「その手と足!」


寺に帰って部屋に入った途端、土方が叫びだした。


「んだよ うるせーなぁ…」


「凍傷になりかけじゃねぇか…」


「あ、まぁ…結構外いたし。お前は大丈夫なわけ?」


「俺は厚着だし 靴下履いてる。お前みたいに水ん中入ってないしな」


「でも手ぇ水ん中入れて顔洗ってただろ」


「その後ポケットに手入れてたよ」


「ずるっ!」


「だ、」



土方が何かいいかけ、手を伸ばしてすぐに引っ込めた。



庭に出て、生えていた木の枝を折ってポケットから出した何かで火をつけ、縁側の前に置いて、少し当たってろと言った。

押し入れを開けて布団を取り出してかける。



「ガキじゃないんだけど」


「俺から見たらガキだよ」


「…なぁ、お前さ…幕府だとか…やめろよ」


「それは無理だよ」


「即答?」


「あぁ…」



言っても無駄な感じ。


幕府なんかやめればいいのに。


でも、こいつはこいつなりになにかあるのかもしれない。



「銀時」


「なに…」


「お前、松下村塾の場所わかるか?」


「……あぁ」


当たり前だ。


「ここから半日で着くよな」


「…?なんでそんな…」


「明日朝早く、ここを出ろ」


「ちょっと待て!あそこに行っても炭しか…」


「そこの近くに山がある。その奥に小屋が…」


「嘘だろ…」





なぜ、今まで気がつかなかったのか。




「いつからっ…」


「わからねぇよ…。刑を決めるまで一旦ここに移されたんだよ」


「んだそれ…いきなりそんなこと…。なら…今まで…」


「今までのことはいいだろ!今は捕まらず助けることだけ考えろ!なにをしても明日なんだ」


「…わかったよ…」



「とりあえず今日は寝よるぞ」


「明日のこと高杉たちに…」


「いい。行ける。今は落ち着け」



そう言って頭をぽんと叩いた。



「ありがとう」






その一言を聞いた、土方が見せた表情は、多分 一生忘れない。








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