拾いもの。3 *
2011/03/29 12:42
夢を見た。
恐ろしい夢。
夜の森の中を、誰かと手を繋いで歩いている。
その相手が誰か横を見れば、万事屋のあいつだった。
いつもと違い、薄い着物をきちんと着ている。
なんで野郎と手なんか繋いでるんだろうか。よりにもよってこいつと。
万事屋は固まる俺を見て口元を緩めると、手を強く握りしめて笑った。
なぜか不快感がない。夢だからだろうか。
むしろ、心地好いという言葉が近いくらいに感じる。背も体格もあまり変わらないと思っていた男の手が細く柔らかく、向けられた赤い瞳が綺麗だった。
突然 万事屋が何かに気がついたように前を向き、大きく手を振った。
その先にいるのは、数人の男たち。
だが、ただの男たちではない。
夢の中で、俺は目を見開いた。
「ん?どうした…?怖い顔してる」
万事屋が顔を覗かせる。
あれは、
あいつらは…
「…俺が…斬り殺した…」
「は?」
間違いない。
「昨日…俺が斬ったやつらだ…」
そんな馬鹿な、と。生きてるはずがないのに、と。
すると、いつの間にか手が離れ、万事屋がこちらを睨みつけていた。
それは、まさに鬼のような瞳と言った方が正しいのだろうか――。
先程まで綺麗だしか思えなかった濃い赤色の瞳は、月明かりの下に紅く輝き、白い肌と銀色の髪が何かを引き立てる。
それは、恐怖か。
思わず後ろに下がる。
「―――――――」
その時万事屋がなんと言ったのかわからない。
わからないまま、夢が終わったのだ。
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