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代替戦力(その1)


「戦争ってのはひでェもんだ。俺たちなんざまるっきり部品扱いヨ。そのくせ武器(えもの)は無え、弾丸(たま)も無え、食いもんも無え。こないだなんざ、撤退に次ぐ撤退で補給も滅茶苦茶ンなっちまいやがって、食料でどうにか残っているのは腐りかけの肉だけってェありさまの時もあった……。
 人間ってェのは馬鹿なもんでな。あんまりにも腹が減っちまうと、そんな肉にでも手を出しちまうもんサ。また、そんなのに限ってうまかったりするんだよなァ……。
 最後までまともに立ってた奴は、そんなにいなかったがネ」
 ――ある第四世代兵士の回想

   ***

 人類が幻獣との絶滅戦争に突入してから、はや半世紀が過ぎようとしている。
 これまでの人類の戦況は、一進一退ならぬ一退一退のまま、果てしない撤退戦を演じ続けていた。
 とはいえ、人間も結構たくましいもので、実際に戦火にさらされようとしている地域においてすら、何もかもが打ち砕かれ、あるいは己の身が消し飛ばされるその瞬間まで、可能な限り「平穏な日常」を維持しようとする。それが崩れてしまえば、己を維持出来なくなってしまうことを本能的に理解しているのかも知れなかった。
 いや、あるいは既に麻痺しきっているだけかもしれない。平穏な日常とやらにはこんなものは流れまい。
「警報、警報、警報! 山鹿戦区において幻獣実体化反応あり。出現推定数約五〇〇、数派に別れて進撃するものと思われます!」
「進撃予想地区に退避を勧告しろ。続いて全軍に対して出動命令を」
 地区防衛司令の命令一下、あちこちに立てられているスピーカーが一斉に同じ文句を伝え始める。
『市民の皆さん。ただ今幻獣警戒警報が発令されました。直ちに所定の避難場所へと避難してください。外出されている方は、速やかに帰宅するか、もしくは最寄りの公共避難施設へと避難してください……』
「日常」が崩れた。
 合成音声によるアナウンスが流れた瞬間、街頭に出ていた人たちは、まるで遺伝子にでも刷り込まれたかのような素早さで姿を消し、店は次々にシャッターを下ろしていく。己の為すべきことに馴染んでしまった人間たちの姿がそこにあった。
 できれば、一生馴染みたくない類の変化であるには違いないが。
 そして、軍に所属することを定められた子供たちにもまた、いつものメッセージが届く。
『201v1、201v1。各員は直ちに現在の作業を放棄し、教室へ集合せよ。繰り返す……』
 見事なまでにルーチン・ワーク化した出撃命令のもと、彼ら・彼女らは一斉に走りだした。
 たとえ政治家がどんなに戦うことの貴さを声高らかに叫ぼうと、他の大人たちが戦場で子供たちが戦うことに心を痛めようと(もっとも、一般国民の大半には都合の悪いニュースは流されない)、矢面に立たされ、あるいは自らが存在をやめねばならぬかもしれない危険にさらされる学兵たちには関係の無い話であった。
 彼らが向かい合っている紛れも無い現実の前に、すべては力を失う。
 かくして、学兵たちは否応無く与えられてしまった存在意義を証明すべく、戦場へと馳せ参じることになるのである。

 とはいうものの、だ。

 じゃあ、普段から彼らがそんな小難しい事を考えているかといえば、決してそんなことはないのであって。
 彼らには彼らで、もっと身近かつ切実なところで悩まねばならない現実があるのである。

