キミとオレ | ナノ




キミとオレ




付き合って3ヶ月
普通のカップルなら手を繋ぐなんて当たり前の様にしているだろうし、キスだってしているだろう

でも俺達は手すら繋いでいない
普通のカップルではないにしても、この現実はあまりにも酷である


「うー、新羅ぁ…死ぬ…」
「こんな事で弱気になってどうするの?」

ここは新羅の家
今まさにカウンセリング中だ
確か専門では無かった筈だけど
「だってさ、3ヶ月だよ?普通さ、手繋ぐくらいいいじゃん。なのに『他の人にばれるから止めろ』だって。何格好つけてんだか」

「弱音の次はのろけかい?のろけなら他を当たってくれないか?僕だって暇じゃないんだから」

旧友が真面目に話しているのに新羅は素っ気ない
「…、いいよ、帰る」

「またおいで」
新羅の矛盾が気になるが俺は新羅宅を後にした


***


『シズちゃん、今日俺の家に来れる?』
今朝に送ったメールを再度見直す
今日も残り10分
とうとうシズちゃんはメールを返信しなかった

「…なんで連絡よこさないんだよ馬鹿」
ぽつりと1人呟く
カチカチと時計の針が動く音が俺の気持ちを急かす
ちらりと視線をテーブルに移動させた
そこには冷めた料理が並んでいた

カチカチ

後5分

カチカチカチ

-ガチャ-

不意に扉が開く
「臨也すまん、遅くなった」
玄関から待ちわびた人の声が聴こえた
「…、ねぇシズちゃん。今日何の日か知ってる?」
「何の日?海の日でもねぇし、みどりの日でもねぇし…」
真剣に考えるシズちゃん

「3ヶ月だよ」

「…?何がだ?」
「もういいよ、1人浮かれてた俺が馬鹿みたい」

「いざ「時間を割かせちゃってごめんね、もう帰っていいよ」

俺はシズちゃんの言葉を遮って言った

「じゃあね」

後ろ向きに手を振る
顔は見られたく無かった
瞬間、背中に温かさを感じる
シズちゃんに後ろから抱き締められていると気付くのに時間がかかった

「何?何のつもり」
「何の日か本当は知ってる。今日は俺達が付き合って3ヶ月だろ、だから」

シズちゃんは俺を向かい合わせになるようにした

「シズ…」

名前を呼ぼうとしたらなにかによって塞がれた
その正体がシズちゃんの唇と気付くのは少し間が空いてからだ

「その、キスしてなかっただろ?」
「シズちゃ」

「俺は手前を大切にしたかっただけだ。手前の事、嫌いになるかよ」

そう言って俺を抱き締めた
シズちゃんは俺の本当の気持ちに気付いていた
俺はキスなんかどうでも良かった
手を繋がなかったっていい
ただ、ただ「好き」の言葉を言って欲しかった
好きとは言ってなかったが嫌いではない事が知れただけで良かった



「じゃあ、遅れてくるなよ。もう昨日じゃん」

シズちゃんはくすりと笑った

「来ただけましと思え」

(やっぱりシズちゃんが好きだ)



END


シュチュエーションがいまいち活かせてないような気がします
晃ちゃん参加ありがとうございました


加筆:20110904.