03




千葉のおかげで、誠は快適な毎日を送っていた。
千葉が巡回を辞めて二週間が経つが、これと言ってストーカーの被害はない。
長い間気味の悪いストーカーに脅かされてきたが、やっと解放されるのだと、誠は喜んだ。
そのせいもあり、最近ずっと控えていた飲み会や合コンにも顔を出すようになった。

「まこー。飲み過ぎだってお前」
「いいんらよ! もうおれにこわいものらんてらいもん! 夜おそくに帰ってもへーきらもん!」
「はいはい、よかったな」
「ちばしゃんが、ちばしゃんが、ひっく、うぅ」
「もー。ほら、トイレ行くぞ」

合コンの席で誠は盛大に酔っ払っていた。久しぶりに飲むお酒にテンションが上がり、女の子そっちのけでひたすら飲んでいた結果がこれである。
井沢に支えられながら、トイレで気持ち悪さと戦う。

「井沢ー気持ちわるいよー」
「だから飲み過ぎだって言っただろーが」
「ごめんねー」

トイレに突っ伏しながら吐き気を持て余す誠。酔いはさめず、未だヘラヘラしている。気分が悪いくせに、よほど機嫌が良いようだ。

「もうお前帰れよ。飲み過ぎだし」
「うー、そうしよっかなー。お酒おいしかったから、おれ幸せー!」
「はいはい」

やたらとハイテンションな誠に苦笑しながら、井沢は誠の荷物を取りに一旦席に戻った。その時あることを思いつき、携帯電話を取り出すと、どこかに電話をかけ始める。

「あ、俺です。すみません、ちょっとお願いがありまして」

不機嫌そうに電話に出た相手にそう言いながら、井沢は水を持って再び誠の待つトイレに戻った。


「まこー。平気?」
「んー、楽になっらかもー」
「まだ酔ってんなー」

電話を終えた井沢は誠に声をかけると、水を手渡した。誠はそれを受け取りごくごくと飲む。水が飲めればきっと少ししたら楽になるだろうと、誠の様子を見ながら井沢は考える。
それから、誠を支えながら立ち上がらせた。

「歩ける? 吐きそう?」
「吐からい! でもあるけらい!」

吐き気は収まったようで、確かに先ほどよりスッキリした表情だ。しかし足元はおぼつかず、とても一人で帰れるとは思えない。
井沢はやれやれとため息を吐きながら、誠を支え店の外に出た。

「まこ、女の子が一人まこみたいに潰れちゃってるから、俺その子の介抱してくる」
「おう!」
「でもまこを一人で帰らせる訳にはいかない。だから、先輩を呼んだから」

店の前の歩道の端に座らせた誠は、井沢の話を聞いているのか途中で舟を漕ぎ始めた。すぐにスヤスヤと寝てしまい、子どものような顔を見せる。
ストーカーの被害が凄かった時は本当に弱っていたから、こうして元気になって良かったと井沢は心から思った。




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