スクアードの一刺し





「……パパ…!!!」

誰もが目を疑った。白ひげが…刺された。傘下の海賊“大渦蜘蛛”スクアードに…



「「「「「オヤジィ〜〜〜〜〜!!!」」」」」






その映像は映像電々虫によって全世界が目撃する。

「“白ひげ”が…!!!刺されたァ〜〜〜!!!」

シャボンディ諸島の記者達はそれを急いで本部に連絡。

「――ええ――それが刺したのは“白ひげ”傘下の海賊団船長――新世界の海賊“大渦蜘蛛”!!!」















刀を抜いて息を荒げるスクアード。その背後からマルコが襲いかかった。

「スクアードォ〜〜〜〜〜!!!」
「!!!」

「…なぜお前がこんな事!!!」

怒りにまかせて叫ぶマルコ。スクアードは白ひげからも信頼された男だった。

「うるせェ!!!こうさせたのはお前らじゃねェかァ!!!」
「!!!」

マルコに刀を振るい、間合いを取るとスクアードは叫んだ。

「こんな茶番劇やめちまえよ!!!“白ひげ”!!!もう海軍と話はついてんだろ!?お前ら“白ひげ海賊団”とエースの命は必ず助かると確約されてんだろ!!?」
「!」
「!!?」
「何言ってんだ!?どういう事だ!!?」

傘下の海賊達がスクアードの言葉を意味深に思った。

「おれ達は罠にかけられたんだよォ!!!おれァ…知らなかったぞ。エースの奴が…あのゴールド・ロジャーの、息子だったなんて…!!!」
「………」
「ベッキーがアンタの娘だってことは薄々感づいていた!!おれだけじゃねェ!!他の傘下の海賊達だって気付いていたさ!!!アンタがナース以外の女を船に乗せるなんて…!それにアンタがベッキーにとる態度!!あれは“本物の父親”の態度だった!!!それは別によかった…ベッキーがアンタの実の娘だろうと…おれ達は今までどおりに接してきた…だが…エースは違う!!おれがアンタに拾ってもらった時…おれは一人だった………!!なぜだか知ってるよな!?長く共に闘ってきた仲間達をロジャーの手で全滅させられたからだ…!!!」
「スクアード…!!」
「おれがどれだけロジャーを恨んでいるか知ってるハズだ!!」

スクアードの悲痛な叫び。エースとベッキーはスクアードを見つめる。

「…だったら一言言ってくれりゃあよかった…!!!エースはロジャーの息子でアンタは自分の娘ベッキーと結婚させて、時期“海賊王”にしたいと思ってると!!!――その時すでにおれァお前に裏切られてたんだ…エースともベッキーとも仲良くしてた……バカにしてやがる!!そしてお前にとってそれ程特別なエースが捕まった…!!」

次期海賊王にするための息子、そして娘の婿となる男…。

「だからお前はおれ達傘下の海賊団43人の船長の首を売り!!!引き換えにエースの命を買ったんだ!!!」
「!?」
「白ひげ海賊団とエースは助かる!!!勿論、お前の娘…将来のエースの花嫁だって!!!すでにセンゴクと話はついてる!!!そうだろ!!?そんな事も知らずにどうだ!!?おれ達は……!!!エースの為白ひげの為と命を投げ出しここまでついて来て、よく見ろよ!!!



海軍の標的になってんのは現に!!おれ達じゃねェか!!!波の氷に阻まれてすでに逃げ場もねェ!!!」

スクアードの言う通りだった。パシフィスタや海兵達は皆、白ひげ傘下の海賊団を狙って攻撃している。

「ハァ…ハァ……!!オヤッさァん!!?本当かよォ〜〜〜〜!!!」

叫ぶ傘下の海賊達。不安と疑惑が広がっている。スクアードは言った。

「ハァ…ハァ………!!一撃刺せただけで奇跡だ…もう覚悟はできてる…殺せよ!!」






――てめェの口車に乗ってたまるか!!!
――…そうは言うとれん様になるぜ、ウソじゃァ思うのならよう見ちょれ。これからの“集中攻撃”…お前ら傘下の者達のみが攻撃される!!“白ひげ海賊団”には一切手を出さんけェのォ…!!









