創作審神者あれこれ | ナノ
今剣×審神者

紅緋本丸の場合
初鍛刀した刀剣男士で、初期から現在まで一軍で活躍する古株の1人。幼い容姿だが紅緋のよき相談相手。
イケショタ枠その1。
***
審神者は戦場へと向かえない分、本丸内での様子や戦績などを細かく記した報告書を作成する。出陣の記録は勿論のこと、演練や鍛刀、手入れについても記入して提出しなくてはならない。普段ならすんなり終わるのに、今日は気づけば手が止まってる。そのため、文机に乗った書類はまだ半分も終わっていない。
一向に減らない紙束に視線を流し、筆を置いて小さなため息を一つ。
…あ、幸せ逃げる。吸わなきゃ!
一人で慌てて深呼吸を何度か繰り返した私は、ごろりと畳の上に寝転がった。そっと目を閉じれば浮かぶのは月の名を持つ美しいかみさまの姿。
『はっはっは。よきかなよきかな』『すきんしっぷ、と言うやつか?主なら好きなだけ触って良いぞ』『世話されるのは好きだ。やはり主にしてもらうのが一番だな』
上品な青の狩衣と月を秘めた瞳。柔らかな微笑みに刀を握る大きな掌。男性なのに綺麗という言葉がしっくりくる彼は。
「みかづきさん、かー」
私も以前より三日月さんに触れるのは慣れたし、お礼に頭を撫でてくれたりするのにも慣れてきた。手入れとは言え、大人の男の人の姿だから苦手意識があるのは確かだし。なのに。
昨日は、違った。
何故か分からないけど。触れてみたい、と思ってしまった。
「もー…何なんだろう……」
もやもやするー。
意味もなくあー、とか、うー、とか、小声で唸りながら寝返りを打っていると不意に執務室の襖が開いた。
「あるじさまー!」
「いまつる!?」
慌てて飛び起きると、そこには内番衣装の今剣がニコニコして立っていた。今日は岩融と一緒に畑当番を任せたはずだけど。
私は手櫛で髪を整えつつ疑問を口にする。
「畑はもういいの?」
「はい!いわとおしにいってきていいといわれたので、まかせてきました」
「え?何処か出掛けるの?」
「おそとにはいかないですよ」
「もしかして御手洗いのついでに来てくれたとか」
「はずれですー」
笑顔のままスタスタと部屋に入ってきた今剣は、普段近侍が座る所にふんわりと腰をおろすと。
「あるじさまがげんきになるようにおはなししにきました」
無邪気な笑みが向けられるけど、子供のように小さな手はがっしりと私の膝の上に乗った私の手を放さない。言うまで放さないってことですね、はい。
…いまつるには敵わないなぁ。
そっと手をほどいた私は、ちょっと笑って正座から体育座りになって膝を抱えた。
「…あのね、最近何か変なの」
「どんなふうにですか?」
「んー…上手く言葉に出来ないから困ってるんだけど」
「じゃあ、あるじさまは、まえとどんなことがちがうとおもうんですか?」
「男の人、苦手って言ってたでしょ?でも、昨日はちょっと違って…」
傷ついた三日月さんのしなやかな筋肉のついた腕に、美しい輪郭の頬に、艶やかな髪に。
「触ってみたいなぁ、って…思った」
「それは」
「べっ、別に変な意味じゃないんだよ?単純に綺麗だなぁって思っただけで!」
「ふふ、だいじょうぶですよ。それいじょうさきは、あるじさまにはまだはやいですからね」
私にはまだ早いって、いまつるは何を想像して言ってるんだか…。むしろ私の方が歳上に見られるはずの容姿なのに。
よく考えてみれば、下手をすれば三条派の中でも一番のお兄ちゃんは彼なのだ。
そりゃー敵うわけないかー。
「おもったよりしんこくじゃなくてよかったです」
嬉しそうな声音で言った今剣は小さな手で優しく私の頭を撫でてくれた。
わー、なんか新鮮。
「いまつるは、理由が分かったの?」
「とうぜんです!」
「でも教えてはくれないんだね」
「とうぜんですよ」
自分で気づいてね、ってことですか。
「ですよねー…」
「でも」
項垂れた私の耳元に今剣が口を寄せる。
「ひとつだけ、たしかにいえるのは、あるじさまもひとりのおなごで、いまのぼくたちはツクモガミでありひとりのおのこということですよ」

まだまだこどもですね、あるじさま



終わり

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