壁の向こうへ





赤犬のマグマは氷を溶かし、海賊達の足場が失われていく。そのマグマはモビーディック号にまで襲いかかる…。

「……!!ハァ…ハァ畜生ォ!!」
「おれ達の船が…!!」
「何十年も白ひげ海賊団を支えた船」
「……」
「モビー・ディック号が……!!!」

泣き叫ぶクルーもいた。ベッキーも思わず涙を浮かべ、燃えていく白鯨を見つめる。

「…!!!私達の船が!!!」
「危ない、ベッキーさん!!」
「私達の家…っ…!!」

ジンベエがベッキーを押さえる。ベッキーは燃え盛るモビーディック号をただ見つめるしかできなかった。それは白ひげも同じ。

(…………すまねェ)





そして包囲壁はなかなか壊れなかった。クリエルが砲撃を放ってもビクともしない。白ひげが攻撃をしても…。溶かされる氷だが、マグマによって海は熱湯となる。まさに海賊達の墓場になりつつある。センゴクは海兵達に命令を伝えた。

「作戦はほぼ順調――これより速やかにポートガス・D・エースの――処刑を執行する!!」

その声を聞いた海賊達は焦り出した。

「聞いたか今の!!あんな見えもしねェ場所で、仲間をあっさり殺されてたまるか!!」
「オーズの道しかねェ!!!気をつけろ!!!敵は必ず構えてるぞ!!!」

唯一の突破口を海軍が見逃すはずが無い。ベッキーが拳を握りしめているとあることに気付く。

「!?あれ!?ルフィは!?」
「ジンベエボーイ!!麦わらボーイは!?」
「さっきまでとなりに……!!あそこじゃ!!!」

なんとルフィは一人でオーズの道へ走っていっていた。

「ちょ、ルフィ―――!!」
「!?まさか!!やめな!!そんなあからさまな道…!!」




ドゴゴゴゴォ!!!

「うわああああ!!!」
「撃て!!!」

ルフィ、やはり砲撃されてしまった。

「きゃぁああああ!!!ルフィ――――!!!」
「それ見たことか!!!」


なんとかルフィを避難させたベッキー達。

「まったく、ひとりで行くなんて無茶よ!!」
「一つ穴が開いてる場所を敵が疎かにするワケナッシブル!!!むしろ罠よ!!!」
「全く無茶を!!!」
「ゼェ…ゼェ…!!」
「砲撃を受けて無事なんてホント…ルフィ…あなたは…」

ベッキーは倒れたルフィを見て言う。

「何とかしねェと…!!!ハァ、急がねェと……!!あいつらもう…エースを処刑する気なんだ!!!」
「わかってる…!!でもこの包囲壁…パパの攻撃でも崩せない…道はオーズの残してくれたひとつだけ…」
「ハァ…ハァ…ジンベエ…頼みがあるっ!!!」
「!!?」




















その頃、壁の向こう側で動きが合った。

「まだ生きてやがった!!!」
「さっきの衝撃で目を覚ましたんだ!!!」

海兵達がざわついた。

「リトルオーズJr!!!」

そう、オーズは生きていたのだ。巨体を持ち上げ、オーズが起き上がる。

「オーズだ!!!」

その姿は海賊達にも確認できた。ベッキーがぱあっと明るくなる。

「ああオーズ…よかった……!!!」
「ベッキー、やるぞ!!」
「…うん!!」

ルフィの声により、ベッキーはもう一度オーズを見てからルフィのもとへ走った。


















「エ…エースぐん…!!」
「オーズ……!!」

立ち上がったエースだが、ほとんど瀕死状態。黄猿が立ちはだかり、指先に光を集めた。

「オ〜…いいよォわっしがやろう」
「黄猿さん!!」
「こういう時は…頭をブチ抜くといいよね〜…」
「ゼェ、ゼェ」

黄猿の攻撃が放たれようとした瞬間……

















「!?」
「何だアレは!!」
「水柱!!?」







壁の向こうから水の柱がいきなり現れ、三大将の前あたりに飛んできたのだ。その水の中にいたのは…





「あ」

コビーが驚き、ハンコックが頬を染める。

「あれは!!」





「“麦わらのルフィ”!!!!“白い王女”!!!!」

そこにはずぶ濡れで、大木を持って浮き輪代わりにしたルフィとベッキーの姿があった。目の前には三大将。

「あららとうとうここまで…お前達にゃまだこのステージは早すぎるよ」
「堂々としちょるのう…ドラゴンの息子ォ…白ひげの娘ェ…」
「恐いね〜…この若さ……」

ルフィとベッキーは包囲壁を乗り越えるためにジンベエに水中で魚人空手を打ってもらったのだ。息を荒げながらも三大将を見据えるルフィとベッキー。

「ハァ、ハァ…」
「……っ…やっと近付いた!!!」

処刑台は間近。エースの驚きと辛そうな表情がはっきり見える。

「ルフィ……!!ベッキー……!!」
「エース、やっと顔がはっきり見えた!!!」
「エースは返してもらうぞ〜〜っ!!!」

持っていた大木を三大将に投げつけるルフィ。

「!」

それを青雉は凍らせてルフィに弾き返すが、今のルフィの勢いは止まらない。

「“ゴムゴムの”……!!




“スタンプ乱打<ガトリング>”!!!」


氷の大木をもバラバラに砕く攻撃。だが三大将は自然系なので攻撃は効かない。そこへ…

「“蝶舞<チョウブ>”……」
「!」

ベッキーが三大将の目前ほどまでの高さに飛ぶと、




「……“足刀<ソットウ>”!!!」
「!!!」
「ぐっ…」

赤い光がベッキーの足に纏うと、そのまま三大将を続けて蹴飛ばしたのだ。

「!!ベッキー!!なんで攻撃できんだ!?」
「ルフィ、先に行って!!!ここは私が!!!」
「え」
「はやく!!!エースを救え!!!」
「…わかった!!ありがとう!!」

ルフィを先に行かせたベッキー。

「小娘一人でわしらに敵うと思っちょるのか」
「……ただの小娘じゃないってことは一番わかってるはずよ!!…海軍本部大将…!!」












包囲壁の向こうで海賊達がざわめく。

「今壁の向こうに飛び込んだの、ベッキーとエースの弟だ!!」
「あの無鉄砲さ…兄貴にそっくりじゃねェか…!!グラララ…ビクトリアも…おれの若ェ頃と同じ…後先顧みねェ。オーズ!!そこにいろ!!お前の力が必要だ!!」
「オヤっざん…」
「ジョズ、“切り札”だ!!」
「おう!!!」
「全員準備を!!!広場へ突入するぞ!!!」
「ウオオオオ!!!」



壁の向こうへ

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