三階へ上がる階段はやけに急だった。登りづらいように設計されてあるのだろうか。しかし、罠があったりといった部外者の侵入を防ぐような物は設置されていなかったため、三階へたどり着くことは容易だった。

三階へたどり着いた緑は辺りを見渡した。三階は廊下が真っ直ぐ続いており、その先は行き止まりになっていた。右側一面は白い壁になっていて窓はない。
左側には部屋が二つ。手前から警備員室、管理者室とプレートが掛けられている。
それだけ見ればなんということはない普通の廊下だが、一つだけ不自然な場所があった。
一番奥の左側、鉄格子が見えたのだ。
牢屋だろうか。


緑はその牢屋を目指した。が、すぐにその足を止める。前方に警備員が立っていたのが見えた。
先程の警備員より一回りも大きく、アメフト選手のような体格をしている。身長百八十センチはあるだろうか。
その警備員の手には南京錠がついたロープのような物が握られていた。
それで捕まえるつもりなのだろう。
緑は躊躇することなく男に向かって行った。
掴みかかろうとする腕を取り、先程と同じ要領で捻りあげる。
この男も緑のことを甘く見ていたのだろう。思わぬ反撃に体制を崩す。が、流石に体格差があるせいで完全に倒しきることは困難だった。
緑と警備員が交戦していると、鉄格子の向こうから泣き叫ぶ声が聞こえた。
その声には聞き覚えがあった。
翡翠だ。
緑は鉄格子の方に目を向けた。すると、そこには別の警備員に髪を乱暴に捕まれ引きずられて行く翡翠がいた。
その光景を目撃した時、緑の中で何かが切れるような音がした。
その刹那、緑は自身の手に力を込めていた。掴んでいた男の手をあらぬ方向に思いっきり曲げる。
すると、鈍い音が響くと同時に男の顔はみるみる青ざめていった。男は苦しそうに嗚咽を漏らしている。
緑はすかさず男が持っていた南京錠付きの紐を奪い取り男の首に巻き付け始めた。
「殺してやる!殺してやる!!」
そう叫びながら緑は手にした紐を力いっぱい引いていく。
男の顔が青から赤へと変わっていく。
白へと変わろうとしたその時、背後からいきなり首もとを捕まれ引き寄せられた。緑は驚き反射的に紐から手を離してしまった。


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