傘下の海賊達が次々と襲われていく…まさに地獄絵。

「うわァ!!」
「ウソだろそんなわけ…!!」
「ぎゃあ!!」
「言われてみりゃコイツらおれ達しか狙わねェぞ」
「信じたくなかった…おれァ目を疑ったよ………!!」
「バカ野郎!!!担がれやがったなスクアード!!!なぜオヤジを信じない!!!」

マルコがスクアードの胸倉を掴んで怒鳴った。

「てめェまでしらばっくれやがってマルコォ!!!」
「……エースがロジャーの息子だってのは事実…それに最も動揺する男を振りまわした…奴らの作戦がおれ達の一枚上をいったんだ」

胸元の傷を押さえて白ひげが言う。ベッキーが思わず叫んだ。

「パパァ!!!」
「……



(ビクトリア……おめェの“花婿”は必ず…)」

その間に青雉がバギーごと電々虫を氷漬けにし、映像配信を途切らせる。そして新たな命令をした。

「“包囲壁”作動!!!」
「はっ!!!」

氷の下の海で何かが動く音がした……

















「あの野郎…」

スクアードとの一件を見ていたクロコダイル。何かを思った後、叫んだ。

「みっともねェじゃねェか!!!“白ひげ”ェ!!!おれはそんな“弱ェ男”に敗けたつもりはねェぞ!!!!」
「…………」
「……!」
「クロコボーイ…!!」
「クロコダイル」

いつもの彼らしくない発言に驚くジンベエ達。それを聞いたマルコは感じていた。

(……そうだ何より……!!!避けられたハズなんだよぃ…!!今までのオヤジなら……!!!どんだけ不意をつかれても、心を許した仲間の攻撃だろうともこんなもんくらうアンタじゃなかった……!!それが問題なんだよい…!!!体調は悪化するばかりだ!!!)

どんなに最強と言われても老いていく体。白ひげはいつまでも最強ではいられない……

「スクアード…おめェ仮にも親に刃物つき立てるとは……とんでもねェバカ息子だ!!!」
「ウァァ!!!」
「!パパ!!」」

ベッキーが叫ぶ。白ひげの手がスクアードに伸びた時…





「バカな息子を



それでも愛そう」

「!!?」





白ひげはがばっとスクアードを片手で抱きしめたのだ。

「…ウグ……!!?」
「ふざけんな!!!お前はおれ達の命を……!!」
「――忠義心の強ェお前の真っ直ぐな心さえ……闇に引きずり落としたのは…一体誰だ」
「…海軍の!!反乱因子だ…お前を刺せば部下は助かると!!!」




――わしはこの作戦に反対なんじゃ――この戦いで討つべきは“白ひげ”!!それをみすみす逃がすとはもっての外じゃァ。わしに協力するならお前らを助けちゃる。




「『赤犬』がそう言ったか…お前がロジャーをどれ程恨んでいるか……それは痛い程知ってらァ…――だがスクアード、親の罪を子に晴らすなんて滑稽だ…エースがおめェに何をした…!?」
「…………」
「…おれァ確かにベッキーをエースと一緒にならせてやりてェ…だがそれは…“海賊王の女房”にするためじゃねェ…あの二人が…愛し合ってるからだ」
「!」
「あの二人が一緒にいることを望んでる…だからだ。あの二人が決めたこと…ここで終わらせるわけにはいかねェんだよ…」
「…」
「仲良くやんな…エースやベッキーだけが特別じゃねェ…みんなおれの、家族だぜ……」
「!!!」


スクアードの瞳に涙が浮かぶ。それは温かく大きな親の愛だった…。白ひげは立ち上がるとセンゴクを睨む。

「――衰えてねェなァセンゴク……!!見事にひっかき回してくれやがって…」

遠くから傘下の海賊達の叫ぶ声が聞こえた。

「オヤジィウソだと言ってくれー!!」
「ぐわっ!!!」
「おれ達ァ売られてんだ畜生ォ!!」
「おれが息子らの首を売っただと…!?」

凄まじい音と共に波の氷が破壊される。白ひげの能力によるものだ。これによって傘下の海賊達に逃げ道ができた。

「……海賊共に……退路を与えたか……!!食えん男だ」
「海賊なら!!!!信じるものはてめェで決めろォ!!!!」
「…パパ…!!!」

叫ぶ白ひげを見つめる海賊達。

「氷の壁がなくなった…!!」
「…この軍艦も使えるぞ……!!」
「……!!これじゃ…いつでもおれ達逃げられる……!!」
「…!!オヤッさん…!!」
「……!!やっぱりウソだ!!!海軍の作戦だったんだ畜生ォ…!!」
「……」
(“弱ェ男”か…勝手な事言いやがって…勘弁しろよワニ小僧…!!おれだっておめェ…心臓一つの人間一人。悪魔だの怪物だの言われようとも…いつまでも“最強”じゃいられねェってんだよ……!!!若ェ命をたった一つ未来につなげりゃお役御免でいいだろう……!?)

処刑台のエースが白ひげを見つめ、スクアードは涙を流して崩れ落ちた。







「おれと共に来る者は







命を捨ててついて来い!!!」
「ウオオオオオおお!!!!」
「行くぞォ〜〜〜!!!!」




「構えろォ!!!暴れ出すぞ!!!世界最強の男がァ!!!!」




スクアードの一刺し





■あとがき
スクアード編。アニメでエースとスクアードが仲良くしてる回想がありましたが、あれを見ちゃうとやっぱりエースいい奴…!!


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