   ***

 士魂号を荷台にくくりつけた一〇トントラックは、半ば破壊された国道上を戦場目がけて驀進する。
「うー、腹へったぁ……」
 その車上でゴトゴトと揺られながら、滝川は世にも情けない声で呟いた。今は通信をオフにしているから、誰にも聞かれないのが救いではある。
 今は(本来なら規則違反なのだが)神経接続で外界と直接触れているから、さほどの閉塞感は抱かずに済むが、景色をみても腹は膨れない。
 深い深いため息をつくと、それに刺激されたかのように腹までが大きな音を立てて、己の存在を主張した。
「ちっ、分かってるからそんなに鳴くなよ。まったく、食うもんもろくに食えずに戦いったってなあ……、たまったもんじゃねぇよ」
 言ってみたところで、かえって空しさがつのるだけだった。
 と、オフになっているはずのレシーバーに、明らかに笑いを含んだ声が響く。
『おい滝川、何を悲嘆に暮れてるんだ。さっきから丸聞こえだぞ』
「え? あ、あっ、師匠!?」
 ……どうやらスイッチを切り間違えてたらしい。
 まさか聞かれているとは思わなかった滝川は、あわてて頭を上げる。
 反応は一つだけではなかった。
『こらタッキー、ウチのやってることに何か文句でもあるんかい! そんなに言うんなら、アンタがやってみればええやんか』
「か、加藤!?」
『なんならこれから配属変えを陳情しよか? アンタ、きっとたまげるでー』
 挑戦するような口調は、指揮車ドライバーにして敏腕事務官の加藤である。
 彼女の働きを知らぬものは小隊内にいないし、こと物資と情報に関して彼女に逆らうのは愚か者のすることである。
 あわててあやまろうとすると、女性の声がかぶさった。
『ねえ、滝川くん? 働かざるもの食うべからずって言葉、知ってる?』
 滝川は、思わず背筋に冷水でも浴びせられたかのように震え上がった。整備班長である原の声にはからかうような響きがありながら、それでいて氷のような冷たさがあった。
『まったく、貴様は何を言うかと思えば……』
『あまりお腹空いたって言わないでよ。こっちまでつられそうになるじゃない』
『修行が足りません!』
『ったく、チンタラしてんじゃねえよ! シャキっとしろ、シャキっと!』
 次々に入ってくる嘆息とも叱責ともからかいともとれる言葉に、滝川はすでに冷や汗をダラダラと流している。
 それでも何とか反撃を試みようとしたところで、思わぬとどめが入った。
『皆さん、作戦中の私語は禁止ですよ。少し静かにしなさい』
 さすがに小隊司令の一言には全員が口をつぐんだ。
「し、司令!?」
 もう、決定的という感じである。
『……滝川君』
「は、はいっ!」
 と、そこで善行の口調が変わる。
『君の言ってることは軍への批判なんですがね。さて、こういう場合には二コースありましてね。Aコース独房一週間、Bコース二週間給料なし、どっちがいいですか?』
「し、司令ぇ〜……。どっちも嫌です〜」
 尖った三角しっぽが見えそうな善行の声と、滝涙を流しているのがまざまざと見えそうな滝川のやり取りに、思わず失笑があちこちから漏れ、通信回線に笑いの声がさんざめく。
『ま、それは後で考えるとしましょう……少し遅れています。スピード上げ』
 元に戻った善行に、了解の声があちこちから入る。
 一番最後に力無い変事を返したのは、むろん滝川であった。

「やれやれ、あいつときたらまったく……。それにしても、司令もけっこう言うじゃないですか」
 善行は何のことだと言わんばかりの表情で、瀬戸内の顔を見た。
 瀬戸口はひょいと肩をすくめると、真面目くさった表情でコンソールに向き直る。
 善行は、司令席に深く腰掛け直すと目を閉じた。その表情は、さっきの剽けた口調など想像もつかないほどの厳しいものだった。
 ――食うものも食わせないで、か。その通りだな。
 本人は全く意識していないであろうが、滝川が口走ったことは意外に深刻な事実を含んでいたのだ。
 意図してかどうかのものは知らないが、最近の幻獣による攻撃は兵站線に集中したものが多く、つい先日も自衛軍の補給大隊が壊滅させられたばかりである。
 このため、生徒会連合の兵站もその影響を受け、補給状況が極度に悪化しつつあった。
 事実、武器弾薬等の戦闘補給はともかく、食料・被服・薬品等の生存補給はすでに一〇日ほど途切れたままである。
 今のところはともかく、この先の見通しは決して明るくはない。
 ――準竜師への直談判も考える必要があるな。帰ったら陳情しておくとしようか……。
 古来、飢えた軍隊が戦争に勝利した例はないのだから。

