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ラストダンス・オン・ステージ(その2)


 戦いは、呆れるほど単純な出だしだった。
 最初、グラウンドの両端に占位した竜と士翼号だったが、士翼号は無造作ともいえる動きで踏み出すと、ジャイアントアサルトの一撃を竜に叩き込んだ。硬化テクタイト弾芯の高速徹甲弾が竜に襲いかかる。竜は避ける気配も見せないが、目に見えるほどのダメージも与えたように見えなかった。
だが、それは速水も予測済みだったと見え、ジャイアントアサルトの斉射と同時に素早く疾走を開始、竜の懐に飛び込むと超硬度大太刀を突き出した。
『ぬうっ!?』
 この一撃は意外なほどの俊敏な動きでギリギリかわされてしまったが、そこから鋭く刃を返し、第二撃を繰り出した。
 鋭い音があたりに響く。
「!!」
 竜は、先ほどの筒――銃身と呼んだほうが良かろうか――で超硬度大太刀を受け止めると、そのまま力任せに押し始めるではないか。たちまち士翼号の各部が悲鳴を上げ始める。
『く……、オーバーパワー、関節部過負荷!』
「ふんっ!」
 速水は一瞬力を抜くことであえてバランスを崩し、力が緩んだその隙に竜の腕を弾き飛ばす。後退してバランスはとったものの、不利は否めなかった。
『どうした……』
 突如、竜の口から重々しい声が流れ出す。その声に誰もが驚いた。ひどく変わっているが、それは聞き覚えのある声だったからだ。
『どうした、絢爛舞踏! 所詮貴様の力はその程度か!』
 同時に竜の胸元がわずかに開き、狩谷の頭が顔を出す。
「え、ま、まさか……なっちゃん!」
 ドライバーズシートで加藤は驚きの声を上げた。
「狩谷だってぇ!? あの野郎、裏切りやがったか!」
 本田は一声叫ぶと、マシンガンを取り出した。それが有効かどうかなど考えず、照準を狩谷の頭に定める。
 それに気づいた加藤の顔から血の気が引いた。
『せ、先生! やめて、撃たないでっ!』
「莫迦野郎! 加藤、生徒が裏切ったとあれば、俺がトドメさしてやらねぇでどうするんだ!」
「やめて! なっちゃんを殺さないで! お願いっ!」
『黙れぇ!』
 狩谷はその声をわずらわしく思い、筒先を指揮車に向け、一撃を放った。光は指揮車の左側面をかすり、後方の女子高校舎に命中。コンクリート作りのそれを大きく抉り取る。
 まるでハンマーで殴られたようなショックと、絶え間なく降り注いでくる破片が装甲にはじかれる音で、車内はヘッドセットをしていても全く聞こえない。
「きゃあっ!」
 ののみが悲鳴をあげる。加藤はハンドルに、瀬戸口はののみを支えつつコンソールにしがみつくことでかろうじて吹き飛ばされるのを免れた。さすがに装輪式とはいえ、戦車が母体の指揮車はかろうじてその一撃に耐えた。
 だが、軽くなでられただけであったにもかかわらず、左側のタイヤは全て溶解し、車軸も大きく歪んでいた。装甲はまだ無事だったが、それでも直撃を受けた時に無事かどうかといわれれば、首を振らざるを得ない。
「なっちゃん! お願い、もうやめてっ!」
 普段の似非関西弁の膜が剥がれた。加藤は心からの叫びをほとばしらせる。
『黙れといったはずだ!」
 ――お前も、そうやって僕を責めるのか!
 銃の先端が再び赤い光を帯び――ほとばしる。
「ひっ!」
『危ないッ!! ……舞、ごめん!』
 その時、蒼い影が赤光の前に立ちはだかったかと思うと、光はまともに影の中央に吸い込まれていた。攻撃を悟った速水が士翼号を射線上に割り込ませたのだ。
光は容赦なく士翼号を打ち据える。数箇所の装甲がたちまちに弾けとび、士翼号はもんどりうって地面に倒れこんだ。
「速水君ッ!!」
『う、ぐっ……。加藤さん、みんな、大丈夫……?』
 速水の落ち着いた、しかしどこか苦しげな声がスピーカから流れ出す。
「速水君、なんで……」
『なんで、って戦友じゃない。大丈夫、みんなも、それに狩谷君も……きっと守る。助け出してみせる』
「速水君お願い、なっちゃんを、なっちゃんを元に……!」
涙に頬を濡らしながら、加藤が咽も枯れよと絶叫した。
『貴様などに何が出来る!』
 狩谷は絶叫とともに第二撃を放った。十分なエネルギーが蓄積されていないのか、それは先ほどよりだいぶ威力は小さかった。それでも、細い線条は、士翼号の各部を打ち据え、そのたびに傷は深くなっていく。
 速水はどうにか体勢を立て直そうとするが、コックピットのワーニングランプは半分以上赤くなっていた。
「無茶やっちゃったな。舞、ごめん……」
『気にするな、そなたのやったことは正しいぞ。そして、私はまだ動ける』
「じゃあ、行こうか」
 嫌なきしみ音を立てながら士翼号は地を蹴り、超硬度大太刀を大きく振りかぶると鋭い斬撃を打ち込んだ。竜のそこかしこからどろりとした体液が流れ出す。
『小賢しいっ!』
 だが、動きは先ほどよりだいぶ落ちていたのは否めず、再び赤い光が士翼号を捕らえ、地面に叩きつけた。
「ぐうっ!!」
『あ、厚志!? 厚志っ!!』
 ぐったりとなった速水の顔を、赤い筋が一筋伝い落ちた。
『厚志ぃっ!!』

