その後




バイトが終わった誠を呼び、千葉の隣に座らせた。誠は、お腹減ってるんだ!と呑気な笑顔で言い、注文を済ませる。
その様子を眺めながら、千葉は口を開いた。

「まこ」
「え」
「付き合ってんのバレた」
「うそ」

井沢にバレたらマズイので、彼の前では誠のことは苗字で呼んでいた。それがいきなり愛称で呼び出したものだから誠は驚いたが、さらに告げられた言葉に、驚きを通り越してポカンと口を開けた。
それを見て、井沢が笑う。

「まこに恋人できたんだろうなっていうのはすぐ分かったんだ。その相手が千葉さんだってことに気付いたのは最近だよ」
「え、なんで千葉さんだって分かったの?」
「駅の方に住んでるって言ってたし、千葉さんはまこに惚れてたし」
「井沢」

井沢の言葉に千葉が焦ったように噛み付くが、もう遅い。
へ、と間抜けな顔をした誠がそのまま固まってしまった。

「いつからかは俺も具体的には知らないけど、一年半前にまこが千葉さんに背負ってもらって帰った時にはもう惚れてましたよね? だから俺電話で迎え頼んだんだし」
「もうお前黙れ井沢」

さすがに恥ずかしくなってきた千葉が井沢を睨むが全く効かず、彼はニコニコしている。誠はと言えば、未だ顔を真っ赤にして固まっていた。

「……まこ、落ち着け」
「だ、だって千葉さん」
「え、まこって千葉さんって呼んでるの?」

ふいに誠の口から出た名前に、井沢が目を見開く。交際一年半にして苗字呼びなのか、とその表情が語っていて、誠も苦笑する。

「うん、ずっと千葉さんって呼んでる」
「でも付き合って長いだろ」
「なんか、しっくりくるし」

本当はただ気恥ずかしいだけなのだが、そんなことは井沢に言わない。
しかしもちろん井沢も黙っていない。

「えー、でも千葉さんは下の名前で呼んで欲しいですよね!?」



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