02,美人転入生





祓魔塾の広すぎる廊下を歩くのは京都組こと、勝呂竜士、志摩廉造、三輪子猫丸だ。他愛の無い会話をしながら三人は塾の教室へ向かっていく。

「ほんで鈴木さんってのがなかなかの美人で、あ、でも後藤さんも捨てがたいんどすよ〜聞いてますか坊?」
「お前ちょぉ黙っとれや!なんやねんさっきから!」
「うちのクラスの美人名簿どすえ」
「帰ねや!!」
「まーまー坊も志摩さんも………ってあれ、奥村先生ちゃいます?」

二人をなだめた子猫丸が廊下の先で奥村雪男を見つける。竜士と廉造もそちらを見て確認するが、いつもとは明らかに違う光景を目の当たりにした。雪男の隣には可愛らしい女子生徒がいたのだ。長いピンクの髪に緑色の瞳。そしてスカートから伸びる美しい生足…。

「なななななんんですとぉぉ!?奥村の若先生があんな別嬪はんとデートやとぉぉぉ!?」
「落ち着きぃ、志摩。ただ話しとるだけやろ」
「坊にはわからんのどすかぁぁ!?日頃むっつりな男ほど一度理性が切れたら止まらなくなりますのやあぁぁ!!」
「でも見たことない子どすなぁ。新入生やろか」

あまりのショックにテンパる廉造とは違い、冷静な竜士と子猫丸。確かに今まで見たことの無い顔。しえみのように途中参加の塾生かもしれない。










「…ってなわけやねん、奥村くん!!」
「…で、なんで俺に振るわけ?」
「だって奥村くん、若先生のお兄さんやん!!弟の不純異性交遊についてどう思とりますか?」
「いや俺だって知らねーし!ってかあの雪男が女と…イチャイチャ…?」

教室にて廉造はすぐさま雪男の兄、燐に見たことを話した。燐もまたあの真面目な雪男が女子生徒と微笑ましく…?イチャイチャしている様子が想像できずに顔を歪ませる。しえみとは笑顔で話しているが廉造の言葉だけだとどうももっと親密な関係のように感じる(廉造の言葉に過剰なものも含まれていたり)。隣の籍ではしえみが少し落ち込んだような表情をしていた。

「ゆ、雪ちゃんが女の子と……!」

様々な思惑が交差する中、その話の中心人物、雪男が入ってきた。

「ハイ、皆さん授業を始めますよ」
「雪男てめぇぇ!!!俺を差し置いて!!」
「奥村先生ひどいですわ!あんな別嬪はんどこで知り合ったんどすか!?」
「ゆ、雪ちゃん」
「……皆さん一斉に様々な反応やめてください。えー、授業を始める前に新しい塾生を紹介します。色子さん、どうぞ」

雪男が教室に一人の生徒を招き入れる。その姿に京都組は思わず「あ」と声を漏らし、燐もまたその生徒を目に映した。それは先程、雪男と談笑していた女子生徒。長いピンクの髪はところどころ水色の髪飾りでとめられていて華麗に揺れた。

「はじめまして、東雲色子です」
「…何を勘違いしていたかわかりませんが、先程授業や塾について説明していただけですからね」

雪男のメガネが光り、志摩はぐっとなんとか納得した。そして燐はなぜかその色子から目が離せなかった。

(なんだ…この感じ)

何かが違う、といったような感覚。普通の生徒とは何かが違う。その美しい外見のせいなのか、それとも別の…

「いやーほんまよかった!!奥村先生の彼女かと思てほんまびっくりしたでー!あ、俺志摩廉蔵いいます、色子ちゃんて呼んでええ?いやあほんまこんな別嬪さんと授業受けれるなんて感動的やー!」
(早!!)

燐が数秒考えていただけの間に志摩は燐の後ろの席に座った色子のもとへ瞬間移動してその両手を握っていた。

「廉造…くん?面白い喋り方ね」
「俺ら、あそこにおる坊と子猫はんも…京都出身なんよ」
「キョート?」
「………」

教室に一瞬沈黙が流れた。

「…色子ちゃん、もしかして京都知らへん…とか?」
「国ですか?」
「なあ、アンタ…まさか」

燐は嫌な予感がして後ろを振り返り、色子を見た。まさかと思った。燐の勘が正しければ彼女は…

「お前、まさ「外国人なん!?」…え?」

核心に迫りかけた燐の言葉を遮ったのは廉造。

「そやろ、色子ちゃん外国人かもしくはハーフやろ!だから日本のことあんま知らへんのやな、なるほどー」
「………」

驚きの表情で廉造を見つめる燐と色子。しばらくすると色子はくす、と微笑んだ。

「ふふふ、面白いね廉蔵くんて。よろしくお願いシマス」
「おんっ、俺は女の子にはほんま優しい男や!」
「あ、あああああの東雲さんっ…よ、よろしくお願いします…!」
「あ、こちらこそ」

しえみも勇気を振り絞って色子に声をかけた。塾の生徒達と馴染んでいく色子。そんな時、ばちりと燐と色子の目が合った。

「…よろしくね?奥村燐くん」
「え。あ、ああよろしく」

にこりと笑ったその顔に少し頬が赤くなるのを感じた。







(…あれ、俺名前言ったっけ…?)




美人転入生

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