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その2


 まあ、そんなこんなとあって今に至るわけだが、このような状況下で、こんな話が広まらずに済むと思うほうがどうかしているだろう。
 なのだが、その辺りにまったく気が回らないのが舞たる所以なのかもしれなかった。
 だから今、加藤に半ば引きずられるようにして連れられているのも、そのせいだと言えなくもない。
 昼食を終えたふたりは、その足でそのまま小隊司令室へと足を運び、誰もいないのを確認するとそっと入り込み、手近な席についた。
「さ、ここなら誰にも邪魔されずに済みそうやな」
「……で、話というのはなんだ?」
 かすかに身構えながら舞が訊ねる。うっかり相手のペースに巻き込まれたりしたら何をふっかけられるか分かったものではなかった。
「あんなぁ、舞ちゃんに見て欲しいモノがあるんや。ちょお待っとってや」
 加藤は自分の机の下からごそごそとなにやら取り出すと、軽く埃を払ってから外側のビニールを取り払い、中から現れた手提げバッグを差し出した。
 反射的にそれを受け取った舞は袋を開け――怪訝な顔を浮かべる。
「……なんだ? これは」
 袋からは、これまたビニールやパックで封をされたものがいくつか転がり出てきたが、透明だったので中は見る事ができた。小ぶりのタオル、歯ブラシ、石鹸、それに――下着。
「か、加藤っ!? なんだこれは!」
 おぼろげながらこれが何物か理解できたのか、舞の顔が再び赤くなってきた。加藤はけろりとした口調で、
「ん? 決まってるやん、お泊まりセットや」
 と言い放った。
「お、お泊まり……!!」
「しいっ! 舞ちゃん、声でかいで!」
 慌てて口をつぐみ、周囲を見まわす。誰にも聞かれていないことを確認すると、今度は小声で抗議した。
「な、なぜそのような物を私が買わねばならんのだ! わ、私は、私は別に……」
「なーに言ってるんや、速水君かて男の子なんやで? ええムードでいるうちにすっかり遅くなって『泊まっていきなよ』とか言って。で、さらに盛り上がって迫ってくる事がないともいえんやんか!」
 ……まあちょっと、ドリームはじけているような気もしなくもない。
 ついでに本人に経験があるかどうかもさだかではない。
 だが、やたらと妙な迫力にあふれた加藤の力説は、少なくとも舞にとっては、芝村的演説に勝るとも劣らぬパワーを有していたようである。
「せ、せせ、せせせせせ……。そ、そそそんな……」
 一体何回目の言語中枢マヒであろうか、まともに言葉が出てこない。しまいには過呼吸にでも陥ったか、口をパクパクさせ始めた。
「な? ないとは言えないやろ? そんな時身奇麗に準備しておかんかったらアンタ、女として恥やで!」
「……そ、そういうものなのか?」
 根が素直、というよりこういう方面に関してはまったく疎い舞は素直に問うた。すでに相手の術中に落ちまくっていることにも気づいていない。
「そや! まあ、常に努力を怠らんのが芝村やろ? なら、こういうんも準備しとってもええんと違う?」
 ……一体何の備えなのやら。
「し、しかし、私など……そんな何か起きるような魅力など、ない……」
「なーに言っとるんや! 舞ちゃん充分可愛いで! もっと自信持ちぃや!」
 バーン、とかなり派手に背中を叩かれる。その痛みに、舞は思わず顔をしかめた。
 結局あれやこれやと言いくるめられ、フラフラと小隊司令室を出た時には、先ほどの手提げバッグと中身一式を手にしていたのであった。
「毎度ありー」
 ――な、何故私はこんなものを持っているのだ? わ、私は、私は……。
 漂うような足取りで歩く舞の傍らを、少し湿った風が吹きぬけていった。