「きゃっ!?」
「ののみ、どうした!?」
 瀬戸口の問いかけに構わず、ののみは辺りをきょろきょろと見回した。
「な、なにかきこえたのよ……。あ、また!」
『皆、聞こえるか!』
 今度は、士翼号からはっきりと聞こえた。
 戦闘のさなかでありながら、そこだけ奇妙な沈黙が訪れた。
「まいちゃん、まいちゃんなの!?」
「し、芝村だって!?」
 周囲に動揺が走る。
『そうだ、私だ。……私は戦友として皆に要請する! 私に力を、今一度立ち上がるために力を貸してくれ! 私は、こんな私でも守ると好きだといってくれた厚志に応えたい!』
「し、しかし……」
『頼む! 私に……厚志に、力を! 皆、頼む!』
 瀬戸口は、その声を指揮車の中で聞いていた。
「あいつ、自分から言っちまいやがった……おい、ののみ!?」
 瀬戸口の制止にも構わず、ののみは指揮車のハッチから体を乗り出すと、空に向かって大きく手をさし伸ばした。
「むかしといまでないどこかがわかったのよ。それはみらいなの。いままでがんばろうっていってきたのは、みらいをよぶためなのよ。いまが、そのときなのよ!」
 ののみは、大きくうなずいて声をあげた。
「あっちゃん、もういちどたつのよ! なっちゃんをたすけるんでしょう? ばんぶつのせーれーがどうとか、うんめーがどうだか、そんなことはわかんない! でも、あっちゃんは、たちあがるのよ。ののみがそうきめたの。それが、せかいのせんたくなのよ。あっちゃん、たちなさい!」
 ――これが、未来を決める時、か。
 朦朧とした速水の耳に、ののみの声がはっきりと聞こえた。脳裏を、かつての彼女の言葉がよぎっていく。
「えへへっ。おとーさんがね、ののちゃんが、むかしでもいまでもないときが、どこかわかったら、せかいはえらばれるって…。いつか、このことばのいみもわかるかな? わかるといいなぁ」
 そのときはただのお話だと思っていたが……。
「たちなさい!」
 ――そういうことも、あるだろうさ。
『厚志!』
「ああ、舞……。心配かけてごめん。まだ、戦える?」
『……そなたが望む限り、いくらでも、だ』
 腕が地につけられた。きしみつつも体を押し上げる。
「たちなさい!」
「じゃあ、もう少しやろうか」
『うむ……!』
何もかもが不確実なこの世界に、信じてもいいものはひとつやふたつはあるはずだ。ならば、これはそのうちのひとつだろう。速水はそう独り決めした。
 なぜか、妙に心が軽かった。

