弟の到着






突然、空から降ってきた海軍船と、数十人の人間。それはエースもベッキーもよく見知った少年が…

「…………!?」
「何が起きたんだ!?」
「今軍艦が降ってこなかったか!?」

その様子を見ていたシャボンディ諸島の人々もざわついた。

「………!!!」
「!?」

センゴクも白ひげもそれらを見た。軍艦と数十人は氷のちょうど割れた海に落ちる。

「ぷは――」
「う…海だ!!!助かった海に落ちたぞ」
「何でここだけ氷ねェんだ!?」
「氷に叩きつけられて死ぬかと思った!!!」

海の落ちた能力者達を救いだすジンベエ。そのジンベエが助け出した少年は濡れながらまっすぐ処刑台を見た。

「ルフィ!!!」
「エ〜〜〜ス〜〜〜〜〜〜!!!……!!!やっと会えたァ!!!」

「………!!!おい!!アレまさかクロコダイル!!」
「それ所じゃないぞ!!何だあの面子はっ!!!

海兵達がその面々に一斉に青ざめた。そこに居並ぶのは凶悪かつ世間を騒がせた者達だった。

「助けに来たぞ〜〜〜!!!」
「ぎゃははははは!!!世界よ覚悟しろ!!!」
「さすがに総戦力!!ハンパじゃナッシブルね!!!」


インペルダウンからの脱獄囚達、元王下七武海サー・クロコダイル、海峡のジンベエ。海賊王ゴールド・ロジャーのクルーだったバギー海賊団船長道化のバギー、革命軍の幹部にしてカマバッカ王国の女王エンポリオ・イワンコフ、そして先日エニエス・ロビーを落とした超問題の大物ルーキー、麦わらの一味船長…麦わらのルフィ!!!

「ガープまだ貴様の『家族』だぞ!!!」
「ルフィ〜〜!!!」

怒鳴り叫ぶセンゴクと頭を抱えるガープ。海兵達はその面々に驚き、七武海や三大将はそれぞれの反応をする。

「話題に事欠かん男だ…“麦わら”……」

静かに呟くミホーク。

「ム〜〜ギィ〜〜ワァ〜〜ラァ〜〜!!?」

スリラーバークでルフィに敗北したモリアは怒り狂い、

「何であいつがこんな所に!?」
「いつもの仲間じゃねェだろありゃ!!!」

フルボディとジャンゴが隠れながらルフィを見つめ、

「ルフィ………!!そなたよくぞ無事で……!!」

ルフィに恋するハンコックはドキドキと胸を高鳴らせた。

「麦わら〜〜!!?」
「インペルダウンに捕まったって聞いたのに!!やっぱり…あの人すごい!!!」

コビーとヘルメッポはルフィとの関係が深いだけに驚きを隠せない。

「えれェの引き連れてんじゃないの」
「こんなに早くまた会えるとはねェ〜〜」

青雉と黄猿は呟いた。

「アレはエースの言ってた弟じゃねェかよい!」

ルフィを見たマルコ。

「“七武海”も新旧お揃いで……!!フッフッフ。そして…アレが噂の大問題ルーキー“麦わら”か…!!」

ニヤリと笑うドフランゴもルフィを見つめた。そんな瞬間。









「!」

白ひげの背後にクロコダイルが飛んだ。

「クロコダイルが“白ひげ”を狙った!!!」
「オヤジィ!!!」
「久しぶりだな白ひげ」

クロコダイルはかつて白ひげに負けた。それを今晴らそうとしているのだ。鉤爪を振り上げたクロコダイルだが、それを蹴飛ばしたのはルフィ。

「!!!」

その姿を見た白ひげはルフィの帽子に何かを感じ、助けに行こうとしたマルコがにやりと笑う。

「なかなかやるよいエースの弟」
「おれとお前との協定は達成された。なぜお前が白ひげをかばう」
「やっぱりこのおっさんが“白ひげ”か。じゃあ手ェ出すなエースはこのおっさんを気に入ってんだ」