  ***

「舞、ちょっといい?」
 間もなく仕事時間も終わろうという頃、神経接続系の最終チェックを行いながら、速水が声をかけてきた。普段の薫陶よろしく視線はパネルに向けたままだ。
「なんだ? 仕事中だぞ」
 舞も同じく視線をパネルに据えたまま答える。
「今日なんだけどさ、仕事終わったら家に来ない? 良かったらご飯でも一緒に食べようよ。今日は整備もうまくいったみたいだし、そんなに遅くならなそうだしさ」
「そ、そなたの家へか? 今日?」
「そうだけど……。何か都合でも悪いの?」
「い、いや、そういうわけではないのだが……」
 頬を染め、言葉を濁しつつ黙り込む。手はとっくに止まっていた。
 ――まだ緊張が抜けないのかなあ。これが初めてって訳でもないのにね?
 速水はそんな舞の姿をそっと見て微笑んでいたが、舞はと言えば、先ほど加藤に言われた言葉が頭の中でぐるぐると回っており、それがどうしても抜けなかった。
 ――お、落ちつけ、落ちつくのだ。なにも厚志は泊まりに来いと言っているのではない。しょ、食事なら過去に例がないわけではない。そう、そうだ。考えすぎに決まっている。
「そ、そうだな。そなたの料理はうまいからな。それも良かろう」
「あはっ、じゃあ決まりだね。早いところ全部終わらせちゃおう……あれ?」
「どどど、どうした?」
 すっかりどもりながら、それでも平静を保とうとした舞が訊ねると、
「おっかしいなあ……。さっきまでこんなエラー出てなかったのに。舞、そっちで何か設定変えた?」と不思議そうな返事が返ってきた。
 ふと手元を見ると、どうやら先ほど考え込んでいる間に手が勝手に動いていたらしく、シナプスの一部が滅茶苦茶になっていた。
「あっ……。す、すまぬ。ちょっと新しいパターンを試してみたのだが、だめなようだな。すす、すぐに戻すとしよう」
「……? う、うん。わかった」
 なんとなく怪訝な声に返事をする間もあらばこそ、舞は慌てて神経回路の修復に入るが、思うように手が動かない。
「あ、またエラー……」

 結局、すべての回路が復旧したのは一時間後の事だった。

   ***

 どうにか後片付けが済むと、ふたりはハンガーを急ぎ後にし、近所のスーパーへと向かう。すでにあたりは日も落ち、とっぷりと暗くなっていた。
「厚志、今から作るとなると手間ではないのか? その、味のれんで済ませるとかだな、色々と方法が……」
「ん? 大丈夫だよ。あまり時間がかからないメニューにするし。それに舞はお昼も味のれんだったんでしょ? いくら美味しくても栄養が偏っちゃうよ」
「む、まあ、それはそうだが……」
「それに、せっかく舞と一緒にいられるんだから、ゆっくり過ごしたいしね」
 舞は、その言葉に鼓動がとくん、と速まったが、軽く頭を振ると、黙ったまま後をついていった。
 ――考えすぎだ。私の、考えすぎなのだ。
 半ば無理矢理にそう思い込もうとすればするほど、胸の奥に生まれたもやもやが大きくなっていく気がする。
 月が断雲に見え隠れする空の下、ビニール袋を提げたふたりは足早に速水の家へと向かった。

