイ、氷の魔女ホワイティベイ、大渦蜘蛛スクアード、ディカルバン兄弟、遊騎士ドーマ等いずれも新世界で有名な海賊達だ。彼らは白ひげ傘下の海賊団。
「エースー!!!」
「助けに来たぞー!!!」
海賊達は口々に叫んだ。隊長達の姿もあり…そして、ついに白ひげエドワード・ニューゲートが姿を現したのだ!
「おれの愛する息子は
無事なんだろうな」
「オヤジィ!!!」
たまらなくなり、エースは叫んだ。仲間達は来てくれた。いや、来てしまったのだ…。
自分のために、戦争が起きる。
「…!あれは!」
海兵の誰かが叫ぶ。モビーディック号の船首に並ぶ白ひげ海賊団の中からひとつの人影が前に出てくる。ブーツの音がやけにマリンフォード内に響いた気がした。
「あれが…バナロ島で逃げ延びた…」
「火拳の女…!エンターズ・ビクトリア…!!!」
「…ベッキー…!!!」
モビーディックの船首に立ったのは髪を風に靡かせるベッキーだった。いつものように纏めてはおらず、そのままのミルクティー色の長髪が風に流れていた。だが、不思議なことにベッキーが現れた瞬間マリンフォードは誰一人口を開かなかった。それは、彼女の不思議なまでの美しさだった。これから戦争が始まるとは思えない、ベッキーの異様な美が海兵達を震撼させた。…その瞳は、エースを捕らえた海軍を憎むでもなく
ただまっすぐ
遠い処刑台にいるエースを見つめていた。
その姿は神々しいまでに美しく、エースも信じられないといった表情で見つめ返した。
「…っベッキー!!!」
「………」
その瞳にはエースしか映らない。
マリンフォード頂上決戦
next...
■あとがき
ついに白ひげ参戦!このあたりはコミックが無いんで記憶曖昧なんです(泣)
ベッキーの見つめるシーンはだいぶ前から考えてありました。
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