アーサー・カークランド | ナノ

 日常の中の非日常

気付けば何時でもなまえが隣にいた。

「あーさーくん!」
「なんだ」
「いっしょにあそぼ!」
「しょうがねーな。なまえは、なにしてあそびたいんだ?」
「あーさーくんがいっしょなら、なんでもいいよ!」
「じゃあ、ちかくのおはなばたけ、いくか?」
「いくー!」

いや、正確に言うなら、俺の後ろを着いてきて。

「アーサー、待って!」
「…あんまりのんびりしてると遅れるぞ?」
「待ってよー!」

振り向く俺に、嬉しそうな笑顔を向けるんだ。俺はその笑顔が大好きだった。

俺となまえは簡単に言ってしまえば幼なじみだ。家は道路を挟んで向かい合っている。登下校は大体一緒で、休みの日には買い物に出掛けたりもした。長い時間を共有してる、大事な幼なじみだ。
そんな生活は俺達が高校生になっても変わらずに続いていた。


「あ、今日の英語当てられるんだった!アーサー、」
「ダメだ」
「まだ何も言ってないってば」
「ノート見せて、だろ?」
「う……」

ちょっと渋い表情で隣を歩くなまえ。
俺が英語得意なこと知ってるもんな。なまえが言いそうなことなんてお見通しだ。

「このままじゃ、お前のためになんねーだろ」
「そう、だね…」

あああ!そんなあからさまに落ち込むなよ!

「お、お前がどうしてもって言うなら、その…教えてやってもいいぞ?」
「本当に!?ありがとうアーサー!」
「べっ、別になまえの為じゃないからな!俺の復習の為で、」
「知ってる!それでも、ありがとう」

柔らかな微笑みと共に耳に運ばれるお礼はとても心地よかった。

そんな会話をしつつ、校舎へと入って下駄箱を開ける。
この時間帯は登校ラッシュより少し早い時間帯だから、人通りはまばらだな。
上靴に履き替えてなまえに目線を送ると、何故か下駄箱を見て固まっていた。

「どうした?」
「ん、何でもないよー」
「いや、何でもなくないだろ。何か入ってたのか?また悪友三人組から」
「ち、違うの!」

歩み寄ると、咄嗟に何かを鞄に隠したのがちらりと見えた。それにさっきより少し顔が赤く見えんのは気のせいか…?

「何でもないなら見せてくれたっていいだろ?」
「えっ、と……。その…アーサーには関係ないものだから」
「……」

アーサーには関係ない、か……。

「そうか。ならいい」

俺は踵を返して教室へと向かおうとする。声が若干拗ねた感じになった理由は自分でもよく分からない。

すぐ後から軽い足音が追ってきて、躊躇いがちになまえが背中に声をかけてきた。

「あのさ、もしもの話だよ?」
「あぁ」
「もし、アーサーはラブレター貰って呼び出しされたら…」
「先ずは行ってみるな。そして、直接相手に自分の気持ちをぶつける」
「やっぱりそれが良いよねー…」
「俺はそうするけどな」

急にどうしたんだ?…まさか!

「なぁなまえ、さっきの手紙、」
「じゃあね、アーサー!また後で!」
「あ、ちょっ…!」

俺の呼びかけも虚しく、なまえは自分のクラスへと軽やかに駆け込んで行った。伸ばしかけた手は行き先を無くして宙に浮いたまま。

別に気にしてねーし…!

少しだけ釈然としない気持ちを抱えつつも、生徒会室へと向かう足は速度を緩めなかった。




日常の中の非日常


(長馴染みなツンデレあーさー)

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