   ***

 ほぼ廃墟と化した山鹿戦区。あるのは半ば崩れかけた建物や立ち枯れたように焼け焦げた樹木ばかりであった。
 戦線左翼に迫る形の丘陵部もその例外ではない。所々に砲撃が着弾したことを示すクレーターがあり、樹木に覆われているはずの場所は、そのあたりだけ赤茶けた地肌をさらしている。
「司令、各機目標点へと展開完了しました」
 善行は僅かに頷くと、マイクを取り上げる。
「総員に達する! 敵はミノタウロス三を中心とする約四〇。戦区中央部を直進突破するものと思われる。我々はこれを迂回包囲し、側面部より痛撃を加える。質問は?」
 返事はない。瀬戸口の声が静寂を破った。
「敵、前進を開始! 針路は当初予測範囲内」
 善行は軽く上げた手を振り下ろしながら叫んだ。
「小隊、前へ! 人類に勝利を!」
 鈍い音とともに、意外に軽快な動作で鋼鉄の侍が動き出す。その脇を影が走るような速度でスカウトが駆け抜けていった。手には四〇ミリ高射機関砲が握られ、銃身が鈍い光を放っている。
『二番機、滝川は左翼に展開、丘陵地に狙撃ポイントを確保しろ。……へたばってる場合ではないぞ』
『ちぇっ、わあってるよ!』
 舞の指示にいささか乱暴な返事を返すと、滝川の操る二番機が軽装甲型ならではの速度で突っ走って行く。通信回線内に苦笑が漏れた。
『くそう、誰だ笑ったの!? 滝川、前進しますっ!!』
 ほとんど自棄じみた声を上げながら移動を続ける二番機を見て、舞は軽くため息をついた。
「滝川、あんなんで大丈夫かなあ?」
「放っておけ、これでだめならそれまでのことだ」
 いささか心配げな速水に向けて、なんともあっさりした口調で舞が答えた。滝川に言わせれば何と戦友甲斐のないと言いそうだが、さっきの今ではまあ致し方あるまい。
「ま、そうかもしれないけどさ……」
 速水はあっさりとうなずくと、チャンネルを切り替える。
 ……戦場とは、かくも無情なものである。
「壬生屋さん、僕らは右翼より突入するから露払いを頼むよ。タイミングは適当に見計らって。後詰めは引き受けたから」
「承知しました。後ろはお任せいたします。……壬生屋未央、行きます!」
 スピーカーから気合の入った声が流れ出した。
 壬生屋にしてみれば、こういったざっくりした指示の方がかえって動きやすかった。あまりに細かすぎる命令は彼女の性には合わない。
 それを理解していたからこそ、速水たちも敢えてそのような言い方をしたのだ。
 たちまち漆黒の重装甲をよろった一番機が、敵の視線を避けるようにして接近を開始する。突貫娘とか猪突重戦車とかあだ名された彼女も、戦歴を重ねればそれなりに成長するのだ。
 三番機は少し距離を開けて、鈍重さで定評のある複座型とは思えない動きで追随を開始した。まだ敵はその動きには気がつかない。
 遮蔽物が彼らの姿を隠しているのもあるが、幻獣どもの視線は、囮とかく乱役を兼ねて飛び回るスカウトと、意外に正確な照準でライフル弾を叩きつけてくる二番機に集中していたからだ。

