闇の時代
瞬く間に世界に広がるニュース。“白ひげ海賊団”ロジャーの息子エース救出失敗、そして船長“白ひげ”の死――末々に語られるこの歴史的大事件を、その目に映した者達は…今は、ただ、声を呑むだけ。
「…………、逝ったか…白ひげ」
シャボンディ諸島で映像を観ていたレイリーは呟いた。
そしてフーシャ村……
「……!!!エース!!!」
「…白ひげが、死んだ…!!!」
「…………そう……あの人…………」
「!!ソフィーさん!!しっかり!!!」
涙を流して崩れ落ちたソフィーを支えるマキノ。
「…ニューゲート……すぐ会いに行く……」
享年七十二歳、かつてこの海で“海賊王”と渡り合った男………!!そして、“白い王女”エンターズ・ビクトリアの実の父親…。白ひげ海賊団船長“大海賊”エドワード・ニューゲート、通称“白ひげ”。マリンフォード湾岸にて勃発した、白ひげの海賊艦隊VS海軍本部、王下七武海連合軍による、頂上決戦にて、死亡。
「モタモタするな!!船に乗れ!!!最期の船長命令を忘れたか!!!」
「ジンベエ!!エースの弟を早く!!」
「おう!!」
海賊達は最期の船長命令に従い、必死に船へ乗りこんでいく。マルコもベッキーを連れて走り始めた。
そしてティーチはある計画に移ろうとしていた…。
「ハァ…ハァ………へへへ!!さァ始めるぞ!!」
すると、黒ひげ海賊団が白ひげの遺体に黒い大きな布をかぶせた。
「あいつらまだ何かする気だ!!」
「ティーチの奴……!!!」
「死んだオヤジに何を…!!!」
海兵達や海賊達はその行動に驚きを疑惑を隠せない。ティーチはニヤリと笑う。
「ゼハハハハハ…見せてやるよ、最高のショー」
それだけ言うとティーチは黒い布の中に入っていく。
「何だあの黒い布。“黒ひげ”と“白ひげ”があの中に……!!」
「何のマネだ貴様ら!!!」
「ホホホ。さて少々…立ち入り禁止に願います」
「楽しみねェ!!」
「失敗したら解散か……?おれ達は」
ジンベエが白ひげ傘下の海賊達の船へ乗り込もうと走る。
「ジンベエこっちへ乗れ!!!」
「おう」
「ん!!?」
だがその瞬間、海が凍りついていく。これは…
「しまった!!」
「海を凍らされた!!!」
「急いで何とかしろ!!!」
「出航できねェ!!!」
「“青キジ”を抑えろォ!!!」
そして、陸地にも敵が迫っていた。地面が割れ、マグマが噴き出す。
「え」
「!!!」
「!!?」
「わしが『逃がさん』言うたら、――もう生きる事ァ諦めんかいバカタレが…」
「赤犬!!!くたばってなかったのか!!!」
「地下を溶かして回りこんで来たんだ!!!」
ジンベエの前に立ち塞がる赤犬。
「――そのドラゴンの息子、こっちへ渡せ……!!ジンベエ」
「……そりゃあできん相談じゃ。――わしはこの男と、…あの娘さんを!!命に代えても守ると決めとる」
「――じゃあもう…二度と頼まんわい……!!!」
マグマの拳がジンベエに近付いていく。一気に海賊達が助けに向かおうとする。
「エースの弟を守れェ!!!」
「エースの家族はおれ達の家族だァ!!!」
赤犬の拳がジンベエに近付いた時――……
ガキィィィイン!!!