 手早く玄関の鍵が開けられた。
「どうぞ、上がって」
「ううううむ、で、では、邪魔するぞ」
 手と足を一緒に出しそうな様子で、舞がギクシャクとドアをくぐる。いつもの舞らしいといえば言えなくもないが、少し大げさな気がしないでもない。、
「すぐ準備しちゃうから、それまで猫たちの相手をしてやっててよ。みんな喜ぶよ」
 速水はビニール袋を受け取ると、急ぎ台所に向かった。舞にはああ言ったものの、あまりに手を抜く気もなかった。
 ひとり取り残される格好になった舞は、とりあえず靴を脱ぐと、いつにもまして落ち着きなくあたりを見まわしながら、おそるおそるといった感じで足を踏み入れた。
 ソファにどさりと腰掛けると、肺の底から絞り出すような大きなため息をつく。
「まったく、一体私は何をやっているのだ。考えすぎにもほどがあるぞ……」
 そうは思うのだが、動悸はなかなか収まろうとしない。
 ともかく気を落ちつけようと、ソファに頭をもたせかけながら目をつぶってみたが、すぐにその平穏は破られることになる。
「にゃー」
「!?」
 慌てて足元を見ると、そこには速水の飼い猫である「舞」が尻尾をピンと立てながら悠然とやってくるところだった。そしてその背後には生き物というよりは毛玉といったほうがいいような子猫たちが後に続く。
「う、うわ……」
 舞は猫が大好きである。それには間違いないのだが、いざ実際に触ろうとすると、手は震え足は硬直し、呼吸が荒くなって目がくらむといったように、普段の動きがからきしできなくなってしまうのだ。
 それでもここで子猫たちの洗礼を受けてからはだいぶ改善したはずだったのだが、今日は本調子ではない。舞は、また手先が震え出すのを感じていた。
「う……」
 このままではまずいと身を起こそうとするが、今日は機嫌がいいのか「舞」がいきなり膝の上に飛び乗ってきた。それを見た子猫たちも我先にとソファに駆け上がり、舞にじゃれ付き始める。
「あ、こ、こらっ、や、やめんかっ、うわっ!」
「舞」はすりついてくるは、子猫たちはてんでに手といわず胸といわずにじゃれ付いてくる。普段なら至福の一時であったろうが、今日は調子をますます狂わせる役にしか立たなかった。逃げようにも身体が硬直したかのように動かない。
 ――だだだ、だめだ。このままでは私の心臓がもたん……。
「おまたせ、ご飯出来たよ……舞っ!?」
 そんなわけで、ちょうど台所から顔を出した速水は、跳びまわる毛玉と半死半生といった態の舞を発見する事に相成るわけであった。

   ***

「ごめんね。なんだか猫たちがはしゃいじゃって。大丈夫?」
「し、心配するな、もう大丈夫だ」
 制服の乱れを直しながら、全然大丈夫でない様子で舞が答える。上着は毛だらけになってしまったので脱いで、速水が丁寧にブラシをかけていた。
「これ、もしかしたらクリーニングに出さないと汚れが落ちないかなあ……」
「い、いや、気にするな。このくらいなら別にたいしたことはなかろうっ。大丈夫だっ」
「? そう? それならいいんだけど……。じゃ、ご飯にしようか?」
 ちょっとした騒ぎはあったものの、ふたりは無事にテーブルにつくことを得た。
 ご飯に味噌汁、鶏肉とセロリの炒め物、青菜のおひたし。確かにひどく手間のかかったものはないが、わずかの間にどうやったらこれだけの物が作れるのか、毎度の事ながら、舞にとっては手品を見せられているような気分だった。
「じゃ、いただきます」
「う、うむ」
 食事が始まった。舞は炒め物をつまむと、口に放り込んだ。塩胡椒ベースのあっさりとした味付けだが、妙に合っている。
「うまい」
 思わず声に出る。それを聞いて速水が微笑みを浮かべる。
「そう? よかった。遠慮なく食べてね」
 あまりに嬉しそうな声に、思わずそちらの方を見やる。速水は満面の笑みを浮かべて舞を見つめている。その表情に純粋な喜び以外を見出す事は出来なかった。
 それを見て、舞も少し緊張が解ける思いだった。ようやく微笑らしきものも顔に浮かぶようになった。
 ――見るがよい、やはり考えすぎだったではないか、大丈夫、大丈夫だ……。
 最後は妙に気弱に唱えつつも、そのあとの食事は終始なごやかに過ぎていった。

