麦わら・王女VS鷹の目





ハンコックは海軍にバレないよう、そっとルフィに海楼石の手錠の鍵を渡した。そして同時にスモーカーの邪魔をする。

「ルフィ!!それ!!」
「ハァ、ハァエースの手錠の鍵だ!!!」

ルフィは走りながらベッキーに叫ぶ。

「ありがてェなまたあいつの世話になった!!」
「!」

するとイワさんとくまのもとにやってくる二人。

「くまが死んだ!!?バカ言ってんじゃナッシブル!!!目の前に生きてるじゃないか!!!」
「イワちゃん!!ハァ…ハァ…!!」

イワさんは何やら叫んでいる。バーソロミュー・くまが死んだ――ドフラミンゴにそう言われたのだ。

「!!くまみたいな奴…!!」
「七武海バーソロミュー・くま!!…オーズに致命傷を…!!!」

大事な仲間であるオーズを傷つけた七武海くまに歯を噛みしめるベッキー。

「イワちゃんあいつの事知ってんのか!?」
「ちょっとね……!!だけど少し様子が変なのよ…!!」
「フッフッフッフッフッ!!三人ともくまに思い出があるようだが、…フッフッフッ、お姫さんの方は恨みつらみだろうがな!お前らの知るくまとコイツは別人だ」
「……!?何言ってんだァ!?アイツ」
「そんなわけナッキャブル!!間違いなくニキュニキュの実の能力者コイツはくまよ!!返事をおし!!くま!!」
「――つい先日だ!!政府の科学者“Dr.ベカパンク”の最後の改造によってコイツはとうとう完全な『人間兵器』になっちまった…!!正確には元バーソロミュー・くま…!!」
「改造!?兵器!?一体何の事っチャブル!!!」
「つまりコイツは自ら政府の研究する『人間兵器』の“実験体”になることを志願したのさ!!始めは“手”本人の意識は残したまま体の各部は長期にわたり少しずつ改造されていった…!!」
「ウソをつっキャブル!!!くまは政府を嫌っているのよ!!!自分の命を政府に差し出すなんてマネ絶対しナーブルわよ!!!」
「怒鳴ってもこいつと政府の間にどういう取引があったかはおれも知らねェ――つい数日前までは確かにまだコイツに人格は存在した!!――だが今はもう人と生まれた記憶すらねェ死人も同然。ただ政府の言いなりに戦うだけの“人間兵器<バケモノ>”!!!




パシフィスタ『PX-0』だ!!!昔の事なら忘れちまいな!!!」

同時にくまがレーザーを口から放つ。

「!!!」
「おわ!!!」

その威力は凄まじい。咄嗟に避ける三人だが強敵すぎる。

「………!!くま…!!!この数年でヴァナタの身に何が起きタブルの!!?」

ルフィはシャボンディ諸島で仲間達と離れ離れになった際のことを思い出す。その時…



「――もう二度と会う事はない…さらばだ」



「……!!あいつそういえば最後に…」

そうこうしているうちに、くまが瞬間移動をし、ニューカマー達の背後に現れる。

「ん!!?」
「あ」
「!!」
「危ねェぞお前ら!!!気をつけろ!!」

ルフィが叫ぶが、くまはニューカマー達に攻撃を放つ。途端に…

「おのれくまァ〜〜!!!“GANMEN・残像<ガ・ン・メ・ン・スペクトラム>”!!!“銀河・WINK<ギャラクシー・ンヌウィーンク>”!!!ヒーハー!!!」
「!!!」

怒りにまかせたイワさんがくまに連続攻撃。

「ここは引き受けた!!ヴァナタ達!!!麦わらボーイとプリンセスガールを援護しな!!!」
「了解!!!」
「処刑台を目指せェ〜〜!!!」
「ウオオオオオオ!!!」

ニューカマー達を引き連れ、ルフィとベッキーは処刑台を目指して再び走り始めた。

「ハァ、ハァ…あの人!大丈夫かな!?」
「ああ!!ハァ、イワちゃんなら大丈夫!!!」

だがその時…










「!!あれは…」
「ハァ…ハァ…」

二人の前に立ちはだかる一人の男。

「悪いが赤髪…この刀慎みはせんぞ…」
「!!!」

ルフィとベッキーはその男に見覚えがある。世界最強の剣士。七武海の一人………

「“鷹の目”!!!」

その鋭い眼差しはルフィとベッキーを真っ直ぐ捕らえた…

「さて運命よ…あの次世代の申し子達の命、ここまでかあるいは…この黒刀からどう逃がす……!!!」

かつて東の海<イーストブルー>のレストラン、バラティエでルフィはミホークと出会っていた。ゾロとの戦いで十分に強さは知っている。

「ハァ…あんな強ェのと戦ってる場合じゃねェ!!!ハァ、おれはエースを助けに来たんだ!!!ベッキー、あいつとまともに戦っちゃダメだ!!!」
「鷹の目…っ」

二人はミホークをかわしていこうとしたが…









「!!?」

ドンッ!!!

