▼いつかのメリークリスマス

※連載ヒロイン(過去)






あれは、5年前のクリスマスだったかな。
クラサメ君、エミナ、カヅサでパーティーをしたんだっけ。


今、思えば懐かしいな。
忙しくて今ではそんな事、出来ないだろうから。







―――――







「料理、全部運んでおいたぞ」



「ありがとね」



「それにしても、
○○って料理出来たんだな」







“手伝って”と言ったら一つ返事で
OKしてくれた彼に感謝したのを撤回したい。


悪戯に眉を少し上げ、
形の良い唇を若干吊り上げている。







「…ケンカ売ってます?
これでも作ってあげる男の一人や二人―」



「居ないだろうが」



― 間髪入れずにブッた斬りやがった



「君も居ないでしょうっ!
二人揃って寂しいね〜、ロンリー」



「いいから、
○○は準備を進めておけ。

私は、エミナを迎えに行く」



「…私がエミナを迎えに行ったっていいじゃん」



「駄目だ」







強い口調でそう言われ、私は思わず肩を竦める
そんなに迎えに行きたきゃ行けばいいじゃん。


…お?
もしかして、クラサメ君ってばエミナ狙いなの?


そうならそうと言ってくれればいいのに!



其処へ、
カヅサが両手に荷物を持って現れた。







「いやぁ、も〜○○君?
君は僕に頼み事が多過ぎるんじゃないの?」



「あ、カヅサ!
ごめんねごめんね、クラサメ君…買い物苦手だからさ」



「…別に、苦手という訳では…」



「はいはい、いいですよ。
僕は何でも卆無くこなす、器用貧乏だからね」



「面倒だから、イジケないで。
クラサメ君は早くエミナのところ行って来なよ」



「あ、あぁ」



「大丈夫、ここぞとばかりに
○○君に手を出したりしないから」







カヅサの発言に渡しは怪訝な顔で彼を見る。


クラサメ君はというと、
戦闘時の様な冷徹な目でカヅサを見ていた。


今にも氷剣が構成され、カヅサに襲い掛かりそう…。







「聖夜に、
死体が一つ転がる事になるな、私は構わないが」



「クラサメ君って、
○○の事になると冗談通じないよね」



「自分で解ってるなら、言うのやめなよ」







既にドアに足を向けていたクラサメ君の背を見つつ、カヅサがそんな事を言う。


そんなカヅサは、ちょっと楽しそうだ。


いい加減、クラサメ君をからかって遊ぶのはやめた方がいい。


いつか、絶対に本気のクラサメ君によってカヅサに天誅が下されそう…。















準備も整って、皆揃って
お酒を飲んだり、料理を食べたりした


昔話に花を咲かせたり
近況を報告し合ったりした


カヅサとエミナは既に出来上がって
素面に程近い私達に絡んでくる


まぁ、それもいつもの事と言えばそれまでで ―







「ねぇ、クラサメ君…今夜どぉ?」



「…どう、とは?」







クラサメ君に寄り掛かる様にして
エミナは彼を口説き始める


見慣れ過ぎて溜息すら出てこない



一方のカヅサは
酔っ払うと、誰かの背中にしがみ付く。


今は私の背中にしがみ付いて
何だか、まるで猿の親子の様だ。


何かをぶつぶつ言いながら
私の背中にぐりぐりと頬を押し付けている。







「○○君、いい匂いする」



「ん?あぁ、服の柔軟剤じゃないかな」



「香水じゃないんだ?」



「苦手なんだよね、香水」



「このままの○○君でも、十分魅力的だけどね」



「え?」







間抜けな声を出して振り返ると
其処にはカヅサの顔があって、一瞬


ほんの一瞬だけ、唇が触れ合った ―





そうだ、忘れてた
酔うとコイツ、キス魔になるんだった


冷静に分析している場合ではない
恐いのは、視線を向けたくない先に居る


クラサメ君 ―





しかし、エミナに頬を撫でられて
若干不機嫌そうにしている彼の視線は


此方には向けられていなかった



なんで、私が安心しなきゃいけないの?
