trick or ? | ナノ





・来神
ハロウィン物


trick or ?


誰もいない放課後、静雄は1人廊下を歩いていた。何だか背中からぱたぱたと足音がするなと思えば、少し遅れて背中にどんと衝撃が来る。

「しーずちゃん!」

衝撃の主は所謂恋人というカテゴリーに入っている青年(名前は折原臨也)だった。臨也は静雄の少し大きめの背中に後ろから抱きついていた。それを静雄は自分の前に来るように持って行く。

「臨也、いくら人が居ないからって飛びかかって来るな」
「いいじゃないか、シズちゃんのけち」

静雄が臨也を軽くあしらうと臨也は如何にも拗ねたと言うように頬を膨らませそっぽを向く。はぁ、と如何にも面倒臭いと言った様子で静雄は溜め息をつき、どうしたと臨也に言った。

「トリックオアトリート!」
「………、とり?手前、もう一回言え」

臨也の口から出た英語が聞き取れなかったらしくもう一度言うようにと静雄は臨也に言う。

「だから、トリックオアトリート!お菓子をくれないと悪戯しちゃうぞ!」
「……、なんで俺が手前に菓子をやらないと悪戯されなきゃいけねぇんだよ」

英語が聞き取れなかったのではなく英語の意味が分からなかったらしい。その事で苛ついたのか臨也を睨み付けながら拳を固く握りる。臨也は静雄を宥めると彼は静かに拳を下ろした。小さく洒落にならないと言った臨也の言葉は幸い静雄の耳には届かなかった。

「第一、俺が菓子を持ち歩いてると思うか?」
「思う」

問いに即答した臨也はキラキラとした目で静雄を見詰める。

「残念だがな、持ってねぇよ」
「そう…、あんなに甘党のシズちゃんがお菓子を持ってないとは想定外だけど想定内さ。はいシズちゃん、これでも食べなよ」
少し悲しそうな顔をしたがすぐに何時もの顔に戻る。そして何時もと同じ饒舌さで調子を取り戻した臨也はポケットから何か小さな袋を取り出し、その中身を静雄の口の中へと押しやった。

「手前、口の中何入れやがった!」
「何って飴だよ、ほら。蜂蜜味。美味しいでしょ?それ俺のお気に入りなんだ。あげたんだから悪戯しないでよ?」
直ぐに吐き出そうとした静雄の唇に人差し指を触れさせ口の中へと入れたもを出せないようにしてから中のものの説明をする。その際に自分の好みもさりげに言葉に混ぜて。
からりと口の中の物を舌で転がすと臨也の言う通り、丸い物は甘くほのかに蜂蜜の香りがする。ころころと舌の上で遊ばせていると少し溶けて小さくなる。

「臨也」

「なに、ふ、んっ、…はっ」

急に体の動きを止めたかと思うと静雄は臨也を呼び、振り向いた瞬間臨也の口を塞ぐが直ぐに唇は離れて言った。

「…、どういうこと?」

「トリックオアトリート、だっけか?手前から貰ったやつだが手前が一番食いたそうだったからな、やるよ。俺は手前とのキスで充分だ」

臨也の口からはさっきまで静雄が舐めていた飴が移動していた。見る間に臨也の頬は赤くなり馬鹿と一言呟いてから俯いた。

「シズちゃんの馬鹿、これで貸し1だから何時か返してよ」


悪態をつきながら静雄に少しでも近付く様に背伸びをし、首に手を回してゆっくりと静雄の唇へと近寄っていった。





「trickor?」
お菓子をくれなくても悪戯しちゃうぞ



END



更新無くてすみません…
ハロウィン物です。なんだか甘い2人を書きたかった筈…


11月6日までフリーとします