「う」
「射程範囲だ」
「ルフィ!!!」

ベッキーは持ち前の素早さで剣の軌道から反れたが、ルフィはまともに剣の凄まじい衝撃波を受けてしまった。

「!!!」
「い…痛て…斬られた…!!ん?おわっ!!!」

間髪入れずにミホークがルフィを突き刺そうとする。それはなんとか避けたがルフィにとっては辛い相手。ゴムゴムの実は斬撃に弱い。

「よくも…私の義弟に!!!タダで済むと思うな、鷹の目ッ!!!」
「!」

飛び出してきたのはベッキーだ。鬼撫子と黒刀がぶつかり合い、あたりに凄まじい衝撃。

「白ひげ海賊団2番隊隊員“白い王女”エンターズ・ビクトリア…成程、噂通りの腕前」

ベッキーの圧力の力は足技や圧力封じだけじゃない。ベッキーが鬼撫子を一振りすると、凄まじい剣圧があたりの海兵達を吹き飛ばす。

「うわああああ!!」
「……!」

だがミホークは黒刀を地面に突き刺し、盾代わりにして防ぐ。

「…!あの細い体から放たれる凄まじい圧力…なかなかだ」
(能力を使っても…鬼撫子じゃ鷹の目には敵わない…わかってるけど!!時間を稼がなくては…!!」

鬼撫子は良業物。最上大業物である黒刀に敵わないことはわかっていたが、ルフィを先に行かすための時間稼ぎになれば。

「無駄だ!!」

途端にミホークがベッキーを弾き、ルフィに斬りかかった。ルフィは体を避けて回避したが、あまりの光景にぞっとした。







ミホークの斬撃は青雉が凍らせた白ひげの海震の巨大な氷をいとも簡単に両断してしまったのだ。

「これが…世界一の剣…!!」

唖然とする者達。ベッキーも呆然として呟いてしまった。だがそれでもミホークは攻撃を続ける。ルフィは避けるので精一杯。

「さァどうする!!!」
「わ!!わっ!!」
「兄から遠のく一方だぞ!!!」
「くそォ――!!!」
「ルフィから離れろ!!!」
「それともこの義姉がいなくては何もできないか!?」

苦戦を強いられるルフィとベッキー。困っていたルフィだがふと上空を見上げ、何かを掴んだ。

「“ゴムゴムの”!!」

それは…

「“JET身代わり”!!!」
「!」
「ギャアア〜〜!!!」
「バギ―――――――!!!」

ルフィが身代わりにしたのは道化のバギーだった。ベッキーも旅の道中でバギーと出会っていたので知っているがまさかの身代わりになるとはびっくりで思わず絶叫。その後もなんとかバギーを身代わりにして走り出すルフィ。ベッキーも続いた。

「まだまだだ」

二人を追おうとするミホーク。だがマルコが叫んだ。

「ビスタ!!!援護しろよい!!!」
「了解!任せとけ!!」
「!!」

ギィィン!!!と刀と刀がぶつかり合う音が響く。

「!ビスタ!!!」

振り返ったベッキーが叫ぶ。ミホークと相対したのは白ひげ海賊団きっての剣士。

「…………!!白ひげ海賊団5番隊隊長“花剣のビスタ”」
「お初に“鷹の目のミホーク”。おれを知ってんのかい」
「知らん方がおかしかろう……」
「やった!!!抜けた!!あのおっさん誰だ!?」
「ビスタ!!ありがとう!!!」
「エースを救え、ベッキー!!!」
「うん!!!」

再び走り出した二人を見てミホークは感じていた。

(能力や技じゃない――その場にいる者達を次々に自分の味方につける。この海においてあの男は最も恐るべき力を持っている……!!)







刻々と迫る処刑時刻を前に――次々と明らかになった衝撃的な事実。鉄壁の大監獄『インペルダウン』でまさかの200人を超える大脱走劇と、戦場へなだれ込むその名だたる凶悪な囚人達。目の前に映し出されるのはまるでこの世とは思えぬ光景。世界の歴史を塗りかえる程のまさに頂上決戦!!世界中の人々はただ息をのみここに託された揺れ動く未来を見守ることしかできない。

「元帥殿準備が整いました」
「湾岸の作動準備もか」
「はい全て」

その頃、処刑台の方で動きがあった。

「あれ?処刑の準備が始まったぞ!?」

それは映像を見る世界の人々にもわかった。白ひげ海賊団の面々も驚き、慌てる。

「あいつら…!!エースに何する気だ!?まだ時間じゃねェぞ!!!」
「もう処刑が始まるのか!!?」
「そんなバカな発表された時刻よりまだ随分早いぞ!?」




センゴクは部下に命令を下す。

「直ちに映像電々虫の通信を切れ!!我々に対し世界が不信感を持っては困る。生ぬるい世間には少々刺激が強すぎるだろう――これから起きる惨劇を何も世界へ知らしめる必要などない」

走るルフィとベッキーもその事態に足を止める。

「本当にエースの処刑早める気だ!!」
「!!!そんな!そうはさせないっ!!!」
「「「「「エース〜〜〜〜〜!!!」」」」」
「数時間後――世界に伝わる情報は



我々の“勝利”その2文字だけでいいんだ」

冷たく言ったセンゴクは何かを決意したような眼差しだった。その瞬間。

「湾頭を見ろ!!何かいるぞ!!!」
「!!?」
「おれ達の仲間じゃねェ…!!海兵が氷の裏を通って回りこんできたんだ!!」
「何だあいつら!!!」

その異様な姿…まわりは驚くばかり。

「アレが噂に聞く――政府の『人間兵器』か…」

白ひげが呟き、

「シャボンディ諸島にいたくまみたいな奴ら!!!あんなに!!!」

ルフィはその姿を見て驚く。

「人間兵器…!!バーソロミュー・くまの強さであの数なんて…!!」

ベッキーもまた唖然とし、

「………!!!く……??く……!!くまァ!!?」

イワさんは叫ぶしかない。




“開戦”より約1時間半の死闘を経た頃――


『海軍』が大きく仕掛ける――

「さァ、おめェら!!!待ちくたびれたぜやっと出番だ!!!」

大量のパシフィスタを引き連れるのはシャボンディ諸島にも現れた戦桃丸。“戦争”は急速に流れを変え――最終局面へと一気に雪崩込む!!!



麦わら・王女VS鷹の目

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