   ***

 若宮は砲撃で出来た窪みの中にしゃがみこむと、膝立ちの姿勢で四〇ミリ高射機関砲を構え、慎重に狙いを定めた。
 照準の中に何かうごめくものが入ってくる。ゴブリンだ。醜悪な面をあたりに向けながら、殺せる奴はいないかと漁るかのようにゆっくりと近づいてくる。
 ――照準修正、右一つ。
 口には出さずに呟きながら、銃身をわずかに右に動かし、引き金を引く。
 発射。
 一斗缶を叩いた音を百倍ぐらい鋭くしたような、かん高い轟音が周囲に満ち満ちる。
 第四世代ならとても耐えられないような猛烈な反動を、わずかに上体をそらすことで吸収した若宮は、すぐさま照準を覗き込んだ。一瞬の間をおいて小爆発が起き、ゴブリンが砕け飛び、霧散した。命中だ。
 さすがに、数発当てれば航空機すらバラバラにしてしまう四〇ミリ機関砲である。個人携帯兵器としては抜群の破壊力を誇っていた。まあ、第六世代ならではの携帯兵器ではあるが。
 トイレットペーパーの芯ほどもある薬莢が自動的に飛び出して、岩に当たって硬い音を立てながら転がっていく。
「後は、弾数がもう少し多けりゃな……。あと重量がなぁ」
 今はなきスウェーデン・ボフォース社によって開発されたこの機関砲は、開発時期が時期だけに(なにしろ最初期型のマークTは一九三六年の制式化である)、大重量弾薬の連続給弾に不安があったのか、それとももともと艦載兵器だから、人力装填に頼っていたせいかは知らないが、装弾数が極端に少なかった。
「と、もう弾切れか……」
 若宮は腰のパウチから四発の四〇ミリ弾がセットになったクリップを取り出すと、装弾口に突っ込んだ。
 これが制式の弾倉なのだから、そりゃ少ないはずである。
 若宮は装弾の完了した機関砲をよっこらしょ、という感じで持ち上げる。二メートル以上ある銃身が、ブンと音を立てて敵に狙いを定めた。
 原型より多少軽くなったとはいえ五〇〇キロ近い重量は、いかな若宮でも羽のように扱うわけにはいかなかった。
 少し離れた場所から、チェーンソーのような音とともに連射音が響きだした。同じく展開している来須が小隊機関銃を撃ちはじめたらしい。いつの間にか接近していた小型幻獣が、これできれいに吹き飛んだ。
「おう、すまんな!」
『……気にするな』
 いつもの寡黙な声が答えた。聞くものにどことなく安心感を抱かせる声だ。
 若宮も数発発射し、射撃ポイントを変更しようとした時、突然、レシーバーに滝川の声が響いた。
『き、緊急、緊急連絡!』
「どうした!?」
 ただならぬ声に緊張をはらみながら若宮が応答すると、滝川は明らかにあせりを含んだ声で話し始めた。
『た、大変だ! お、俺はとんでもないものを発見しちまった……。みんな、す、すぐ来てくれぇっ!!』
「なんだそりゃ? ……ともかく、ここの掃討が完了したらすぐ移動する、それまで持ちこたえろ!」
 それから一分もしないうちに、スカウトの二人はウォードレスの筋力を最大レベルに設定して、移動を開始していた。
 ――それにしても、一体あいつ何を見つけたんだ?
 それを知っていたら、ここまで急いでいたかどうかは……少なくとも若宮は同じだったかもしれない。

