監獄の彼





海賊ポートガス・D・エースの逮捕。そんなニュースが世界中に出回った。あの白ひげ海賊団の若き幹部。それは、海軍と白ひげの正面衝突を意味していた…。















大監獄インペルダウン。世界中の犯罪者達が送り込まれるまさに地獄。その最下層Lv6は世に出してはいけない者達がいる。そこに囚われたエースと、七武海“海峡のジンベエ”がいた。

「…エースさん…ベッキーさんが心配か」
「………あいつはうまく、逃げてくれたのか…気がかりで…仕方ねェ…!」





バナロ島の決闘で逃げ延びたエースの恋人、ベッキー。海軍は未だその行方を探しているが発見できずにいる。エースはティーチとの戦いでベッキーを逃がした。自分が捕まった今、彼女は無事なのか。それだけがエースの不安だった。

「おれは…っ、あいつを危険にさらす訳にはいかねェ…!!あいつだけなんだ、このおれが。呪われた運命のおれが愛したのは、生涯でただひとり、おれの…!おれの心を救ったのは、ベッキーだけなんだ…!!!」
「エースさん…」
「おれとベッキーは同じ気持ちを感じていたんだ。おれもベッキーも、親の愛を知らねェ…!それでも、それでもあいつは





おれを愛してくれた

繋がれた両手の鎖が冷たく鳴る。もうあの時の自由は得られない。ただ、もう一度だけ。彼女を抱き締めたかった。

「エースさん、ベッキーさんはアンタのことを誰よりも想っとったじゃろう…!そしてエースさん、アンタも」
「わかっている…わかっているんだ!ベッキーはおれを助けようとするだろう…!!だからダメなんだ!!!来てほしくはない!!!来れば、あいつも殺される!!!そんなのは望んでねェんだ!!!」

最悪のシナリオを想定する。ベッキーだけでなく、白ひげ海賊団すべてがエースを助けるため、海軍とぶつかることだ。そうなれば仲間は傷つき、命を落とすのは間違いない…

「おれのために…誰も死んでほしくねェ…!!!」
「………エースさん」














しばらくして、署長マゼランに連れられて王下七武海のボア・ハンコックが姿を現した。その時、彼女から告げられた事実はエースをさらに驚愕させる。

「ルフィが…!?」
「海兵達の情報ではそなたの愛しき者も動き出しているらしい」
「!!!」
(ベッキー…!!)

皆が、自分のために命を投げうる覚悟でこちらに向かっている。それにまさかルフィまで…!!ハンコック達が帰った後、エースの不安は恐怖へと変わっていく。

「弟なんだよ…!おれの…!」
「………」
「ジンベエ…ティーチを追っていた航路で、3年振りに弟に会ったんだアラバスタ王国で…」
「…………」
「一目会っておれは…安心した。なぜだと思う?」

ようやく笑みを見せたエース。

「おれがそこで見たのはよ…ジンベエ……」





アラバスタで再会した弟ルフィは仲間達に囲まれ、楽しそうに笑っていた。

「──もうおれの後ろをついてまわるだけの、昔のルフィじゃなかった……!!あいつにはもう…頼もしい仲間達がいた。何があっても大丈夫さ。おれは。安心したんだ」

エースの目にはルフィの姿が映っていたに違いない。ジンベエはそんなエースを見つめていた。





すると…





「ポートガス・D・エース」

マゼランと看守達が檻の前にいた。

「…!」
「時間だ。






お前を処刑台のある町、マリンフォードに護送する



監獄の彼



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■あとがき
インペルダウンでのエースの気持ち。インペルダウン編が手元にないのでアニメの記憶を頼りに綴っています。

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