立ち上がる勇気




突然現れたハートの海賊団に海兵達は目を見開いた。何故あの海賊団がここにいるのだろうか。

「トラファルガー・ローです!!!“北の海<ノースブルー>”のルーキー!!!同じくラブネッシュ・リード!!!」
「先日シャボンディ諸島“天竜人の一件”にて取り逃がした、“麦わらのルフィ”と共犯の海賊!!潜水艦で救援に来た模様っ!!!」

「だからどこの馬の骨だってんだ」

バギーが呟く。彼はロー達を知らないのだ。

「急げ!!!二人共だこっちへ乗せろ!!!」

甲板からローが叫んだ。すぐに軍艦がロー達の船を狙ってくる。

「ロー船長!!軍艦が沖から回り込んで来た!!」

非常事態にセンゴクが海兵達に命令を下す。

「海軍全兵に告ぐ!!!『白ひげ海賊団』の追撃と、『黒ひげ海賊団』の迎撃に戦力を分けろ!!!」
「地下から海兵が上がって来るぞ!!!通路があるんだ!!!」

ティーチの地震能力が地盤を揺るがし…センゴクとティーチの闘いも続いている。

「ゼハハハハハ、何て痛快な能力だ……!!!」
「うわあああああ」
「だがまだコントロールがうまく行かねェな……!!!」
「ハァ…おォい船長!!無茶やるとおれ達の足場もなくなるぞ!!!」
「どうだ仏のセンゴク!!!英雄ガープ!!!おれを止められるかァ!!?“白ひげ”と共に…おめェらの時代も終わったんだよォ!!!」

地震により、近くのシャボンディ諸島に大津波警報が出されるほど。人々には一気に恐怖が広がる。エースと白ひげが死んだ事で戦争は終わるはずだった…。戦いは終わらない。




その中でひとり、苦しみ涙を流すのは…

「おいコビー!!…どうしたんだよお前!!」
「……ハァ…ハァ……わかんない……!!!悲しい………!!!」
「悲しいだァ〜〜〜!?」

それはコビー。ルフィと出会ったことで海軍入隊を決意した海兵の少年だ。そばにいるヘルメッポも元々海軍大佐モーガンの息子として権力をカサにしていたのだが今ではコビーと共に海兵として成長している。そんなコビーは突然泣き出したのだ。

「頭の中から…“声”が…一つ…一つ…消えてくんだ…!!!」
「はァ??」




戦争が終わる事が見えない。海兵達は逃げようとする海賊達を追い詰める。

「海賊共を追い込めェ!!!最期の一人まで叩き潰せェ〜〜〜!!!」

海軍少尉たしぎもまたその戦争の様に違和感を感じていた。

(士気が下がらない……!!!目的を果たした海軍の方が……明らかに激しく…!!!)

そしてスモーカーははっきりとした意思を持って感じた。

(何が違う!!“正義”も“悪”も……!!!




勝ってなお、




乾くばかりだ!!!)