「お、おい。あいつらまだやる気だぜ……」
必死に立ち上がろうとする士翼号に、小隊のメンバーは誰もが言葉を失っていた。彼らが恐れ、あまつさえ化け物扱いしていた速水と、死んだはずの舞が、自分たちの――世界のために己の身を賭して戦っている。
 ――俺たちは、何をしている? 戦友が、そう、戦友があそこで苦しんでいるというのに。
「速水……芝村……。頑張れ! 頑張れよ親友!」
 意外な絶叫に何人かが振り向けば、滝川が声も枯れよと絶叫しているではないか。彼の両目からは涙が滝のように溢れ出している。
「私も……この古い血に残る最後の力を……未来に!」
「……俺も賭けよう。まだ勝負は終ってない」
 声は、次第に強く、大きくなっていく。見れば、退避していったはずの女子高からも声が聞こえるではないか。まるでそれに押されるように、士翼号は徐々に体をもたげていく。
「芝村……さん。速水君、そう、だったの……」
 初めて舞の存在に気がついた森は驚愕に全身を貫かれる思いだったが、同時にどこか納得もしていた。
 しばし俯いていた顔が再び上げられたとき、彼女の表情に迷いはなかった。
「一体何やってるんですか! さっさと立ちなさい!」
それぞれが皆、自分の言葉で叫び続けた。士翼号が鈍い音とともに少しずつ立ち上がる。
『な、なぜだ! 何故まだ立ち上がれる!』
『狩谷よ、そなたには分かるまい。人が人を想うということがどのようなものかを。それを分からせるまで倒れるわけにはいかぬ!』
『人など、情など下らぬことを言うな!』
「それがくだらないかどうかは、今見せてあげるよ」
『うるさいっ!』
 だが、竜の銃口からは光は吹き出さない。
 ようやく士翼号は立ち上がった。思わず周囲から歓声が上がる。だが、その足取りは痛々しいほどに弱い。
「……くそおっ! 俺たちにできることはねぇのかよ!? ここでこうして見ているしかないのか!?」
「……いや、あるぜ!」
 突然の鋭い声に、全員が振り返った。
「田代!?」
「おい、おめえら何人かついて来い!」
 突如駆け出した田代を、訳が分からぬながら数名が後をついていく。
「……なるほどね、あれか」
 若宮が、合点のいった声を上げると、彼もまた走り出した。

