虐め苦しめ。
不安だった。
確かめたかった。
本当は少し期待してた。
すべては、そんな馬鹿な思いから。
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「ご飯、作った」
そう言って目の前に、料理を並べ、銀時は向かい合わせに座った。
いつもより少し力を入れて作ったのだろうか。そんなことを考え、手を合わせれば銀時は不安そうにこちらを見た。
心配しなくても、お前の料理なんて食ったことあるけど充分うまかったって。
あぁ、マヨネーズつけずに食うのは初めてだったな。
「……うまいよ」
そう呟くと、銀時は何も言わず食べ初めた。
嬉しそうに、頬を桜色に染めて。
あぁ、黒い感情がグルグルとまわる。
まずいと言えばよかった、と。
だってこいつは、
「銀時」
「ん?」
俺のことなんか好きでもなんでもないんだから。
「好きだ」
「なっ…!」
これは、虐めだ。
何度も何度も、お互いを感じあっても尚、俺のことなんざ興味なかったこいつに対する大きな虐め。
「ずっと、言いたかったんだ」
苦しめ。
苦しめ。
でないと、俺が死んじまいそうだ。
「じゃぁ、帰る。また来る」
「待って!」
待てない。
待たない。
今のお前の面は見たくない。
でも銀時は、どんなに必死に逃げてもあっという間に追い付いてきて、俺の目の前に立った。
靴も履かずに真っ赤な顔して。
「あ、……泣いて…んの?」
馬鹿みたいに優しく、着物の袖で俺の涙を拭いて、
「俺もね…、好きだよ」
知ってる。
「好きだよ。松陽先生」
あぁ、苦しめ。
苦しんでしまえ。
3日しかないこの時が過ぎてしまった時を。
これは、虐め。
薬が切れるまでの虐め。
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