漆間は倉庫に来ていた。前に来た時は先客がいた為に調べられなかったからだ。
漆間は改めて倉庫内を確認する。
そこには様々な大きさのダンボールが所狭しと置かれていた。

漆間は手始めに向かって右の中くらいのダンボールを開いてみた。
中に入っていたのは工具セットが2つ。それと、ドライバーやペンチ、金槌などといったある程度の工具が揃っていた。ネジや釘もたくさん入っている。
漆間はそれを確認しダンボールを閉じると、今度は別のダンボールに手をかけた。

大きめの箱を開ける。たくさんの小瓶が姿を表した。中にはどれも液体が入っているようだ。
漆間はその一つを取り出すと小瓶の蓋を開けてみた。
その液体からは花のような匂いがした。

不意に背後から声がかかる。
「何してるの?」
漆間は振り向き声の主を確認する。
そこに立っていたのは黒い猫耳パーカーを着た少女だった。
少女の名前はなんだったか……。
そう考えながら漆間は問に応える。
「見りゃ分かるだろ。漁ってんの。……お前、名前は?」
「ボク?ボクは羽護天(うもり そら)だよ。こんばんは」
こんばんはと言われ、漆間は今が夜であることに気づいた。
時間などここに来てから忘れていた。
窓が部屋にしか付いていないせいだろうか、時間の感覚が掴めない。

漆間は倉庫の探索を明日にしようと考え持っていた小瓶をしまおうとした。しかし、漆間はすぐにその手を止める。
羽護ならこの液体の正体を知っているかもしれない。
「……そうだ、お前これ何かわかるか?」
そう言いながら漆間は小瓶を羽護の目の前に差し出した。
羽護は首を傾げながらそれを見つめる。
「それは……もしかしてポーション!……あ、キミの名前聞いていい?」
漆間はそれに応え、続けて質問した。
「俺は漆間緑。……ポーション?って何?」
「ゲームでよくある体力回復薬かな、きっと回復できるよ」
そう言われ漆間は思いだす。
確か羽護の才能は超高校級のゲームマニアだったはずだ。
思考がゲームに偏っているのもそのためだろう。
漆間は液体を眺める。絶対回復薬ではないだろう。
「……この花の匂いがするドロドロの液体が回復薬だってんならお前飲んでみたら?」
そう意地悪く言ってみた。
すると羽護は目を逸らしながら答えた。
「……ポーションはボク炭酸のしか受け付けないから遠慮しようかな」

(嘘つけ……)
漆間は内心呆れながら羽護の言葉を聞いていた。
「ふん、ポーションじゃねぇだろこれ。……やっぱ後で聞くしかねぇか」
そう言って漆間は小瓶をポケットにしまい立ち上がった。
これを用意したリアに聞いた方が早いだろう。
その様子をみた羽護は申し訳なさそうに言った。
「ごめん、ボクのイメージはポーションだったんだ……。そうだね、聞いた方が早いもん」
やはり羽護もこの液体が何か知らなかったらしい。

漆間はため息とともに言葉を放つ。
「……じゃあ、ちょっと聞いてくる」
そう言うと漆間は羽護を残し、倉庫を後にした。








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