しばらくして到着した場所に、驚いた。


「こいつは…」


そこには 沢山の人間や天人がいた。

先が見えないほどの人数。


戦争のようだった。


「なんだ…これ…まるで攘夷戦争みたいじゃねーか」


話にしか聞いたことがなかった戦争だが、これを見て浮かぶ例えがそれしか見つからなかった。そんなことがあるはずがない。あれは何年か前に終わったんだ。


「攘夷の連中を殺せるんだろ?」


天人が言った。


規模がデカすぎる。

俺は過去にでも来たんだとでもいうのか?



天人が、俺の背中を押した。




「殺せ」



その中に入ると、まるで地獄だった。



圧倒的な力で天人が人間を殺し、人間が天人を殺してるすきに天人がその人間を殺す。




はっと、殺気を感じて刀を抜いた。




ギリギリで相手の刀を防ぐ。




そいつは、




昨日 俺が殺した男に似ていた。





「お前…人間か…?」



特徴がある声も、覚えてる声だった。

間違いない。こいつは、昨日殺した男だ。

麻薬の密売をした上、麻薬でボロボロになった人間を ボコボコにして殺すのが好きな変態野郎。はっきり覚えてる。





もし、過去に来てしまっていたら。




どうするーーーー。






こいつを今、殺せば…。







気が緩む相手の刀を飛ばし、生かすか殺すか考える。

こいつを殺せば、死なずにすんだやつが何人いるだろうかという考えにのまれる。



すると突然 目の前が真っ暗になって、気がつけば片方の肩に痛みが走った。





「っ!」



踏まれてる。



先程握っていた刀もない。



なんだ?


「しっかりしろよ!あぶねーだろ!人間みたいな天人なんざいっぱいいんだろ!」


「はっ!はい、すみません!」


男はその場から逃げ、肩を踏むやつは、俺を踏み付けたまま天人を斬り殺しているのがわかる。

顔に血が絶え間無くかかる。


やっと止まったと思ったら、首筋にチクリと痛みを感じた。




「お前…人間か?」



顔にかかった血で目が開けられない。必死に目を開けようと試みても、わずかに開いた目からは逆光が眩しくてそいつの顔が見えなかった。


もし、ここが過去で 攘夷戦争であったなら、これ程まで強いやつが死んだはずがない。

俺が知ってるやつで、人にこんな酷い扱いをできるのは 一人しか浮かばなかった。





「お前、高杉…か?」


「自分が質問する前に俺の質問に答えろ」


「見てわかんだろ…人間だ」


「は?じゃあさっきの何?敵と見方わかんなくなったのか?」


「あいつは将来人を殺す」


「…………殺されるのと、救護班のとこに行かされるのどっちがいい?」


「うるせ」


「ちょっと死んだふりでもしてろ!動いたら殺す」


「なっ!待て!高杉!」



辺りがだんだんと静かになっていく。俺の周りには天人の死体が囲んでいて 皆が避けて戦う。


しばらくして、多分人間側が撤退の笛を鳴らした。



直後に 足音がする。



「あそこだよ。お前の仲間 ついに新種の頭おかしいやつがでてきたぜ?」


「生憎俺の仲間はみんな正常だ」



まだはっきり目が開かない。



情けない。



「おーい、生きてるか?」


「おい、俺ぁこんなやつ知らねーよ」


「でもお前の名前呼んでたぜ?」


「知らねぇもんは知らねぇ。他の隊でも見たことねーよ。天人じゃねぇのか?斬ろうぜ」


「……いや、人間だよ。頭のネジが飛んでんだよきっと。まともになりゃぁ腕も立ちそうだ。連れて帰ろうぜ」


「お前は相変わらず甘いな」



腕が引かれ、踏まれた片方の肩が痛んだ。



待て待て。



「高杉じゃなかったのか…?」


高杉じゃないなら…誰だ?



「おぃおぃ、ちゃんと動けるか?」



身体を起こして、目を慣らすと 頭が強く痛んだ。






肩を支える男の顔を見る。




一瞬、誰かわからなかった。



赤いと思った。



目も髪も着物も赤黒く染まり、人間でないのかとも思った。



しかし、髪を染めている血だと思われるものがかかってない所がわずかにあった。



「ぎ…とき…?」


「あ?」



その色は、銀色。


本当にそれ以外の一致する特徴は、天パだということだけだといえる程俺の知るあいつと違う。


違う。







俺は無意識のうちに、


肩を支える銀時を突き飛ばしていた。





「おぃおぃ どういうつもりだ!?」


「よせよ高杉」



その感情が、恐怖であるはずがないと頭の中で何度もつぶやいた。


「銀、時?」


確かめるように呼ぶと、銀時は俺を睨みつけた。



「なんで…ここにいんだ?…お前が…これ…全部殺したってのか…?俺の肩踏み付けて、殺そうなんて…お前本気で…」


「……やっぱ救護班連れていこうぜ…重症だ」


「銀時、お前の知り合いか?」


「知らねぇよ」


「お前の名前知ってるぜ?仲間じゃねぇのか?」


「仲間なら突き飛ばしたりなんかしねぇ。もう慣れてるだろ」


「違いねぇ」




俺はこいつが、攘夷戦争に参加してるなんて知らなかった。


知らなかった。









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