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「みょうじ、おはよう」

『あ、柳くんおはよう』

今日の朝、柳先輩に挨拶されて顔を真っ赤にする姉ちゃんをみた。
なんだあれ。

「よぉ、湊」

「ジャッカル先輩、おはようございます」

そんな二人をドン引きしながら見ているとジャッカル先輩に挨拶された。

「先輩、いつもこんなの見てるんですか?」

「まあ、そんな感じだ」

お疲れさまですと言うとお前なぁと言われた。
姉ちゃんに気が付かれる前にジャッカル先輩に失礼しますと告げ教室に向かった。


*****

「みょうじ、なんか一年生が呼んでるぞ」

昼休み。
お昼御飯を食べようとジャッカルと机をくっつけているとクラスの男子に呼ばれた。

そっちの方を見ると湊が立っていた。


『みなと!』

「ども」

なんで湊が三年生の教室にいるんだろう。あれほど学校では他人のふりって言ってた湊が三年生の教室にいる。

それが嬉しくて抱きつこうとしたら全力で阻止された。痛い……



『なんて暴力的な後輩』

「姉ちゃん、英語辞書持ってない?てか不真面目な姉ちゃんなら置いて帰ってるでしょ、貸せ」

『全くもう、酷い言いぐさね』


この弟はいったいお姉ちゃんをなんだと思ってるんだ。

『まあ、持ってるけどね』

「だって姉ちゃん家で辞書開いてるとこ見たことないし」

『待ってて、取ってくる』

「ん」

廊下で湊を待たせてロッカーを探す。と言うかロッカーの中がカオス。
しばらくぐちゃぐちゃのロッカーを漁っていると分厚い本を見つけた。取り出すと広辞苑だった。

『ちくしょー!』

なんでこんなに汚いんだ私のロッカー!

やっと見つけた英語辞書を持っていく。
あら何だか、三年女子に囲まれてない?

「うわぁ、こんなぐちゃぐちゃの辞書見たことない」

『あのね、湊とは違って私のはお兄ちゃんのお古なんだから』

あっそうと言って私の辞書を受け取ったらじゃあねとさっさといなくなってしまった。

『いつも以上に可愛くない!!』

「まあ、落ち着けよ。湊だって学校で家みたくベタベタしたくねぇんだよ。ほら飯食おうぜ」

『そんな私の愛は重たいの!?』

「うん」

席につくとジャッカルが弁当をもぐもぐ食べ始めた。


「そんなに落ち込むなよ」

『………………うん』

と言うかなんかご飯食べ始めた途端皆がこっち見てるのは何故?

「みょうじさんってどういう関係なんだろうね?」

「ていうかみょうじさんってなんでイケメンとばかり知り合いなの!?」

「………………」
『………………』

おいおい聞こえてるぞ。なんでイケメンとばかり知り合いなのって知らないわよ。

テニス部は基本的にジャッカルのせいよ。

『な、ジャッカル』

「俺かよ!」

『お前だよ』


ジャッカルのせいにしたついでに玉子焼きを頂戴いたす。

「ああっ!」

『やはり桑原家の玉子焼きは美味いな』

もぐもぐ食べてたらジャッカルに殴られた。暴力反対!


『てか、私の知り合いの何処にイケメンがいる?ジャッカルなんてありえないしよ』

「さぁ?皆、普通じゃね」

『てか湊があんなに人気あるとは思わなかったわ。悪い雌猫がつく前に手をうたないと』

「雌猫って跡部かよ」

『誰だそれ』

「いや、なんでもねぇよ。あ、肉巻きもらいっ」

『ああっ!』

今度は私の肉巻き取りやがった。


「みょうじ」

『ひゃああっ』

「柳」

ジャッカルのほっぺをつねり伸ばしている後ろから肩をぽんっと叩かれた。

思わず叫んでしまった。


「驚かせてしまってすまない」

『や、柳くんっ!?い、いやぜんぜん大丈夫!あの…な、何か用?』

「ああ、精市にこれをみょうじに渡しておいてくれと頼まれてな」

『ん?』

柳くんから紙袋を受け取り中身を見て驚愕した。

そこには柳くん(中1)のブロマイド&前から頼んでいた恋愛小説が入っていた。

『ひゃーひゃーひゃー!!』

「何かが嬉しいものでも入っていたのか?」

『うん!』


よかったなと柳くんは笑っていた。

「ところでみょうじ」

『はい?』

「今度の日曜日、空いているか?」


その言葉に私は思考停止した。




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