「海賊という“悪”を許すな!!!」

クリエルを倒した赤犬が叫んだ。まさに先陣に立って海賊達を追いこんでいるのは赤犬だった。ティーチもまた叫ぶ。

「誰にもおれを止められねェのさ!!!全てを壊し!!!のみ込んでやる!!!」


















「ロー、危ないわ。大将が麦わらクンを!!」
「“黄猿”だ!!」

バギーを狙う黄猿の攻撃。ローやリードは空を見上げた。バギーは身の危険を感じてすぐジンベエとルフィをロー達のもとへ放り投げる。

「よしっ!!任せたぞ“馬の骨”共〜〜!!せいぜい頑張りやがれ!!」
「!」

落ちてきた二人を抱えたローの部下、ジャンバール。隣でクマのベポが叫んだ。

「受け取れ!ジャンバール!!よし!それでいいんだ」
「ジャンバール、ベポ!!室内へ運んでちょうだい!!」
「アイアイ、リード!!」
「海へ潜るぞ!!!」

ローが命令する。黄猿はルフィを逃がさないつもりで攻撃しようと狙う。

「シャボンディじゃあ…よくも逃げてくれたねェ〜…トラファルガー・ロー〜〜〜ラブネッシュ・リード…」

シャボンディ諸島で黄猿やパシフィスタの追撃から逃れたハートの海賊団。ベポはルフィを抱えて室内へ走る。

「うわァ!!ひどい傷だよ生きてるかな!!急ご…」
「“麦わらのルフィ”〜“死の外科医”ロ〜…“魅惑の女医”リード〜…」
「くそ…」
「黄猿の攻撃が来るわ!!!」






















「そこまでだァア〜〜〜〜!!!!」

響き渡る声。それは戦争を止めるような言葉。

「…………??」
「海兵!?」
「?」
「う!!」
(コビー!!!)

叫んだのはコビーだったのだ。

「もうやめましょうよ!!!もうこれ以上戦うの!!!やめましょうよ!!!




命がもったいだいっ!!!!



(兵士一人一人に…!!帰りを待つ家族がいるのに!!!)



目的はもう果たしてるのに…!!!戦意のない海賊を追いかけ…!!止められる戦いに欲をかいて…!!!今手当てすれば助かる兵士を見捨てて…!!!その上にまだ犠牲者を増やすなんて、今から倒れていく兵士達は……!!!まるで!!!



バカじゃないですか!!?」


叫ぶコビーの姿を誰もが見ていた。勿論、ベッキーも……。ベッキーはコビーを見つめていた。

(……助かるかもしれないのに……死んでいく仲間………これ以上…戦いを続けても……死んでいく仲間たちが増えるだけ…)

これ以上仲間が死ぬのは耐えられない…ベッキーの脳裏に浮かんだ…





今は亡き……夫と、父の姿……






「……私も!!!」
「!!?」
「彼の言う通りだと思うわ……!!!これ以上戦いを続ければみんな死んでいく…!!!そんなの……そんなのエースやパパが望んだ事じゃない!!!パパは自らの命をもって戦争を終わらせたかった……!!!ならば残された者達は戦いを止めるべきよ!!!



お互いこれ以上無駄な死はいらない!!!!」

「ベッキー…!!!」

命の尊さを訴える二人の若者に一時、場は静かになった。だが赤犬がコビーに近付く。

「生意気な口を…王女がァ。それにしても…誰じゃい貴様ァ……!!!…“数秒”…無駄にした……正しくもない兵は海軍にゃいらん…!!!」
「え…」

赤犬はマグマの拳をコビーに振りかざす。

「ああああああああ!!!(ダメだ死ぬ!!――だけど僕は!!言ったんだ!!!言いたい事を!!!くいはない!!!)」

自らの死を覚悟したコビー。ベッキーも思わず身を乗り出してしまう。



















「!!?」


赤犬の攻撃を防ぎ、コビーを守ったのは一本の剣だ。しかもその持ち主は信じられないような男。

「え…………!!」
「………!!」

コビーはあまりのショックに気絶してしまう。コビーを守った男は口を開く。

「……よくやった…若い海兵。お前が命を賭けて生み出した“勇気ある数秒”は…良くか悪くか、たった今世界の運命を大きく変えた!!」






ハートの海賊団では急いでルフィを線内へ運び、潜る準備を始めていた。それを止めようとする黄猿を狙う銃口…

「何もするな“黄猿”!!」
「……おォ〜っとっとォ、ベン・ベックマン〜〜…!!」

世界でも指折りの銃の使い手、ベン・ベックマンの姿があった。そして湾頭に浮かぶ一隻の船…レッド・フォース号。

「え……!!?」
「あれは……!!」
「あの船……!!」
「何でここに……!!」
「“四皇”がいるんだよ…!!!」





「“赤髪のシャンクス”だァ!!!」








ルフィの憧れとなり、海賊を目指すきっかけを与えた男。シャンクスは落ちていたルフィの麦わら帽子を拾い上げる…





「この戦争を、終わらせに来た!!!」



立ち上がる勇気





■あとがき
シャンクス登場!戦争もあと一話で終了…後日談が入りますが連載ももうすぐ完結に向かいます。


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