食事を終えた漆間は自室に戻るため廊下を歩いていた。
「?」
漆間は廊下に倒れている男を発見した。
倒れているというより、どうやら眠っているらしい。
身長は漆間よりも高い。2m近くあるだろうか。
漆間はちょんちょんとその男を蹴った。
「おい、起きろ」

すると男はパチっと目を開け、何かを探し始めた。
「カード……!」
床に散らばっていたカードを素早くかき集め丁寧に数える。
「良かった……あった」
そんな様子を見て漆間は呆れた。
無用心すぎる。
「はぁ?てめぇ、こんなところで寝てんじゃねぇよ。邪魔だぞ」
そう漆間が言い放つと男は謝りながらカードを際に寄せた。

そのしょんぼりとした様子に少し罪悪感を覚えた漆間は仕方なく交流してやることにした。
「……それ、何のカード?」
「今日は……セレクター、っていう……カード……」
漆間はゲームが苦手だった。
もちろん、カードゲームも然り。
「セレクター……?なんだそれ?」
漆間は問いかけた。
「女の子の……可愛い……カード、ゲーム……」
漆間の頭上に一瞬クエスチョンマークが浮かぶ。
しかし、漆間はすぐに思い出した。確か生徒手帳のプロフィールに『超高校級のカードプレイヤー』と書かれていたはずだ。
「……なんか、意外だ。あー、お前って超高校級のカードプレイヤー?だっけ?……カードなら何でもやるって感じか?」
漆間は男に問いかけた。
男は頷く。
「カードなら…どんなのでも、やる。……シンクロとか、融合とかのカードゲームから……服装を、変える……幼女向け、カードゲーム、まで……はばひろく……」
そう説明した男の瞳は輝いてみえた。
本当にカードゲームが好きらしい。
漆間は関心した。
「ほんとに幅広いんだな。ゲーム系はルールがめんどくせぇからなぁ…」
そう言った後、まだ名前を聞いていないことに気づいた。

「そういやお前、名前は?」
「なまえ……名前……芥火。芥火風織……カヲル、で良い。……みんな、そう……いう」
カヲルと名乗った男は何故か下を向いた。

カヲルの言葉の意味に引っかかったが漆間は気にせず質問した。
「お前何でこんなとこで寝てたんだ?」
「カード……デッキ……作ってたら……寝ちゃ、てた。部屋まで、移動……して……デッキ、調整……するのも、面倒だった、から……」
カードを見つめながらカヲルはいった。
「廊下でデッキ組んでたのかよ……。お前熱中すると周り見えなくなるタイプだろ……。つーかよくこんなとこで寝られるな」
「どこだって、寝られる。……カード、さえ……あれば……」
そういうとカヲルはカードをぎゅっと握りしめた。
「どんだけカード大事なんだよ……。あんま変なとこで寝てっとカード失くすぞ」
また廊下で寝られて何かあっても面倒だと思い漆間は忠告した。
「カード、とっても……大事……カード。……次から、気を、つける……」
カヲルはいまだカードを握りしめている。
悪い奴ではなさそうだ。
「ん、気をつけろよ。……まぁ失くした時は言えよ。じゃあな」
漆間は当初の更正の目的も兼ねてそう言うと自室へと戻っていった。

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