アラバスタで再会した時、エースはベッキーと共に白ひげ海賊団にいると言った。嬉しそうな顔で、背中に入れ墨を入れて。その背中の帽子を見ていた白ひげはそれがかつて若かりし頃のシャンクスが被っていたものだと思い出す。

「小僧その麦わら帽子……“赤髪”が昔被ってたやつによく似てるな…」
「おっさんシャンクス知ってんのか!これ預かってんだシャンクスから」

「エースー!!!見て見てルフィが賞金首になったァ!!!」
「うおおおすげェアイツ!ようやく海賊になったか!!見てくれオヤジ!!これおれの弟なんだ!!」


いつだったか、エースとベッキーは大騒ぎしながら手配書を見せてきたことがあった。

「兄貴を助けに来たのか」
「そうだ!!」
「相手が誰だかわかってんだろうな。おめェごときじゃ命はねェぞ!!」
「うるせェ!!!お前がそんなこと決めんな!!!おれは知ってんだぞお前海賊王になりてェんだろ!!“海賊王”になるのはおれだ!!!」

白ひげ相手にもいつものようにまっすぐとした意思で叫ぶルフィにイワさんもバギーも唖然。それを見下ろしていた白ひげはしばらくしてニヤリと口元に笑みを浮かべた。

「………クソ生意気な……足引っ張りやがったら承知しねェぞハナッタレ!!!」
「おれはおれのやりてェようにやる!!!エースはおれが助ける!!!」

((“白ひげ”相手に張り合っとる――――!!!))

衝撃のあまりイワさんとバギー、何も言えない状況。そんな中、黄猿とセンゴクが言った。

「ありゃあ全部“死刑”でいいんでしょ?センゴクさん…」
「無論だ!!!」

海兵達が白ひげとルフィを呆然として見ていると、一人の海兵が思い切り何者かに踏みつけられた。

「ぐわっ!?」

その人物は海兵を踏み台にすると高く空へと舞い上がった。

「!!アレは“白い王女”!!」
「プリンセスガールッ!?」

ニューカマーの一人がそれを指差し、イワさんが叫んだ。その言葉にルフィは空を見上げた。

「……!!!ベッキー〜〜〜!!!」

ぱああっと明るくなったルフィの顔。空からモビーディック号の船首に下りてくるベッキーはルフィの大好きな姉だった。

「ルフィ―――――――!!!」

叫びながらベッキーは飛び降りてきてそのままルフィに勢いよく抱きついた。ルフィはベッキーを抱き留める。

「おのれあの小娘!!ルフィに抱きつくなど!!」

その姿を見てハンコックが怒りを露わにしていたが。

「ルフィ…っ」

昔はベッキーより小さかったルフィもすっかりベッキーよりも逞しく、大きくなった。

「ベッキー!お前無事だったんだな!よかった!」
「…!」

もうあの頃のルフィじゃない。ベッキーはルフィの腕の温もりを感じるなり、堪えていた涙がこぼれだした。

「…ルフィ…!!私…!!!私……っエースを助けられなかった…!!!ずっと、ずっと一緒にいたのに…!!」
「………」

叫ぶような、苦しいベッキーの言葉をルフィはただ黙って聞いていた。今まで必死に闘ってきたベッキーだったが、彼女はずっと辛くてたまらなかったのだ。一人だけ逃げ延びて、エースが今こんな目に遭っている。自分がもっと強かったら…何度呪ったことか。ベッキーの涙は止まらない。するとルフィがぎゅ、とベッキーを抱き留めていた腕の力を強くした。

「!」
「絶対エースを助けるぞ、………ベッキー!!!」
「…!」

その瞳はエースの決意に満ちた眼差しと似ている。ベッキーはそう思った。

「……うん!!!」



弟の到着





■あとがき
ルフィ登場。新年初のお話となりました。ルフィ登場時はホントやっと来てくれた!!って感じでしたね。


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