真実の中で | ナノ




信実の中で




臨也さんが取り巻きとキスしていた
ただ、それだけのこと
それだけのことが俺に深くのし掛かる
ずっと考えていた
その間も臨也さんは俺に今までどおり接してくる
それが、辛かった
その辛さに堪えきれず俺は臨也さんに言った


***


「もう、メールも電話も会いに来るのも止めてください」

涙を堪えているせいか声が震えている
「何を言ってるんだい?」
何時もの笑みを浮かべた顔で俺を見ている
「…、迷惑なんです。好きでもない人に言い寄られて…。…、今まで雰囲気に流されてきましたが、…限界なんです!」
涙が落ちる
「そう」
そう一言言うとまた仕事に戻ってしまった
「っ」

言葉が出なかった
踵を返し俺は部屋を飛び出す
分かってた 分かってたつもりだった
本当は臨也さんより俺の方が好きになっていた事も、臨也さんがいないと何も出来なくなってしまった事も…

「…なんで、」

今だって臨也さんからのメールを待ってる俺がいる
「…っ」
止まった筈の涙がまた溢れでる
(臨也さん…)


〜♪〜♪


「!」
メールの着信音が響く
急いでメールボックスを開けば待ち望んでいた人からの一言

「帰ってきなよ」

俺は帰る、自分の居場所に



END


加筆:20110904.