「アラ不思議!生徒手帳が消えマシたッ!」
漆間は目を丸くして自分の掌をまじまじと見つめた。
「ほんとだ……手帳、どこやったんだ?」
「手帳は……ザンネンながら……消えてしまいマシた……」
ピエロは泣くような素振りをしながら言った。
手品には仕掛けがある。本当に消えたわけではないと漆間は分かっていた。
「嘘つけ。はやくタネ明かして手帳返せ」
「ピエエッ!せっかちサンデスねぇ……デハ!」

そう言うとまた指を鳴らした。
「ハイ〜♪アナタサマのポケットの中で御座いマス!」
「ポケット?」
そう言われ漆間は自身のポケットに手を入れる。指先に硬いものが触れた。生徒手帳だ。
「どうやったんだ……?」
漆間はタネが分からず質問した。
「フフッ、それはご自分でお考え下サイな!すぐネタバラシしては面白くないデショウ〜?」
教えてくはくれないらしい。それもそうだろう、手品はタネが分かってしまえばそれはもう使えなくなってしまう。
「どうせ考えても分かんねぇし。バラしてもらった方が俺は有難いけどな」
そう漆間は言ってみた。

「そうデスか?フフッ、デスがマジックという物は分からないからコソ楽しめるのデスよ〜と言う事で、ナイショで御座いマス♪」
「内緒かよ……。まぁ分かってたら楽しめないのは確かだけど、分からないとイラつく。今度絶対教えろ」
漆間は腕を組みながら言った。
「フフッ仕方ありまセンねぇ……デハ少しご自分でも考えてきて下さればお教えいたしマス♪」
「……分かった。考えてくる。俺は探索に戻る。じゃあな」
漆間はそれだけ言うと再び廊下を歩き出した。
「ハイ〜♪是非色々思考を巡らせてみて下さいな♪」
ピエロもそう言うと逆方向へと廊下を進んで行ったのだった。



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