「シャンクスは留守番な」 「えーっ」 「お前を歓楽街なんかに連れてったら、スオウが怒るだろ」
先輩達がにやにや笑って、なァ?と顔を見合わせる。 新しい島について二日目、夜の遊びが盛んなここで普段の欲求不満を発散しようと浮き立っていた先輩達は、社会勉強という名目で見習いも連れていってくれると言ったのに、おれだけにはこの一言。 なにも絶対に行きたいとか溜まってるとかいうわけじゃない。今は女やギャンブルよりも海に出て色んなものを見る方が楽しい。だけどおれだけ仲間外れ、まして理由が理由だけに腹が立つ。バギーなんかは先輩達より余程にやにやと笑って、今にも馬鹿にしてきそうだ。むかつく。
「スオウさんは関係ないだろ!」 「いやァ大有りだろ。なんせスオウはお前がだァいすきなんだからなァ」 「だからあれはおれをからかってるだけで…!」 「おれは本気と見たね。だから言ったろ?シャンクスお前ケツ狙われてんだって!」 「バギーは黙ってろ!」 「なにおう!?」
「 うるせェなァ、なに騒いでやがる」
取っ組み合いになりかけたおれとバギーを、止めたのは不機嫌そうなスオウさんの声だ。「げっ」と悲鳴を漏らしたのは先輩達の誰かで、他の誰かが言い訳を始める。「いやな、おれたちが遊びに行くっつったらシャンクスが自分も連れてけって駄々こねてな…いやもちろんおれ達は連れていく気なんかないぜ!?」。やけに必死な声は、不機嫌なスオウさんを下手に怒らせたくないからだろう。だけどおれはそこまで駄々をこねてない。ただ、腹は立ってる。おれはスオウさんに行動を制限される覚えなんかないのだ。
「スオウさん!あんたおれが女抱いたって別に構わないだろ!?」 「わっ、シャンクスばか…!」 「おれはあんたのものじゃないし、あんただっておれをからかってるだけなんだから、そうだろ!?」 「…なんでそういう話になったかは知らねェが、」
好きにしろよ。関係ねェ。 ひんやりとした声のスオウさんは、いつもみたいににやりともからかいもしないで、おれ達に背中を向けて部屋に戻ってしまった。 なんだか、拍子抜けだ。冗談でも引き止めてくるか、下世話に囃し立てて送り出してくれると思ったのに。
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