馬の場所と城への行き方を聞いて寺をとび出した。




頭の中で何かが渦巻いく。



何もなくあってほしい。



いや、何もないはずなんだ。

吉田松陽はまだ生きてるのは確実なんだ。




「ふざけんなよ…」



降り積もる雪のおかげで 銀時が乗っていた馬の足跡が微かに残っていた。


顔が切れそうな感覚に襲われながら、馬を加速させる。


10分ほどして、やっとその場所が見えた。








そこは静かだった。


砕けた門の前で馬から降りて、雪を踏み付ける音が響くほど。




ゆっくりと、門を開ける。




そこには 沢山の天人が敷地に横たわり、赤い雪が積もっていた。




「んだ…これ…」



警備が少ないんじゃなかったのか?


あいつがこれをやったのか?



その天人の死体が中まで続いている。



「嘘だろ…」



一歩一歩、まるで道標のようにある天人の死体をたどり、地下へと進んだ。



階段を下るにつれて 天人の数も減る。



そして、やがてたどり着いた場所から 聞き覚えのある声がした。

間違いない。銀時の声だ。

銀時は 牢屋の中にいる誰かの横に寄り添って座っていた。

返り血で真っ赤に染まったまま、荒い呼吸を震わせながら、何か話している。


俺のことに 気づいてないようだった。

ただただ、涙を流しながら 隣にいる 人間に話をしてる。



まるで、壊れた玩具みたいに。



隣でそいつの手をしっかり握りしめて。



多分、あれが松陽だ。


でも、




松陽には、なんの反応も無かった。


反応どころか本当に生きているのかさえ不安になる。





真冬の、寒い寒い中だった。





どれくらい前から松陽はここに移動されたのかわからない。

銀時に握られた松陽の手は、寒さで真っ赤に腫れ上がっていた。手だけでなく足も。



この極寒の中、真夏のような薄着で捕われていた。




んだこれ…。




ただ漠然とその様子を見る。


すると松陽の口が微かに動いた。


同時に銀時がゆっくりと立ち上がり、その口を手で塞ぐ。





そして血がべっとりとついた刀を、松陽に向けた。





狂ったのかと思った。





「おい!!銀時!何してんだ?!」




いや、狂ったんだ。



必死に銀時の名を呼びながら、駆け寄る。



刀を持った銀時の腕を掴むと、その腕は間違いなく、松陽に振り下ろそうと力が入っていた。
微かに触れた肌が恐ろしく冷たい。



「ひじ…かたか…」


やっと反応を示したと思えば、涙をピタリと止めて、俺から目をそらした。



「刀貸してくれよ。これじゃ斬れない」



そしてゆっくりと松陽を見下ろし、俺の腰に手を伸ばす。




「やめろ!!しっかりしろよ!」


「うるせぇ!!はやくしろよ!!」


「こいつが松陽先生だろうが!!お前が会いたがってた!」




銀時がまた、涙を溢れさせて呟く。



「耳は聞こえてない…。目は見えてない…。感覚すべてない…」


「っ…」


「足枷には何かしかけがしてある…」


「銀時…」


「どうせ死刑に、なるんだろ…?」


「でも口が動いたじゃねぇか!反応したんじゃないのか?!それなのに…」


「毎日おんなじこと言ってんだよ!!」


「……は…?」


「昨日の晩に…ここに来た…。俺もはじめは…そう思ったけど…しばらくしたら同じこと言ってんだよ!!」




松陽の口から離した銀時の手は、新しい血で濡れていた。




松陽は喉を切っていた。




寒さと、乾きの中で ものを話し過ぎたからだと銀時は言った。




「何回も何回も…くだらないことを言ってたんだ…」




頭の中が、真っ白になる。




「昔俺たちにした小さなことを謝りたいって…別に、誰も気にしてなかったっていうのに…」




「…俺たちへの伝言を頼んでるんだ。目の前にいるのに…」



「銀時」



「んな顔すんなよ…。未来と違う?…俺には関係ない」





銀時が俺の顔をじっと見つめた。



ゆっくりと俺の腰から刀を抜いていく。



その姿はまるで人を喰らう鬼のようだった。




「こんな世界、いらない」




「な、に言ってんだ…」




なんだ…?



「土方、苦しい?」




俺が思ったのと違う。




「そんなに苦しいなら、お前も」




銀時はここに来ることになってた。



その後どうなったかわからない。



だが、松陽を殺すことにはなってないはずなんだ。





俺が、





「死んでいいよ」





俺が、自体を悪化させた。








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