ん?背中が重い…







「カヅサ?」



「…………ぐぅ」







やらかして寝るんじゃねぇよ!
そう言う思いを込めて頭を叩いてやった


見られてたら、
君はただじゃ済まないんだぞ


クラサメ君、私には超がつく程の過保護だからな



ぼんやりと考えながら
目の前に視線を向けると、エミナが完全におかしい


いつも以上に、クラサメ君にべったりだ。
首に腕を回して今にも彼の唇を奪ってしまいそうな距離。


クラサメ君は、
そんなエミナを見つめるだけで微動だにしない


え?そんな関係だったの?







「クラサメ君、私のこと好き?」



「あぁ」



「じゃあ、私と付き合ってくれるよね?」



「そういう好きじゃない」



「あぁ〜ん!いっつもこう〜」







またまたクラサメ君がぶった斬って
エミナは彼から崩れ落ちる様に離れた


“クラサメ君のばか”
そんな言葉を舌ったらずに言いながら


エミナは夢の中へと落ちてしまった様だ。



残されたのは、クラサメ君と私。


何か喋らなければいけない、
そんな良く解らない使命感から ―







「メリークリスマス」



「…なんだ、それは」







案の定、クラサメ君は鼻を鳴らして笑った。


テーブルを挟んだ向かい側に居る彼は
いそいそと此方側に来るなり、眉間に皺を寄せる。


私の背中に
張り付いたままのカヅサが目に留まった様で。


クラサメ君は彼を足で転がした。


もう一度言います、
クラサメ君がカヅサ君を足で蹴りました。







「クラサメ君、カヅサに容赦無いよね」



「甘くすれば何処までもつけ上がるタイプだ」



「はは、確かに」



「やっと、静かになったな」



「そうだね。片付けは明日でいっか」







二人、寝ちゃったしね。
そう呟くと、私の肩に温もりを感じた。


クラサメ君が私の横に距離を詰めたのだ。


別に、一緒のベッドで眠った事もあるし。

語弊があるかも知れないが、
一緒にお風呂に入った事だってある。


そう、私達は幼馴染だから。
お互いの事を良く、知っているつもりだし。


お互いの事を見て来たつもりだ。
私は、彼には中々追い付けないけれど。



だからこそ、
こうして隣に来てくれるのは嬉しい ―



クラサメ君に、
妹としてしか見られてなくても。


私は、兄とか幼馴染とかじゃなく
クラサメ君が好きだよ、君そのものがね。







「○○、」



「聖夜だし、キスでもしとく?」



「は?」



「じょーだっ、…ん」







一瞬にして唇を塞がれた。


カヅサが私にしたのとは違う、
私の唇を挟む様にして、クラサメ君の唇が触れた。


離れる時、リップ音が鳴って私は真赤になった。







「言い出した○○が、真赤になるとはな」



「!?」



「消毒、だ」



「見てたの!?」



「カヅサは目が覚めたら、後悔させるとしよう」



「…………」







やはり、氷剣の死神と呼ばれた男は恐い。
一瞬にして人の心さえも凍て付かせる程の魔力を纏う。


私は身震いしながら、
怒りのオーラを隠そうともしないクラサメ君を見つめ苦笑した。







朝、目が覚めると
私の隣には小さなプレゼントが置いてあった。


中には、私が前々から欲しがっていたピアス。
誰だろう?そんな事を考えながらも、凄く嬉しかった。







後からエミナに聞いた話では、
クラサメ君がエミナに頼んで一緒に買いに行ったんだとか。



だから、
私がエミナを迎えに行くと言った時に焦ったんだ。


ピアスが買いに行けなくなるから。







ありがとう、クラサメ君 


そんな君が、今も昔も私は大好きだよ ―















                                  end.




back
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -