どうしようもない思い | ナノ






・死ネタ


どうしようもない想い




おほしさまがきらきらかがやいている
きらきらと


***


どこか遠くで声がする
(ここはどこだろうか…)
真っ暗闇の中に俺はいた
どこまでも闇
(ついさっきまで俺はどこに居たんだ…?)思い出せない
思い出したくない

思い出したら壊れる気がした
(…、何が壊れるんだろう?)
頭が回らない
ぼーっとする

「…ざ…」
雑音がする
(幻聴か?)

「いざ…」
俺の名前が呼ばれている
(イヤダイキタクナイ、メザメタクナイ…)耳を塞いだ
(聞きたくない、聞きたくない、聞きたくない…)
何を怯えてるんだろうか
まるで分からない
自分であって自分じゃない気がする

「臨也」

鮮明に声がした
嗚呼、生温い世界もこれでお仕舞い


***


「臨也!もう、急にどうしたんだい」
目の前にいたのは新羅だった
横にはドタチン
2人とも黒いスーツを着ていた
そして、俺も
「体調でも悪いのかい?そりゃ、臨也にとってはショックは大きいだろうけど…」

(ショック?新羅は何いってんだろう…)
新羅の言葉を咀嚼したが分からない
分かりたくもない
「新羅?何いって…」
「そりゃ、静雄が亡くなったから…」
新羅の言葉は既に聞こえなかった
分からない…


(分からない、分からない、分からない、わからない、ワカラナイ…)


「…て、臨也!?大丈夫!」

記憶がそこで途切れた


***


「シズちゃん」
「ノミ蟲、手前ぇ!」

定形、いつもと同じ
ただ一つ違ってたのは
「何を飲ませやがった!」
薬を飲ませたこと

「シズちゃんにはピッタリの薬。いや、シズちゃんが望んでたことかな?」
ナイフをくるくると回しながら言った

「普通の人になれる薬。良かったじゃん。シズちゃんは化物にはなりたくなかったんだろ?」

つまり不死身じゃ無くなる

「っ」
シズちゃんは何か言おうとした
刹那


-パン-


スローモーションのようだったゆっくり、ゆっくりと倒れるシズちゃん

シズちゃんと目が合う
そしてシズちゃんの後ろからシズちゃんを撃った男と目が合う
男は

「…っ!?」


笑っていた


笑いながら立ち去る男をよそにシズちゃんに寄り添う
「し…、シズちゃん?」
返事は無い
段々と地面に紅い染みを作り出す
「いざ…、」
「無理しなくていいから!喋らないで!」
命令とゆうより懇願だった


「手前が好きだ」


「え…」
凄く真剣な眼差しで俺を見るシズちゃん

「あー、こんな形で言うとは思わなかった。格好悪りぃ」
「シズちゃん、何いって…。それじゃまるで…」

信じられなかった。シズちゃんが俺の事を好きだなんて

「分かってるよ。でも言えて良かった」
「シズ…ちゃ…」

動かなくなってしまった
冷たくなってしまった


俺のせいで


走った。俺はこの場所から1歩でも遠くに行ける様走った
いや、逃げた。現実から目を反らし逃げ出した


***


「あ…、目覚めたかい?」
「う、ここは?」
頭がずきずきする

「臨也がお葬式中に急に倒れたからさ、僕の家に連れてきた」
(シズちゃんの…)
また、気を失いそうになるのを耐える
「さ、臨也」
新羅から少し小さめの瓶を渡された
「これは?」
「静雄のお骨さ」

瓶の中で白く輝く砂を見つめた
(これがシズちゃんな訳ない。シズちゃんはもっとでかくて、単細胞で、…優しい) 自分でも何を思ってるのか分からない

「それを空に撒けって」
「え?」

「静雄からの遺言だそうだよ」
新羅は言った
「でも…」
「いいから、してきなよ。ね」

新羅の言う通り外に出た
俺はタクシーを拾い海に行くよう伝えた


***


海には綺麗な星空が浮かんでいた
の空にお骨を撒いた
「…」

さぁっと風に拐われ消えていった
「…っ」

雨が降ってきた
「俺だっ…て、好きだった…」

シズちゃんが居なくなってから初めての雨
「なんで、返事する前に…」

当分は止まないだろう

「シズちゃん…」

雨はしとしと降り続く


俺はこの気持ちを抱えて生きていこう



END



企画サイト様「死にたがりの定理」様に提出したものです
ありがとうございました!


加筆:20110904.