死にゆくことの




「死んだ」


どこから来たか自分でもわかっていなくて、曖昧に未来から来たという男が言った。


問えば素直に答える真っ直ぐなやつ。


嘘をいうようには見えない。
今まで隊の中で一度も見かけたことがない土方という男。

どこから来たのかわからないが こいつは幕府の何かだと思う。
見たことのない洋装の制服で、新しい刀をさしているから。
廃刀礼が出ると噂される中、誰もが使い古した刀を使っているの中でそんなことできるのは幕府の関者だけだ。


戦争に負けたんだろうと問うと、少し困ったような顔をした。


未来から来たにしても頭がイタいだけにしてもどうでもいいことだ。


嘘を言ってるように見えない。それだけでいい。


今の幕府の中で予測されている戦争の結末を話しているのか、本当に未来で見た結果を話しているのかというだけの話だ。



なんのつもりなのか、正直に自分の立場を明かすそいつ。
自分の立場が悪くなることばかりだ。




『あいつは未来で人を殺す』


『俺が殺した』


あいつらが悪いことするわけないだろ。


未来で人を殺す?


なら、未来で俺の仲間を殺すお前を今、俺が殺していいのか?

未来では天人の天下で、大方散々暴れ回った攘夷は敵なんだろう。



まぁ、信じた場合だけだけど。


俺に殺されたいのか、なんて思うが、いきなりそんなこと言われてどうもできない。














ふと、信じた前提で、



百歩譲って信じてみて、



質問してみた。




俺が誰かと一緒に暮らしているか。



土方は当たり前のように、正解の答えを探る様子もなく、そうだと言った。



土方は嘘を言ってるように見えない話方をする。



例えそれが嘘でも、思い浮かべて少し嬉しくなった。



嘘。




でも、土方は俺を見て怯えたような顔をして話を続けた。




なぜだろう。




嘘や空想なら、喜ばせて終わればいいだろ?




でも土方は、俺が思ってる人と違うやつと暮らしていることを知らせた。



『じゃぁ…誰がよかったんだ……?』



んだそれ…



『誰がいい!?一緒に暮らしてないってことはこの後死んだってことか?まだ生きてるなら…』



なんで、そんなに真剣な顔をして嘘をつく?



なんで、ふるえてる?



それは未来から来たからーー?。




『死んだ』



信じない。




松陽先生が死んだなんて話だけは。




イライラして、モヤモヤして、冗談でも言っていいことと悪いことがある。


信じたくない。


でも、



こいつが嘘をついてるように見えなかった。



死んだ。




こいつは何を知っていてもおかしくない。



死んだ?




なんで、そんなに嬉しそうなんだよ。



『何年の何月何日だ!?』


『今ならまだ間に合う』



頭の整理ができなかった。



『俺は、その場所を知っている』



嘘か本当か、信じていいのか悪いのか。死んだのではなかったのか。本当に未来から来たのか。


なぜここまでしてくれるのか。


「お前…幕府のなんかなんだろ…?」



未来から来たにしろそうでないにしろ、こいつが幕府の者であることにかわりはない。


なぜ、そこまで俺にしてくれるのか。


土方は小さく、さびしそうに笑った。



「だって…お前が悲しむだろ…」


「へ?」


今、なんていった?


「今日は遅いし夜は警備もある。また明日にしよう」


「あ、ああ…でも朝も昼間はまた戦がある。行けるのは今だけじゃないのか?」


「戦があるのは天人も一緒だ。戦なら俺が代わりにでる」


「は!?んなことしたら…」


「言えば高杉たちもわかってくれるだろ」


「そうじゃなくて!お前が…」


「心配すんな。もうお前の仲間を斬ろうなんざ思ってねぇよ」

「いや、そんなことを心配してるんじゃな…」


「ん?」


「い、いや…」



んだこいつ。

なんでそんなに嬉しそうにする?



「今日はもう寝よう」


「あぁ…」



見てみぬふりをした。






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