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ーーーーーただの、いつもの冗談のつもりだった。



「おぃ!待てよ土方!!」


体中の傷が歩くたび痛む。
追いかけても土方の歩くスピードに走っても追いつけない。

聞こえてない。

大丈夫かよアイツ……


心配になるが 大したことにはなると思わなかった。









必死に叫ぶ俺の後ろで足音が聞こえ、男2人が俺を抜かしてきた。刀を持っているが幕府のやつらじゃない。攘夷志士か。

その男たちは 明らかに土方に殺気を放っている。

でも、自分の気配も消せないようなザコだ。


俺は 手を出すどころか ちょうどいいと思った。


だって、これで土方が1旦止まるだろ?




走るのを止めて 歩きながらやつらを見る。




「真選組副長 土方十四郎だな」


「…………」



男たちは土方に向けて刀を抜いた。それを見て 何も聞こえてない風だった土方がやっと口を開く。




ゆっくり、





ゆっくり、





「ちょうど良かったなぁ…俺も今、







死にたかったところだったんだ」






一瞬、土方が言ってる意味がわからなかった。




「抵抗はしねぇ。もう……」






やめろ




「もう、……殺してくれや」








時間はゆっくり流れているように感じるのに、名前を叫ぶ前に、俺が走り出す前に、


刀は土方の腹部に刺される。


頭の中が真っ白になって、すぐに志士の刀を奪い殺して土方に駆け寄った。



「土方!!土方!!おい!!」



何も、言わない。

頭を打ったのか 頭からも血が出てる。




すべて、真っ赤に染まる。




こんなつもりじゃなかった。




「俺の…所為だ………」




なぜ、



なぜ、こうなった?


何死にてぇとか言ってんだよ…


真選組は?他のやつはどうなると思ってんだ?






「なにやってんだよ!!」



叫んだ言葉は、自分に言ったのか、土方に言ったのかわからない。



夢であるなら、どうか覚めてくれ。






救急車なんて待ってられない。

すぐに土方を抱えて病院へ行った。医者は深刻な顔をして土方を引き取る。

怖くて怖くて、土方の様子が見えるガラスを見つめる。



「坂田さん…」



突然声をかけられ、後ろを向くと別の医師がいた。



「先生!土方は大丈夫ですよね?!」



「あぁ…そんなことよりも君も来てくれ」


「へ?土方に何か…?」


「いや。土方さんは向こうの医師に任せてくれ。わからないのか?君も重傷だぞ」



そう言われてはじめて気がついた。傷口が開いて出血してる。


でも、



「俺なんて どうでもいい!!土方が……」


「坂田さん!君の状態はほうっておけない…わかってくれ」


「っー…うるせーよ。俺が平気って言ったらっ……………」



目の前が 歪んで見える。



「ほら だから言ったんだ」



呆れたように医師が言って 俺に駆け寄り、看護婦とかを呼ぶ。


待って、


これで、土方が居なくなってたら 俺は………



心とは関係なく、意識は薄れて行った。









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