生まれてきた意味




「ガープじいちゃんっ…!!」

かつて海賊王ゴールド・ロジャーと渡り合い、金獅子のシキを監獄へ入れた伝説の海兵、モンキー・D・ガープがついに動いた。ルフィの祖父、そしてエースとベッキーにとっても祖父同然の人物。

(おじいちゃん…)
「英雄ガープが守りに加わったぞ!!!」
「名前に踊らされるなアホンダラァ!!!ただの老兵だ!!!」

白ひげが叫ぶ。彼もまた同じ時代を生きた男だ。知っている――ガープの強さも。そこへ赤犬のマグマの攻撃が襲いかかって来る。

「貴様もその世代なら!目の前の敵に気ィつけい!!!」

マグマと震動が再び激突する。

「いちいち町を壊しやがって…!!」
「守ってみろと言ったろう!!」










海賊達は必死に海兵と戦い続ける。

「道を作れ!!!エース救出の道を!!!」
「新世界の力思い知れ!!!」

マルコの側でベッキーは海兵達を蹴り飛ばしていく。その中には強さも半端ではない海軍将校達もいた。









それを見ていたエースは処刑台の地面に額をつける。センゴクはそれに気付いた。

「………」
「どうした……“火拳”…!!」



エースは辛そうに表情を歪めた。その心中では昔の事を思い出していた――…









「ゴール・D・ロジャー?ゴールド・ロジャーのことか?知ってるかって…?」

エースが少年の頃、町の不良達にたずねていた時期があった。…自らの父、ロジャーについて。

「お前世の中何でこんなに海賊達の被害が多いか知らねェのか!?全部そのゴールド・ロジャーのせいなんだぞ!?」
「アレはな生まれてこなきゃよあかった人間なんだ」
「とんでもねェクズ野郎さ!!生きてても迷惑死んでも大迷惑!!世界最低のゴミだ!!!覚えとけ」


その言葉にエースは行き場のない怒りを覚え…

「あァ!?どうしたんだよ!!何でおめーが怒ってんだ!!!」
「お前誰だよチビ!!」
「ギャアアア!!!」











「おめェ町へ下りて何してんだ!?エース!!町の不良共が子供に殺されかけたって…すごい騒ぎだ!!」
「なんだ…死んだかと思ったのに」
「何をォ!?」












父親の悪口を聞くたびにエースは言った相手を半殺しにしてきた。それを聞いたガープがエースのもとをたずねたことがある。




「ぶわっはっはっ!!おいエース最近荒れとるらしいな!!」
「………!!ジジイには…孫がいるんだろ?……そいつは……幸せそうか?」
「ああルフィか。元気に育っとるわい」
「ジジイ……」
「あァ?」










「おれは……









生まれてきてもよかったのかな…」














「そりゃおめェ……





生きてみりゃわかる」












幼少期の経験。エースは自分の運命を呪って育ってきた。憎むべき父…だがその父への暴言は許せなかった。











「イワちゃん……!!」
「はっ!!ヴァナタ意識が……!!」

意識を失っていたルフィがイワさんのブーツをガシッと掴んだのだ。

「最期の頼み…!!聞いてくれ…!!!」









エースは苦しげに呟いた。

「……おれは……



腐ってる……!!!」

海賊達の声が一層、エースの頭に響いた。

「エース〜〜〜!!!」
「エース!!!必ず助けるぞ〜〜!!!」
「待ってろよォエース〜〜!!!」
「諦めんじゃねェぞォ〜〜〜〜!!!!」
「エース、絶対助けるわ!!!」


エースの目から涙がとめどなく零れる。







「……くそ……おれは


歪んでる!!!………こんな時に、




オヤジが……恋人が……弟が……!!仲間達が……!!


血を流して倒れて行くのに……!!!





おれは嬉しくて……!!!涙が止まらねェ



今になって、


命が…欲しい!!!」


ようやくわかった、生まれてきた意味。ガープが辛そうに表情を歪めていた。家族という繋がりを持つガープにとってこれほど辛いものは無い。














この時、戦況に動きがあった。突然、白ひげが胸を押さえて膝をつき、吐血したのだ。

「ウウッ…!!!クソッタレ…!!!」
「オヤジィ!!?」
「寄る年波は越えられんか……!!!白ひげェ!!!」

赤犬が言うように、白ひげはすでに高齢で持病を抱えていた。咄嗟にマルコが走り出す。

「……!!!(一番恐れてた事が…!!!)」
「勝敗は一瞬の隙だよねェ〜」

それを追撃するは黄猿だ。黄猿のレーザーがマルコの腹部を貫く。

「ウゥ!!!」
「マルコ!!!」

ジョズが思わず青雉から目を反らした瞬間、青雉が氷を放った。

「余所見したろ?今……」
「ぐァ!!!」
「ジョズ〜!!!」

体半分を氷漬けにされたジョズ。そして白ひげもまた赤犬のマグマ攻撃をまともに受けてしまった。ベッキーが叫ぶ。

「パパ!!!マルコ、ジョズ!!!」












ルフィはイワさんにある無茶な要求をしていた。

「テンション・ホルモンもう一発!?無っ茶ブル!!!もうダメよ!!!インペルダウンから戦い通し……!!猛毒によって死の淵まで行ったヴァナタの体は本当はもう限界をとうに超えてる!!!これ以上体をダマしたら…ヴァナタ後で本当に命を落とすわよ!!!」

それでもルフィは言った。

「ハァ、ハァ。やるだけやって…ハァ…ハァ…死ぬならいい…!!」
「!?」
「戦わせてくれ…イワちゃん。今戦えなくて…!!もしエースを救えなかったら…!!おれは




後で…死にたくなる!!!」

決死の覚悟。その言葉にイワさんは心が揺らぐが…

「…だからヴァターシはヴァナタに死なれちゃドラゴンに会わせる覚悟がねェっつってんのにこのバッキャブルめ!!!…ハァ…ハァ…わかったわよ…ぬ〜〜

勝手にしやがれェ!!!」

イワさんがルフィの腹部にトゲのついた手を刺し込む。するとルフィの体内で異変が……

「ウォォオォオォオォオォ!!!」

突然、叫び出すルフィ。先程までとは大違いだ。テンション・ホルモンの一発によるものだった。

「……ルフィ…」



生まれてきた意味





■あとがき
今回、ベッキーの出番少ないですね〜でもエースの涙シーン大好きです。


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