『見ていろ、今それが間違いだと証明して……!?』
 再び光を貯めだした銃を、竜――狩谷は士翼号に向けた。だが、発射寸前に竜の頭のあたりに火の玉が現出する。
『ぐわあっ!』
「へへっ! 命中!」
 田代はアサルトライフルを構えたままにんまりと呟いた。彼女の放ったグレネード弾が見事命中したのだ。他にも数名が、整備士たちが直前につかみ出した武器で、思い思いに攻撃を仕掛けている。
『みんな! みんなして僕を責めるのか、そこまでして僕が憎いかぁ!』
「やかましい! 悪いが、オメーみたいなことを言ってるやつはどうでもいいんだがよ、それでもオメーも俺たちの戦友だ。それに」
 田代の視線がちらりと指揮車に向いた。メンバーはどうやら脱出したらしい。
「待ってる奴もいるじゃねえか。それがわからねえから一発食らわしてやったんだ!」
『くそおっ!! くそおっ!!』
 狩谷の声が甲高くなったかと思うと、銃の筒先が小隊メンバーのほうを向き、そのまま発射された。
「うわああっ!」
 かろうじて散開したメンバーの傍らを赤い光が通り過ぎ、再び校舎を切り刻む。
「みんな!」
 速水の絶叫に、田代がにやりと笑いかけた。
「い、いちち……。テメエ、よそ見なんかしてんじゃねえ! オメーにゃやることがあるだろうが!」
「速水、今だ。今こそ時だ!」
 その時、突如として速水の右腕に光が走った。それは軌跡を描きつつ、ひじのあたりにまで広がっていく。
「こ、これは! ……そうか!」
『厚志? ……!!』
 突如、舞の中でも何かが起動し始めた。膨大なデータが開放され、舞は一瞬にして「それ」を理解した。
 光は同時に士翼号の右腕にも浮かび上がり、あたりにまばゆい光を投げかけた。竜は思わず一歩後退する。
 意を決して歩を進めれば、その光はある種の文様を腕に描き、その周囲を蒼い光の粒が舞い始める。
「どうやら、発動したな……」
 かろうじて立ち上がった来須が、ささやくように呟いた。
「おお……」
 戦場に到着したブータが感に堪えぬといった声を上げ、蒼くきらめく士翼号の右腕を見つめた。彼の後方にはたくさんの猫たちが待機していた。
「火の国の宝剣と並ぶわれら神族の最強最高の武器、人と神族と、共に押し流す運命をつむぐ品、精霊手を宿したか! 速水! 今やそなたと契約し、その配下となった六千万の万物の精霊、その炎が告げている。竜を許せと。この哀しみを終らせよと。それに加え、人の神族と、我ら猫の神族と、今また各地より小神族と、天地の神々が、あしきゆめと戦うそなたに力を貸すであろう。……受け取れ!」
ブータの叫びと同時に、猫たちから、そして天から、木々の間からも蒼い光が集まっていく。
『く、くうう……。ぐわぁっ!!』
 竜――狩谷は苦しそうにうめく。光に染められるのを嫌うかのように、竜は身もだえした。
 士翼号の右腕に、光が乱舞していた。数千、数万の光が腕を取り囲んで踊りまわり、そして一つの方向に収斂していく。狩谷の顔に驚愕が走った。
『この蒼い光が……万物の精霊か! この期におよんで、まだ万物の精霊を呼ぶか! そうしてまで僕が憎いか!』
「そなたを罰するにはあらず! これはひとのゆめだ。はかなく頼りないかもしれないが、たしかに存在する夢だ。あしきゆめあらわれしときに生まれる、もう一つの夢だ!」
『……くっ』
「去れ、あしきゆめよ! 夜がくれば朝が来るように、希望と言ううすあかりと共に、人の心に、よきゆめが戻ったのだ! 世界は再び選択した! 生きようと! 生きて再び明日を見ようと! 速水!!」
 ブータはいきなり三倍にも大きくなったかのように立ち上がると、士翼号に向かって叫んだ。
「速水、そして姫君よ!  人々の願いよ。この悲しみを終らせる時が来た! 生きる者と死んだ者たちの願いを拳に託し、万物の精霊その手に宿したゲンコツで……一発ギャフンと大逆転してこい!」
『そんな、そんなもので人のありようが変わるか!』
「食らってみてから考えろ! 速水!」
「分かった! 舞!」
『承知だ! これより精霊手シークエンス発動する!!』
 士翼号はやや腰を落とすと、右手を前に突き出した。左手が右ひじの辺りを握り締め、固定する。既に指のジョイントは動かなくなっていたが、舞はかまわなかった。
「ターゲットスコープ、モニターに展開。明度自動調整」
『アイゼン展開』
 同時に士翼号のかかとの部分から、鋭いアイゼンが飛び出して地面に突き刺さった。本来は重火器用のものだが、今はこのくらい必要だろう。
「精霊回路異常なし、精霊子収斂速度上昇……」
『ぐああっ、そ、その光を! その光を見せるなあッ!!』
 周囲には竜の苦し紛れの攻撃が着弾する。士翼号も更に装甲を削られていくが二人とも構わずに準備を進めていく。
『う、うおおああぁぁ……』
 ついに、まるで光に気圧されるかのように、竜が一歩後退する。速水は目に入りかけた血を軽くぬぐうと、最終シークエンスの発動を宣言した。
「最終シークエンス発動、目標……竜!」
『厚志、勝負は一回きりだ。外せば、次はない』
「分かってる……。姿勢制御よろしく」
『まかせるがよい!』
「万物の精霊よ!」
 突如速水は、腹の底からの大音声を上げた。
「万物の精霊よ、五人目の絢爛舞踏が挨拶申し上げる。僕は絢爛舞踏の名の下に、君たちに要請する! あの竜を赦し、全ての決着をつけ……。ここではないどこかへの扉を開くために……力を貸してくれ!」
 突如、右腕が燃え上がった。いや、そう錯覚させるかのように右腕を取り巻く光は強く、蒼く輝いていた。
「伝説よ、万物の精霊も神族も、全てはそなたを承認した。いけぇっ!」
「ありがとう! 精霊手フルパワー! 対ショック防御、スクリーン対閃光モードに」
 光度が落ちる中、照準緑の環と竜だけがくっきりと浮かび上がる。速水は狩谷の顔のある辺りを外し、竜の頭そのものに照準を定めた。
「舞、シアー開放タイミングチェック!」
『チェックよし!』
「狩谷君、これで終りにしよう……。発射ァッ!!」
 モニターに「GODHAND」のコマンドが流れ、次の瞬間、蒼い光が塊となって士翼号の腕から解き放たれた!
『ぐあああああっ!』
「きゃあっ!! なっちゃぁんっ!!」
 あまりの輝きに誰もが目をそむける中、光は狙い過たずに竜の頭に直撃し、蒼い光の粒が進路上にあるあらゆるものを吹き飛ばし――まるで障害などなかったかのように撃ち抜くと、はるかな空の高みへと消えていった。
『ぶ、ぶばああぁぁぁっ!! ぐああぁぁぁ……』
 これは、竜の声か、狩谷の声か――。
 しばしの間立ち尽くしていた竜は、精霊手によって受けた傷口から縦横に蒼い光が走り、たちまちに溶け崩れ始めた。
「……やったぁっ!!」
 滝川の叫びを皮切りに、歓声が爆発したが、ただ一人悲痛な叫びを上げる者があった。
「いやあっ! なっちゃん! なっちゃあんっ!!」
「加藤、待てッ! これを見ろ!」
「え……?」
 瀬戸口が指し示したスクリーンには、たった今まで竜のいたところに味方を示す蒼いシンボルを浮かび上がらせていた。

