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先生、俺は先生に話したいことが山ほどあったんだーーーーー。
攘夷戦争が終わり、松陽先生が自由にしてもらえる時が来た。
しかしその日、目の前にうつるものが何か理解した途端、思考が麻痺した。
俺の様子を見て、それに関係した者と思われる者の笑い声が聞こえる。
何年も焦がれていた松陽先生が、首だけになり、河原に投げ捨てられていた。
無造作に。
まるで、ゴミのように。
戦争にが終われば、解放してくれるのではないのか。
負けた?
刀を奪ったのは、お前らだ。
最後に会ったのはいつ?
最後に触れたのは?
首だけで、どんな仕打ちを受けて死んだのかわかる。
頬の骨が出て、顔が痣だらけで髪はザツに切られてる。
優しかった目は、片方は腫れ上がり、片方は潰されていた。
嘲笑う声が聞こえる。
「先生、俺たちは…負けたよ」
冷たく、重いそれ。
「先生、みんな…死んだよ…」
死体なんて、もう見馴れたのに………
「みんな、先生の帰りを願ってのによ……」
重い。
酷い。
「せんせ…」
ごめんなさい。
護れなくてごめんなさい。
護れなくて、護れなくて、ごめんなさい。
先生、みんな護れなかった。
先生が知ってるやつは、高杉と俺と桂だけになったよ。
高杉は片目を失ったよ。
悪い話ばかりだけど、でも後ろばっか見てないよ。もう戦争は終わったんだ。
ごめんなさい。
重い首を抱え、橋の上で笑う人間を見上げると、皆一斉に口を閉ざした。
先生、なぜ人を殺してはダメなんですか?
時々それがわからないんだ。
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