誓いのキスをください





「“火拳のエース”が


解放されたァ〜〜〜〜!!!」


ついに解放されたエース。海賊達が一気に湧き上がる。

「やったぞ麦わらァ〜〜!!!」
「エースを奪い返したァ〜!!!」
「インペルダウンから無茶の連続…!!!あいつホントに!!!」
「やる男っチャブル!!!」

インペルダウンからの脱獄囚達もルフィの行動に驚きを隠せなかった。エースとルフィ、Mr.3は地面に着地しようとする。

「気ィ抜くなルフィ!!」
「おう!!!」
「“火柱”」
「うわあああ〜〜っ!!!」

エースの火が柱となって海兵達を寄らせない。ジンベエも嬉しそうに叫ぶ。

「エースさん!!ルフィ君っ!!!」

白ひげの口元にも笑みが浮かんだ。海兵達は三人を取り囲むように走って来る。

「強いぞ気をつけろ!!!」






「戦えるかルフィ!!!」
「勿論だ!!!ハァ…!!!ハァ…!!!」


解放されたエースは存分に炎を出しまくる。数ヶ月間、ずっと海楼石の手錠により封印されてきた力。海兵達は怯む。

「火拳のエースは“火”『自然系』だぞ」
「絶対に逃がすな!!!」

エースはニヤリと笑ってルフィを見る。

「お前に助けられる日が来るとは。夢にも思わなかった。ありがとうルフィ」
「ししししっ!!白ひげのおっさん達が助けてくれたからな!!」

照れくさそうにルフィは笑う。そんな二人に海兵達は銃弾を浴びせる。

「助かった気になるなァ!!!」
「ここがお前達の処刑場だ!!!」

だが、エースとルフィに銃弾は効かない。さらにルフィの場合、それは跳ね返るのだ。海兵達がルフィに斬りかかろうとした時、エースが自らの体を盾にした。勿論、斬撃はエースには無意味。ニヤリ、と笑ってエースは言った。

「弟なんだよ手出し無用で頼む!!



“火拳”!!!」
「うおおおおお!!!」


エースの得意技が繰り出され、海兵達は一気に吹き飛ばされた。ルフィも蹴りを飛ばして応戦。それを見ていたビスタが呟いた。

「ふふ!!なんて息の合い様だ」
「二人の逃げ道を作れェ〜〜〜〜〜!!!」

まさに最強の兄弟。エースとルフィに海兵達は誰も太刀打ちできない。

「“火拳”と“麦わら”を



処刑しろォ〜〜〜〜〜!!!」


海兵達が一気に武器を手に二人に襲いかかろうとした………







次の瞬間。





「圧力<プレッシャー>!!!!」
「!!?」


いきなり海兵達に凄まじい圧力がかけられ、ほとんどの海兵が地面にひれ伏せてしまう。

「ぐああああ!!!」
「あ、あいつ…!!」

圧力に耐えながら海兵達が空を見ると……








「…!!」
「…っ」

(――ずっとずっと……この時を願っていた)






空に舞うその影はまっすぐ、そしてゆっくりと――…エースの炎のもとへ……




「…!!



ベッキー…!!!」

エースの表情が笑顔になっていき、炎を弱めて両手を広げた。海賊達も皆この時を待っていたのだ。






「――エース!!!!」




空から降ってきたベッキーは勢いよく、エースの腕の中に飛び込んできた。…ずっとずっと…あのバナロ島で別れて以来…ようやくエースとベッキーは触れ合った。その光景こそ、オーズが、海賊達が、白ひげが、ルフィが望んできた…二人の再会。ずっとずっとこうしたかった。

「ベッキー……!!」
「エース…!!!エースっ、エース!!!」

ベッキーがエースの背に手をまわして強く抱きつく。痛みの走る右腕を必死に伸ばした。エースはふと彼女の右腕を見てゾクッとした。処刑台で見下ろしていた時よりもずっとひどい火傷。自分の火なんか目じゃない。

「ベッキー、お前…!この腕…っ」
「エース、やっと…やっと抱きしめてもらえた…!よかった…っエース…!!!」

とめどなく涙が流れ落ちる。ベッキーはエースの温もりを感じて心から安心していた。そして湧き上がる愛おしさ。それはエースも同じ。

「……ベッキー…っおれは…」

あの日――バナロ島でエースはベッキーを逃がした。もう二度と会えない…そんな気がしたから…。だが、今ベッキーは自分のために必死に戦い、こうして腕の中にいる…!エースも涙を浮かべてベッキーを強く抱き返した。

