アーチを抜けると観客席へ出た。その先には三階へと上がる階段が見える。翡翠はあそこから上に連れていかれたのだろう。
緑は階段へと再び走り出そうとした。
しかし、緑はその足を止める。
緑の目の前には先程までいなかったはずの人の姿があった。
どこから出てきたのだろうか。全く気配を感じなかった。
目の前の男は警備員の格好をしているが、翡翠を連れていった者とは違う人物らしかった。
男はゆっくりとこちらに歩み寄って来る。
緑は危険を感じ遠ざかるように後退した。
すると、男は腰に携えていた警棒を振りかざし逃がすまいとする勢いで襲いかかってきた。
緑は一瞬驚くが慌てることなく相手の警棒を掴む。小学生の頃から習っていた合気道が役に立った。
警棒を掴んだ方の腕を自身の方へと引き寄せ、そのまま相手の力を利用して捻る。
男は中学生の子供に反撃されると思っていなかったのだろう。苦痛と共に驚いた様な顔をした。緑は空いている側の手で拳を作り、相手の顎をめがけ下から殴った。
殴られた勢いで脳しんとうを起こしたのだろう。男はそのまま倒れ込み気絶してしまった。気絶させるには顎を叩くのが一番良いと合気道の師匠に教わっていたのだ。ボクシングでいうアッパーだ。
緑は倒れた男をそのままに階段へと急いだ。三階へと上る際、一階から子供の叫び声が聞こえた。一緒に来た孤児院の子供の声だろうか。
ここに来た孤児は翡翠と緑を含め全部で五人。
男子三人、女子二人で今の声は少年の声だった。
翡翠は三階にいる。つまり、残った一人の少年の声だという事がわかる。
きっとその少年も襲われている所なのだろう。しかし、緑はそちらを向かず兄の元へと急いだ。





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