愛する心





「パパ…どういうこと…?」
「……オヤジ」

海賊王の実の息子、ポートガス・D・エースと白ひげの実の娘、エンターズ・ビクトリア。世界はこの二人の繋がりを絶対に許すはずが無いのだ。生まれてくる子供は“大海賊の血筋”である。

「おめェ達が…海賊の血をひいているのは間違いない。だが、おめェらが知りあったのはそんなこと関係なくだろう?」

二人が出会った10歳の時。エースはベッキーが白ひげの娘だとは、ベッキーはエースが海賊王の息子だとは知らずに出会い、育ち、愛し合った。

「…まだおめェらは若い…見つめなおせ。





…いつの時、いつの時代でも




愛し合う心ってェのは……どんな身分だろうが、…どんな親を持とうが!それは止めることはできねェんだよ」
「「……!!!」」



ロジャーがルージュを愛し、白ひげがソフィーを愛したように……。

「…エース……」

そっとエースの腕に触れるベッキー。エースもベッキーを見つめた。

「……愛しても……いいのか……?」
「………」
「おれはお前を……愛してもいいのか……?その資格……あるのか…」

不安。二人の大海賊の血をひく自分達が愛し合うことは大罪だ。それでもエースとベッキーは………









































………

「………!!!」

処刑台の上でエースは地面に額をつけて必死に何かをこらえるような顔をしていた。だがやがて顔を上げ、目を開いた。

「……どうした」

ガープがたずねる。

「………もうどんな未来も受け入れる。差し伸べられた手は掴む…!!おれを裁く白刃も受け入れる。もうジタバタしねェ。





みんなに悪い」

エースは受け入れたのだ。“オヤジ”である白ひげ…大事な仲間達…愛する恋人…そして弟…。彼らの思いを裏切りたくはない。
















白熱する戦い。エースを助けるため、ルフィやベッキーは傷だらけになりながらも戦い、走っている。一方、白ひげはバギーをうまく利用し、インペルダウンの脱獄囚達を味方につける。そして電々虫を使い、大渦蜘蛛海賊団に連絡を取る。

「――こちら“白ひげ”!スクアードはいるか?」

電々虫を取ったのは大渦蜘蛛海賊団のクルーのひとりだった。

「こちら湾頭!スクアード船長…あれ?さっきまで視界に入ってたんですけど。離れちまったようで…」
『――じゃあディカルバン兄弟だ』

電々虫はディカルバン兄弟に繋がれる。

「何だいおやっさん!!」
「おやっさん何だい!?」
『おれの指示に従い、全海賊団の指揮をとれ!』

白ひげは何やら傘下の海賊達に指示を出したらしい。それに海軍側も気付く。

「センゴク元帥!新世界の海賊達の動きに変化が!」
「…ああ。左右へそれたな…」

傘下の海賊達は船を左右にそらし、軍艦を襲撃し始めたのだ。

「やつら軍艦を襲い始めました!!!」
「いい組みじゃ…感づいたな?白ひげ」
「――つまらん誘導にも乗らんか…多少ヤボだったかな…――だが勘を働かせて防げるものじゃない…!!!」

センゴクの作戦は未だはっきりとしていない。彼はこの作戦に多大な自信をのぞかせていたのだ。






















「!!!ルフィ!!!」
「うわっ!!!」

ルフィとベッキーの前に再び立ちはだかったのはたしぎ。

「“麦わら”!!」
「ルフィ、ここは私が!!」

たしぎの時雨をベッキーが鬼撫子で食い止める。その時…

「どけたしぎ!!!」
「あっ」

ルフィを十手で殴りつけたのはスモーカーだった。

「!!ルフィ!!!」
「ブヘ!!!痛ェ………!!ハァ。お前…!!ケムリン!!!……そうだあの十手、ハァ…ハァ…“海楼石”が入ってんだ!!!んにゃろう!!!」
「お前はおれが始末する!!!」

彼はルフィを追ってこのグランドラインへやってきた海兵だ。ルフィの捕縛に対し、人一倍力を入れた男。

「“ゴムゴムの



JET銃乱打<ガトリング>”!!!」

ルフィの技が炸裂するが、煙のスモーカーには無意味の攻撃だ。

「“ホワイトランチャー”!!」
「!?昔よりずっと強ェな」

初めて会ったのはローグタウン。そこでスモーカーとルフィは相対した。

「!」
「それゃお互い様の事だ!!



お前の能力じゃおれには勝てねェ!!!」
「ゲホ!!!」

スモーカーの十手がルフィの喉元に押さえつけられてしまう。

「ルフィ!!!」

ベッキーが鬼撫子で斬りかかるがスモーカーの体は打撃や斬撃が効かない。

「邪魔をするな王女…!!そこでおとなしく見ていろ!!」
「この…ッ!!!」
「ローグタウンでなぜドラゴンが。ハァ…ハァ…お前を助けたのかよく解ったぜ麦わら」
「!?ち…ちからが抜ける…クソォ…その十手…どけろ…」

苦しげに呟くルフィ。その瞬間、








「おのれ離れぬか!!!」
「!!?ウ!!!…!!?“煙”のおれに攻撃を…!!?」

何者かがスモーカーを蹴飛ばし、ルフィの前に立ったのだ。

「…!?あの人は…」

ベッキーもその人物を驚いたように見つめた。長い黒髪に雪のような白い肌、海のように透き通る青い瞳…それら全てが美しい。

「ハンコック!!てめェも“七武海”をやめる気か!?」
「黙れ!!怒りゆえ何も耳に入らぬ!!そなたよくもわらわの愛しき人を殴り飛ばし抑え込んだな!!!」

“海賊女帝”ボア・ハンコック。九蛇海賊団船長にして王下七武海唯一の女性、そして世界一の美女。ルフィに恋する乙女…というのはこの戦場において誰も知らない。

「生かしておけぬこんなに怒りを覚えたことはない!!!そなたを切りキザんで獣のエサにしてやる」

激怒するハンコック。

「九蛇の“覇気”か…!!」
「……!!ハンコック!!」
「あ、あの人って海賊女帝…!」
「はい♪」
(またハンコックと呼んでくれた…!!)

ルフィを振り返るなり、可愛らしい乙女の顔で微笑むハンコック。だが、ルフィに駆け寄るベッキーを見て態度が変わる。

「そこの小娘!!!」
「え」
「そなたルフィとどのような関係なのじゃさっきから見ておればベタベタとルフィに近づきすぎなのじゃ!!!」
「そ、そんな」

噂に聞いていたハンコックとはなぜか軽くイメージが違ったベッキー。

「ご、ごめんなさい…でも」
「蛇姫様と呼ぶのじゃ!!!」
「へ、蛇姫様!私はルフィとは…」
「ルフィの名を軽々しく呼ぶでない!!!」
「ハンコック!!!いいんだ!!!」
「はい♪」
(態度変わりすぎッ!!!)

ルフィの一言であっさり態度を変える。ベッキーは思わずつっこんでしまった。

「ここはわらわが通さぬ!!!」

その美しい瞳がスモーカーをしっかりと見据えた。



愛する心






■あとがき
エースとベッキーの心の悩みと愛するが故の不安。海賊王の息子と白ひげの娘が愛し合ったら世間的にほんとに問題になりますよね。
そして蛇姫様とベッキー…蛇姫様はルフィと親しげなベッキーが気に食いませんがルフィが言うならなんでもします状態。


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