   ***

 ここで、時間は少し遡る。
 戦場に立つものの共通認識として、幻獣は世に言うほどのただの化け物でも愚かなものでもない、というのがある。
 学兵たちの台所を苦しめている兵站攻撃もそうだが、戦場においてもかなりの連携を感じさせることが多々あるからだ。ただし、それと同じくらい、全く統率の見られない単純な力押しをしてくることもあるのだが。
 今回の幻獣の攻撃は後者だった。すなわち中央突破を計ると思われる一点集中――というよりは、単なる突っ走りという感じだった。
 戦術は単純でも、そのままの戦力で一挙になだれ込まれたらたまったものではない。針路を捻じ曲げる必要がある。
 滝川がスカウトたちとともに戦線左翼に陣取った理由はこれである。
 可能な限り樹木を楯にするような格好で膝立ちになる。といっても、何せ士魂号ゆえ、完璧に隠れるのは不可能だったが、何もしないよりははるかにマシだった。
 場所を確保した二番機は、九二ミリライフルを両手に持つと、流れるような動作でそれを構えた。
 神経接続によって拡大された視界の一角に、緑色の照準環が現れる。
「電影クロスゲージ、明度二〇。システム正常作動。初弾装填開始」
 それと同時に士魂号の右手が動き、コッキングハンドルが引かれて九二ミリ弾が薬室に送り込まれる。弾倉にはもう一つ弾倉が逆向きにくくりつけられていた。
 映像をズームすると、それまでごま粒のようだった幻獣が明瞭に認識できた。まだこちらには気がついていないのか、視界右手に向かって悠々と進軍している。チャンスだ。
 滝川はミノタウロスに照準を合わせた。まずは先頭の大物をつぶして、列を乱すつもりだった。
「距離八五〇、目標移動速度毎時五キロ、風は、なし。ターゲット・ロック」
 照準環がミノタウロスに合致したまま移動する。銃身もそれに合わせて調整がなされているはずだ。
 たっぷり二呼吸分それを確認した後、最後の命令を下す。
「発射!」
 神経接続されたトリガーが「引か」れ、轟雷に似た圧力を伴う音があたりを圧する。
 約二秒後には砲弾がミノタウロスに命中し、頭部をざっくりと抉り取った。ミノタウロスはほんの少しの間ゆらゆらと立っていたが、やがてどうと倒れこむ。
「やった!」
 だが、滝川が素直に喜べたのはここまでだった。幻獣が次々に射線を合わせ、二番機に向けて一斉に攻撃を仕掛けてきたのだ。下手に統制が取れていない分、その攻撃密度はかなりのものとなり、たちまち周囲にレーザーがはじき飛び、ミサイルの破片は立ち木に突き刺さって、それをなぎ倒した。
「うわ、うわ、うわわわっ!!」
 慌てて姿勢を低くしたのが良かったのか、幸い二番機には命中弾はなかったが、カモフラージュを剥ぎ取られて姿が丸見えになっていた。
「やっべぇ、後退後退っと……、ん、何だありゃ?」
 むき出しになった地面に何かがあった。ズームにしてみると何やら小さい物体がびっしりと生えている。
「……あっ! あれは!」
 滝川は驚愕の叫びを上げると、慌ててその場に駆け寄った。
 滝川が見たもの、それは――
 地を埋め尽くさんばかりに群生するキノコの群れだった。次の瞬間、彼の大音声が通信回路を駆け巡る。
「き、緊急、緊急連絡!」
『どうした!?』『何があったんですか!』
 滝川は呼吸を整えると、声を限りに叫んだ。
「た、滝川百翼長、グリッド二八四五―三三六二にて大量の……キノコ発見!」
 それを聞いて一瞬レシーバーが沈黙したかと思うと、複数の声が入り乱れた。
『何だと!? それは本当か!?』
『た、滝川、そんなにたくさんあるの?』
『ふ、不潔ですっ! じゃなくって、ステキです!』
『状況を正確に報告しなさい!』
『テメェ、独り占めすんじゃねーぞ!』
「……えーっと、あの、一面キノコだらけなんですが」
 皆のあまりの勢いにいささか引きながら、滝川が続報を送ろうとした時、幻獣の第二波攻撃が周囲に着弾した。再び樹木が引き倒され――キノコが吹き飛び宙を舞う。
「ああっ、何しやがんだ! 緊急、緊急! 現在キノコが敵の攻撃を受けている。総員、キノコを守れッ!!」
 滝川の叫びに呼応して、力強い返事が満ち溢れる。
『了解! 壬生屋機、キノコの援護に向かいます!』
『舞だ、ただいまより敵中に突入、キノコ前面の敵を掃討する! 厚志、急げ!』
『了解!』
『こちら若宮、側面は引き受けた!』
 普段なら考えられないほどの勢いで、士魂号やスカウトはおろか、指揮車までが全速で突入していく。
『オールハンドゥガンパレード! 今ここにあるキノコのために! 全軍、突撃ッ!!』
『おおっ!!』
 ……君ら、さっき滝川になんて言っていたか覚えてる?
 げに、まっこと恐ろしきは食欲なるかな。

 それから五分後、幻獣は全滅した。
(つづく)


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