   ***

 最初に見えたのは、蒼空だった。狩谷は目を何度かしばたたかせると、そっと上体を起こす。先ほどまで心にあった嵐はきれいさっぱりと消えていた。
「……ぼ、僕は? 幻獣に食われたんじゃなかったのか。」
「なっちゃん!」
 突如首に抱きつかれ、狩谷は目を白黒させた。
「か、加藤……?」
「なっちゃんの莫迦っ! 心配したんだから!!」
 泣きじゃくる加藤の傍らでは、本田たちがおおわらわで手当ての準備を進めている。それをののみはにこにこしながら眺めていた。
「これで、これからはいいことしかおこらないの。ね?」
「ニャー!」
 ブータは、嬉しげに頷くと顔を洗った。

「やれやれ、どんな兵器より、小さな子の怒った声ですね」
「それが、正しい世界ってもんでしょう。それを知ったら、みんな馬鹿らしくて戦争をやめるんじゃないですかね。」
「まったくですね」
 善行は、小さく肩をすくめながら、かろうじて立っている士翼号に視線を向け、小さく呟いた。
「……やはりあなたたちがやってくれましたね」

 こうして、竜との戦いは、かろうじてではあったが速水たちが勝利を収めることができた。
 だが、これで士翼号の存在意義も同時になくなった。
 正確には速水と士翼号は、人類にとってそれはあまりにも強大な存在になってしまったのだ。彼がそう考えなくても、あえて誤解しようという奴らには事欠かないに違いない。
彼らは士翼号という目に見える力から排除しようとすることだろう。

 それは同時に、舞という存在の終焉も意味していた。


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