ぼんやりとした頭で考えてみる。たとえば、自分が女だったら白石さんは俺を好きになってくれただろうか。
普段考えないことをつらつらと頭の中にあるノートに箇条書きにする。
そもそもなんで俺なんだろう、だとか。考えたって仕方のないことだよなーって頭では分かっているんだけど、如何せん暇すぎるのがいけない。
遠くからぽーん、ぽーんとボールを打ち合う音が聞こえて今すぐその音の中心に行きたいという欲求がむくむく沸き上がる。そんなどうしたってできないことを乞うのは余計虚しく感じるだけだから、気を紛らす為にまた考え始めることにした。
何度考えてみても、俺を好きになってくれた理由が分からない。ひょっとして、まさか髪型なのかな、いや、いくら白石さんでもそりゃねーだろ…
ゲイではないって言っていたし、俺に何か惚れられる要素なんてあったっけ。

(あー…もうわっかんね!)

元々考えるのは得意ではない。しかも色恋沙汰などテニスに関係ないもんは尚更御免だ。
どうしてこんなときにゲームがないのだろう…ああほんと退屈。
でもまぁ、あんなに素敵な人が俺を好きになってくれて、しかもその事に嫌悪感を微塵も感じなかったんだから、俺も“恋人”としてちゃんと好きにならなきゃな。

(あ、なんだ結論出たじゃん。)

新しくできた年上のできすぎた恋人との関係性を考え始めた結果、こんなあっさりと結論が出てしまい半ば苦笑しつつもどうやら体は素直なようで、答えが出たことに安堵したように襲ってきた丁度心地よい眠気に身を任せることにした。







パチリ、そう音が出そうなぐらいはっきりと目が覚める。それが自分のものだと分かったとたん意識が覚醒した。
あんなに怠かった体が嘘みたいに軽い。睡眠ってすげーな、なんて思いながら枕元の携帯の時刻を確認すれば19時32分。
きっと今まさにこの時間は夕食タイムだよな…あーでも食堂まで行くのめんどくさいし腹減ってない。
せっかく具合もマシになったっていうのに起きた時間が最悪だ。あと一時間近くこのまま一人でいるのはほんとに暇で死んでしまう。

せめて誰か気紛れにでも来てくれないかな…とか淡い期待を込めて扉を見つめていたらギィっと遠慮がちに開く音がして、期待通りに誰か来たにしては都合が良すぎる!と、思わず反射的に布団の中に潜ってしまった。

「切原くん、起きとる…?」

扉を開けた時のように遠慮がちに弱く発せられた声にどくり、と心臓が跳ねる。
これまたタイミングが良すぎる。よりによってなんでさっきまで考えていた白石さんがくるんだよ!
お願いだから早く出てってくれ…!とバクバク煩い心臓を押さえて必死に祈るものの、突然捲られた布団に息が止まりかけた。

「なんや、起きとるんか」

いたずらっ子のようにクスクス笑う白石さんに釘付けになる。
ああもうどうしてこの人はこんなに綺麗なんだろう。ほんとに同じ中学生か?!しかも俺の恋人って…何か絶対間違ってる。

「いや、あの、さっき起きて」

「そうなん?具合少しは良くなったみたいやな。」

「あ、はい。」

「よかった、心配しとったんよ」

ふにゃりと笑って俺の頭を撫でる手にもう何も言えなくて。
ほんとに心配されてたんだな、と思う反面何故だかそれが無性に嬉しかった。

「ありがとうございます…」

やめる気がないのか相変わらず頭の上をいったり来たりする心地よい体温に鼓動がトクトクと少しずつ早くなっていく。
今なら聞けるかなーと昼間から疑問に思っていたことをいい機会だし、ぶつけてみることにしよう。

「白石さん、なんで俺なんスか?」

そう問えば一瞬キョトンした後、何故だか含み笑いを俺に向けてきた。

「あんな、切原くん」

そのまま近付いてくる顔に、ん?と思う間もなく聞こえてきたリップ音にキスされたのだと理解する。え、あ、え?!なんて突然のしかも初めての柔らかさにああ、俺本当に白石さんとキスしてたんだ…!と実感すれば一気に体の熱が顔に集中しだして、逆にニコニコした白石さんは落ち着きながらも人差し指を俺の唇にぽんとおいた。

「堪忍。切原くんが俺のこと好きになる魔法、かけてしもうた」

そうしてまた俺の額に唇を落としてそれからほな、と言い来た道を戻って出てっちゃって…
もう、あの人はなんなんだよ、嵐みたいじゃねーか!だなんて照れ隠しに枕を叩いてみたり。

(あーもう!これ、どうすりゃいいんだよ!)

触れられた頭と額と唇がひどく熱い。質問の答えを得るどころか、余計ワケわかんなくなってしまった。

「っ、」

ただ一つ、このどうしようもない熱とぶっ壊れてしまいそうなぐらい煩い心臓において言えるのは、

(全然嫌じゃなかったっていうこと)



アン・ドゥ・トロワの魔法

(きみが答えを知る頃には魔法は完成さ!)











――――――――
『Apple Tea』のうさりんごさんから、相互記念としてお話を頂きました!

まさかこんな素敵な白赤を頂けるとは思っていなかったので、見たときには涙腺が…っ(;;)
何故自分なのかと悩む赤也が可愛らしくて、そんな赤也を虜にしてしまう白石さんが素敵で…!
いたずらっ子のようにクスクス笑う白石さんを想像して悶えない訳がありませんでした…大人っぽいのに、そういうところで中学生らしさのような部分を見せる白石さん…反則です……

うさりんごさん本当にありがとう御座いました!
これからも宜しくお願い致します^^*



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