「ベッキーっ、すまねェ…!!本当にすまねェ!!!おれは…お前にこんなケガまでさせて…!!!赤ん坊を危険にさらさせて…っおれは父親失格だ…!!!」
「エース…そんなことない…!!エースが…私とこの子のために生きていてくれるなら…!!!」
「…っ」
「もう私を離さないで…エース!!!」

その言葉にエースの見開かれた目から涙がこぼれた。



…ずっと生まれてきた意味を探してきた。海賊王ロジャーの息子…世界から望まれない存在。だが、それでも一人の女の子に恋をした。そして16歳のあの日――…





「ベッキー、おれは…どんなに望まれなくても…いつか生きる証を見つけたかった。……海へ出て。…でも、おれは…今…もう見つけたんだ。……お前だ、ベッキー…





おれはお前が好きだっ…」





夕焼けに照らされた二人…あの時、ベッキーは微笑んでエースの頬を撫でた。





「……私の欲しい言葉、いつだってくれるんだね、エース」
「ベッキー…っ」
「…私はエースがいないと生きていけないんだけど。………エースと私の気持ちは一緒だったのね」


その時、エースは初めて救われたような気がした。初めて人を愛し、愛された。幼い頃からずっと変わらないこの愛は不変。たとえ呪われた鬼の子でも、自分にも愛してくれる人がいた――……










「…ベッキー…ベッキー!!!」

ぎゅうっとエースは抱きしめる腕に力を込めた。そして叫ぶように言う。その顔は涙で濡れている。

「ベッキー、もうお前を離したりなんかしない!!!おれは…おれにとってお前は永遠の、…初めておれを愛してくれた人だ!!!おれはもう二度とお前を離さない…っ愛してる…


愛してるんだ!!!ベッキーっ!!!!」
「……エース…!!!私も…っ」
「腹の子もおれが守る!!!例え父親が…互いに大海賊でも…っおれとお前は出会って愛し合った!!!その証…おれが求めてきたものをお前がくれたんだ…!!ありがとう…ベッキー…!!」


誰もが手を出せなかった。エースはベッキーを抱きしめながら鳴いて愛を叫ぶ。海賊達までも涙を流していた。

「よ、よかったなァ〜エース!!!」
「ベッキーちゃァ〜ん!!!」
「……エース…!ベッキー…!」

その様子を白ひげが切なげに見つめる。

「…………」








エースはそっとベッキーの腹を撫でる。そこには確かに新たな命が宿っている…エースとベッキーの子。

「よく頑張ってくれたな…ベッキー…無理をさせた」
「…はやくパパに会いたがってる」

エースの手が触れると腹の中の赤ん坊が動いたような気がする。父を分かっているのだろうか。

「……エース…」
「…おれは言った、ベッキー。…ここでもう一度言う!!


結婚しよう、ベッキー!!!お前はおれの妻だ!!!!」
「!!!」
「…っ」

その言葉に海賊、海兵達すべてが震撼する。センゴクやガープが目を見開く。世界中の人々に通信され、大勢の海賊達や海兵達の前で宣言された二人の結婚。これはもう誰にも止めることなんてできやしない。二人の愛はどんな境界も越える。ベッキーはあまりの嬉しさで涙をあふれさせながらエースの腕の中で震えた。

「ベッキー…!!!答えは!?」
「……はいっ!!!」
「ウオオオオオオオ!!!!」
「エース!!!ベッキー!!!」


海賊達が叫ぶ。海賊王の息子、ポートガス・D・エースと白ひげの娘、エンターズ・ビクトリア。ついに二人はこの海で最も世間を騒がす“夫婦”となったのだ。

「愛してる…帰ったら、…船の上で式を挙げよう!!」
「嬉しい…っ、エース、私も愛してるわ…」





















囁いたエースはそっとベッキーにキスを落とし、角度を変えて何度も何度も口付け合った。その姿は海賊達も、海兵達も…目を離せないほどに美しい様子で。…これほどまでに海兵達さえ魅了するキスは…





大海賊の血をひく二人の夫婦の誓いのキス。



誓いのキスをください





■あとがき
ついにプロポーズ編!どうしてもこのシーンが書きたくてたまらなかった!!
エースとベッキー!のキスシーン、感動する感じに書きたかったんですがうまく書けずに…(泣)

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