   ***

「片付けは僕がやるから、舞はそっちで休んでてよ。大丈夫。もう子猫たちは寝てるしね」
 それに苦笑を浮かべながら、舞は再びソファーに身を沈めた。柔らかく受けとめられた身が隅々までリラックスしているのが自分でも分かる。目をつぶるとまるで波間にでも漂っているようだ。
 ――波の音まで聞こえてきそうだな。
 そんな事を考えていると、本当に何かが聞こえてきた。
「……?」
 再び目を開け、やや耳をすませたが、一度弛緩した神経がそれを伝え、脳がそれを理解するのには、わずかに時間が必要だった。
 ――波? いや違う。厚志が洗い物をしている音か? いや、これは……。
「外?」
 理解した瞬間、舞ははじかれたようにソファーから跳びあがり、窓に駆け寄ると大きくカーテンを開ける。
 外はすでに闇に包まれていたが、街灯のおかげで近くははっきりと見る事ができた。いつの間に降り出したのか、光の輪の中で大粒の雨が地面を叩いていた。
「あれ、雨? ……うわ、すごいね」
 手を拭きながら、速水が窓を覗き込んだ。気配を感じて舞の身体がかすかに硬直する。
 速水はそれに気がつかず、しばしの間外を見ながら腕を組んでなにやら考え事をしていたが、やがて何かを思いついた表情と共に傍らを振り向いた。
「ねえ舞、今日は泊まっていった方がよくない?」
「な、なぬをっ!? いや、何を言うかっ!」
 思わず跳びあがりそうになるのを辛うじて堪えたが、胸中には再び加藤の言葉がよみがえってきていた。心臓がタップダンスかフレンチカンカンでも踊りだしそうだ。
「え? でも、こんな雨の中帰って、濡れて風邪でも引いたら大変だし……。それに明日は日曜だから学校の準備もいらないでしょ?」
「う、あ、その、し、しかしだな。傘でも借りれば……」
「無理しちゃめーだよ。舞ったら前にもそう言って風邪引いたことあったでしょ? 今日は帰さないからね」
 その台詞を聞いたとたん、舞の胸は激しく高鳴った。
「な、な、ななななな……」
「いいね、舞?」
 吸い込まれるような青い色の瞳に見つめられると、舞はまるで魔法にでもかかったかのように動けなくなってしまった。
「あ、う、うむ……」
「じゃ、決まりだね。……あ、僕、もうちょっと片付けものがあるから」
 そう言うと、速水はさっさと台所へと戻っていってしまった。後に残された舞は、力尽きたかのようにへなへなとへたり込む。
「ま、まさか、帰さないとは……ほ、本当、なのか?」
 無意識のうちに手にとっていた手提げバッグを、ぎゅっと抱きしめた。

 一方の速水だが、舞の前では笑顔を崩さなかったものの、姿が見えなくなると、その表情は途端に厳しいものとなった。
 再び洗い物を続けながら、低い声で呟く。
「おい、速水厚志よ。お前、まさか何かを期待してるんじゃないだろうな?」
 先ほど舞に対したものとは似ても似つかない、暗く、重い声だった。
「……忘れるなよ。己が何者なのか、己にその資格があるのかを、な」
 わずかに咎める響きを帯びた声は、聞く者とてなく中空に消えた。

