愛しさか屈辱か。
目が覚めると土方という男の姿はなくて、起き上がると来る時に着ていた着物とは違うものを着ていた。
あの男が着せてくれたのだろうか。
確かに、前の着物は着れたもんじゃなかった。
静かな部屋。
何を考えているのか、あの男は枕元に俺の刀を置いたままだ。
とりあえず、ここに居ても仕方ない。そう思って立ち上がり、閉められた障子を開けると、目の前に土方が立っていて、驚いた表情を向けてきた。
「お…起きたのか」
「どげよ。帰る」
「帰るって…どこに帰るんだ?」
「…………」
「ちょうどいい。今から見回りに行くんだ。お前も来いよ」
「は?なっ」
「嫌ならいいんだぜ?その代わり牢屋にぶち込むことになるけどな」
「は?冗談じゃねーよ!!なんで」
「この時代に刀ぶら下げて歩いてるからだよ。今のお前は特に危険だしな。過激派の連中につかれたら厄介だ」
「…………」
「どうする?」
どうする?って、なんかすげームカツク。
こいつは何なのか。
どんな関係だったのか答えない。抱いて、抱かれて。でも、牢屋に入れと平気な顔をして言う。
でも、心の中でこの男が愛しいと思ってる気持ちがある気がする。
簡単に考えるなら、俺はこの男とセフレで、ヤってる内に俺がこいつを好きになってたとかか?
有り得ない。
自分が信じられない。
幕府関係の人間に平気で抱かれて、惚れて………
頭が痛い。
「おぃ、どうすんだ?」
とりあえず、ここに居ても仕方ない。
「いくよ…」
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