04




その日は城内に泊まるように言われ、フユは与られた一室にいた。
魔王と戦うことは怖かったが、町中のみんなと一緒ならば、なんとかなるかもしれないと思った。
何よりフユは自分が必要とされていることが嬉しかったし、この戦いに勝てれば楽しい生活が待っていると考えて、幸せな気持ちになった。

帝国のために、なんとしてでも勝とうと思った。

大臣が言うには、魔王が攻めてくるのは明日の夜らしい。
それならば今日は早く寝て、明日のために備えることにしようと、フユはベッドに入る。
決意を新たに、嫌な記憶を呼び覚ますこともなく、ゆったりと眠りについた。




フユは禍々しい気配を感じて目を覚ました。眠りについてから、まだそう時間は経っていない。日付も変わっていないはずだ。

しかし、たくさんの悪魔の気配がそこら中からするし、何より一つの強大な魔力の気配も感じた。
フユは何かを考えるより先にベッドから飛び起き、愛用の剣を持って部屋を飛び出した。

明日の夜に攻めてくるはずが、今夜来てしまった。
不意をつく形で現れた悪魔たちに、城内はさぞ混乱していることだろうと思ったが、その予想に反し、部屋の外の廊下は静まりかえっていた。
それどころか、人の姿が見当たらない。巡回をする兵士すらもいない。

フユは混乱する頭を振って、考えを巡らせた。
おそらく魔王のものと思われる大きな魔力は、王室から感じる。きっと兵士たちはそこに行っているのかもしれない。
それならば自分も早くそこに行って、国王を守らなければ。

そんな結論に至り、フユは王室に急いだ。
途中、何匹かの悪魔に出くわしたが、なぜかフユに立ち向かうことなく、彼らは走るフユをただ見送っていた。それに不思議に思ったが、無駄な戦いを避けられたことを幸運と思うことにして、フユはとにかく走った。

やがて王室の前に着き、フユは大きな扉を開けた。
中から強大な魔力を感じ、心が恐怖で震えたが自分は一人ではないと気持ちを奮い立たせた。
止まりそうな足を叱咤して、一歩ずつ王室に入っていく。
広い王室の中央には玉座があり、そこに国王ではない、一人の男が腰掛けていた。

尖った耳は、フユと同じ形だ。
短い黒髪のその男は、美しい顔をフユに向けていた。
少し浅黒い肌。すっと通った鼻筋。
意思の強そうな目は、ずっとこちらを見つめている。

フユは男の姿に惚けていたが、やがて我にかえり辺りを見渡した。
しかしこの室内には、男と自分、そしてたくさんの悪魔がいたが、国王や城の兵士は一人も見当たらない。

まさか、すでに殺されてしまったのだろうか。

顔を青ざめさせ、唾を飲んだフユを見て、男は笑った。

「フユ、よく来たな」

低い男の声は、フユには聞き覚えがあった。フユは驚いて、その男を見る。

この声は、ずっと脳内でしていた。

「シス……?」

フユの問いかけに、男は、満足そうに頷いた。相変わらず禍々しい魔力を放つ男に、フユは信じられないと首を振った。







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