  ***

「ごめんね、奥のほうに行っちゃったみたいでさ……」
 速水はごそごそと衣装ケースを引っ掻き回すと、ようやくのことで目的の物を取り出した。
「はい、じゃあこれを使ってね。ちょっとでかいかな?」
「あ、いや、うむ」
 なにやらこにょこにょと言いながら、舞は手渡されたパジャマを受け取る。洗濯をしたお日様の匂いがほのかに漂い、なぜか胸が切なくなった。
 速水はタオルだのなんだのをあれこれと用意していたが、そこではた、となにやら考え込んだ。
「?」
「あー、でもどうしようかなあ」
「な、何をだ?」
「ん? いや、下着をね」
「し、したっ……!?」
 舞はあまりに驚いたせいか、思わず舌を噛んでしまった。目の端ににじんだ涙を素早くふき取るが、速水はそれに気がつかなかったようだ。
「さすがに下着はないからねえ……」
 あったら、怪しすぎます。
「どうしよう、いっそのこと今から舞の家まで行ってこようかなぁ?」
 それを聞きつけた舞は、本当に飛び上がりかけた。
「ま、待てっ! だ、だめだ、それは許さん!」
「え? でも……」
「大体、この雨で風邪を引くかもしれんと言ったのはそなたではないか。それをそなたがのこのこと出て行って、一体どうしようというのだ!」
 確かに外の雨は、ひどくなりこそすれ収まる気配は一向になかったから、舞の言うことにも一理ある。
「むー、まあ、そりゃそうなんだけど……」
 速水は普段はぽややんに見えても、一旦こうと思ったら梃子でも動かぬ頑固な一面も持ち合わせている。それを知るだけに、舞はなにがなんでもここで諦めさせる必要があった。
 ただし、理由はひとつではない。速水の体調が心配というのは本当のことだが、もうひとつ、とても口にできない理由もある。
 ――ば、莫迦者! そなたに今部屋など見せられるわけなどなかろう! ましてやし、ししし下着など……。
 何をやらかしてるかは、ご想像にお任せします。
 速水はまだ未練がましい表情を浮かべていたが、さすがに正論には勝てなかったようだ。とすると、彼にも何か別の理由があったものと見える。
「ん、分かったよ。舞」
「そうだ、それでよい。そなたも少しは考えよ」
「舞、ひょっとして心配してくれてるの?」
「なっ! あ、う、その……」
「あはっ、嬉しいなあ。ありがとう、舞」
 素直な感謝の声に、舞は思わず言葉を詰まらせた。ただまあ、なんとか彼女の部屋行きは阻止したのだから、まずますの戦果といっていいだろう。
 もっとも「少しは考え」たほうがいいのは、舞のほうだったかもしれないが。
「それは嬉しいんだけど、さ……。けど困ったなあ、どうしようかな?」
「う……」
 結局、それで問題は何も解決していないわけで。話題は堂々巡りとなってしまった。
 舞の背中に、冷たい汗が流れる。彼女は解決策がひとつある事を知っていた。が、それを行使した場合、いかなる結果となるのか、舞にはまったく見当もつかない。できることなら出したくない解決策であった。
 だが、本気で困った表情で、ぼりぼりと頭を掻きながら考え込む速水を見てしまってはもういけない。
 ――や、やむをえん、か……。
 舞はある決意を固めると、手近に転がっていた手提げバッグを取り上げた。中をまさぐり、目的の物に手が触れると、思い切ってそれを引っ張り出した。
「厚志。じ、実はだな……」
「え?」
「下着はここに……ある」
 舞は顔を真っ赤にしながら、おずおずとビニール袋に入った下着を差し出した。同時に羞恥心が嵐のごとく胸中を吹き荒れていく。
 ――な、何を言っているのだ私は。これではまるで予め泊まるつもりでいたみたいではないか!
 だが、もしこう言わなければ速水は本気で飛び出しかねない。ますます強くなる雨の中、そんな事をさせる訳にはいかなかった。
 だが、舞にとっては苦渋の決断でも、帰るといいながらこのような物を持っていたりして、一体なんと思われるかと、舞は不安そうな面持ちで速水を見た。
 案の定、速水は瞬間ぽかんとしていた。
 舞はこのまま自分が爆発してしまえばいいと思ったが、次の瞬間速水がとった行動は意外なものだった。
 なんと、ニッコリと微笑んだのだ。
「ああ、なあんだ。ちょうど買い物でもしてたの?」
「えっ? ……う、うむ」
 まあ、間違いではない。
「それならいいんだ。いやーよかったよかった。……あっ! いけない、お風呂沸かしっぱなしだった!」
 あまりのあっけない決着に、舞はほっとすると同時にどことなく拍子抜けしてしまった。
 ――た、たまたまと誤解したか? まあ、要らぬ誤解を与えなかったのならよしとするか……。
「舞ー。お風呂沸いたよ。先に入って」
 風呂場から呼ぶ声に、慌てて返事を帰す舞だった。


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