意味が理解できない。

その暮らしている“誰か”は誰でもいいのだろうか。それとも今の仲間だろうか。



いや、もしその希望が叶っていたとしたら 銀時はあんなに後悔したような瞳は見せないだろう。



この時代の誰か。

銀時が大切に思う誰か。



確かめるように、呟いてみる。


「眼鏡をかけたガキと、チャイナ服着たガキだ…」




銀時の顔を覗く。





ほら、違った。





「んだ…それ…」


「お前が一緒に暮らしてるやつだよ」


「は…?」


「グラサンかけた長谷川って男と飲みに行くのをよく見かける」



銀時は思った以上に顔を青くして地面に倒れた。



「違う…」


「じゃぁ…誰がよかったんだ…?」



誰であるなら 苦しまない?



「そんなやつ知らない…。なんでそいつらと暮らしてんだよ…」


「でもお前は大切そうにしてたよ」




頭の中に危険信号が鳴る。



俺はここにいる度、怖くなる。
今わかった。

それはこいつにじゃない。

俺が知る銀時に。

こいつの笑顔も、志もなにもかもだ。


これが未来の銀時の本性ではない。だからガキ共と暮らして殆ど一緒にいるんだ。
そう思っても、胸が苦しくなった。


こいつの思いが強いほど、失ったあいつの腹の中が怖くなる。



こいつが言ってるのは多分高杉や桂じゃない。
だったらとっくに何かしてる。


「誰がいい!?一緒に暮らしてないってことはこの後死んだってことか?まだ生きてるなら…」



必死に肩を揺する。
銀時は奮えながら、ゆっくりと口を開いた。



「松陽せんせ…」



その言葉が頭に入るのに時間がかかった。



そしてそれが誰か浮かんだ瞬間、頭の霧がすべて晴れるような感覚がした。



吉田、松陽。



俺は、一度調べたことがあったんだ。


「死んだ…」


高杉や桂たちのことを調べていく中で出た、やつらの師の名前。



確かしばらく囚閉されて、処刑されたって聞いた。

自分で自分には死罪が妥当だと言ったとか。



「信じられるわけないだろ」


「あぁ、信じなくていい。今日は何年の何月何日だ?」



銀時が呟いた答えに、なんともいえない気持ちになった。



「信じなくていい。けど、今から言うことは信じてほしい」




銀時は呆然としながら俺の話を聞き流そうとした。



「今ならまだ、間に合うんだ」




助かる。





「俺は、その場所を知っている」





それは、俺が今の幕府の関者のように思われ、睨まれても仕方ないような言葉だった。


でも、銀時はそんなことをしなかった。



ただじっと、俺の口から次の言葉が出るのを待った。




もし、これで吉田松陽を取り戻したとして、歴史はかわるのだろうか。



ガキ共はどうなる?





一瞬、そんなことを考えた。





でも、それは本当に一瞬。





銀時が嬉しそうな顔を見てみたかった。


腹の中なんて考えずに済む。









それは、本当は誰のためだったのだろうか。














俺は、その判断を後悔することになる。












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