「!!!」
「私の弟に…手を出すな!!!赤犬!!!」
赤犬のマグマを止めたのは鬼撫子。ジンベエの前に現れたのはベッキーだった。その眼差しは強いもの。
「王女ォ……!!!貴様ァ、火拳を失い、自暴自棄になりおったか!!」
「いいや違うわ…!!!エースを殺したお前が憎くてたまらないのがひとつ…!!!あとのひとつは、ルフィを死なせないためよ!!!」
再びベッキーが刀の斬撃を繰り出す。だがそれは先程までとは違い、信じられないほどの威力で赤犬をも圧倒する。
「クウ……!!!(この娘ェ…さっきとは違う……!!)」
「“蝶舞(チョウブ)………辻霧<ツジギリ>”!!!」
ベッキーが軽くジャンプをし、赤犬の首元を蹴り飛ばした。
「ぐ……あ…!!?」
「……夫の仇だ…!!」
空へ舞い上がるとベッキーは足で何やら空気をかき混ぜるような動作をした。…途端に風が巻きあがる。
「!!!」
「貴様…!!」
「“風神様の舞<トールダンス>”!!!」
「わ!!」
「あ、あれは何だァア!!」
海兵達が驚きの声をあげる。目の前には巨大な風の渦。気圧によって生まれた巨大な台風の目だ。台風は赤犬や海兵達を巻き込んでいく。
その頃、ティーチが布から出てきた。
「黒ひげが出てきたぞ!!」
「何をしてたんだ!?一体…」
「“白ひげ”に異変もない!!」
「“黒ひげ”にも特に…」
ティーチや白ひげは見たところ変わりは無い。だが、何もかも知っている黒ひげ海賊団はニヤニヤと笑っているばかり。
「海軍ん〜〜おめェらに、おれの“力”ってモンを見せておこう…晴れて再び敵となるわけだ…ゼハハ…
“闇穴道<ブラックホール>”!!!」
「う!!!何だ!!?」
「これがおれの!!!ヤミヤミの実の力」
「うわァ」
いきなり闇が広がり、海兵達を引きずり込んでいく。
「…………そして……!!」
次の瞬間、ティーチが見覚えのある構えを見せた。それは白ひげ海賊団なら誰もが知っている…ベッキーもマルコも目を見開いた。
「!」
「え…」
「……あの構え…」
「!!?」
その構えは白ひげの――………
ボォォン!!!
「!!?」
「!!!」
海軍本部に響き渡る地震。そう、これは白ひげの能力……グラグラの実の地震だ。
「うわ!!」
「…………!!」
「……え…」
「あれは………!!“グラグラの実”の能力」
「し…死んだ“白ひげ”の能力を…!!なぜあいつが使えるんだ!!?」
「ゼハハハハ」
「ウィ〜ハッハ〜〜やったな船長〜〜!!」
「オヤジの地震能力!!?」
「どういう事だ!?ティーチの野郎!!!」
「ゼハハハハ!!全てを無に還す“闇の引力”、全てを破壊する“地震の力”!!!手に入れたぞこれでもうおれに敵はねェ!!!………おれこそが“最強”だ!!!」
どういうわけか、白ひげの地震能力をティーチは受け継いだのだ。どういう方法なのか、それはティーチにしかわからない。だが言える事は……まさに……最強最悪の海賊が生まれてしまったという事。
「何をしたのかわからないが…、“白ひげ”の能力を奪ったんだ……!!!」
「なぜそんな事が!??」
「じゃあ…“グラグラの実”の脅威は…終わってないのか…!!!」
「確か…悪魔の実の能力を二つ得る事は不可能なハズじゃあ…」
「“普通の人間”ならば…絶対に無理だよい。だがお前らもよく知る様にティーチは少し違う…!!体の構造が…“異形”なんだよい!!――それがこの結果を生んだのか……!??」
「パパの地震の力と…あの闇の力が混ざったら………この海で一番の強さ……っ」
ベッキーが言うように、まさに二つの能力を手に入れたティーチは最強……白ひげの能力を手にしたのだから。
「オイ…見たかおめェら、ゼハハハハハ…!!よォく世界に伝えときなァ…!!平和を愛するつまらねェ庶民共!!海兵!!!世界政府!!!そして…海賊達よ!!!この世界の未来は決まった…、ゼハハハハハ…!!そう…ここから先は!!
おれの、
時代だァ!!!!」
「……………!!!」
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