不名誉な噂が流れている。おれがスオウさんのお手付きだというのだ。この間の公開告白のせいだと思うけれど、あんな胡散臭い言葉と見せ付けるようなキスが本気だと思うのなんて小さな子供くらいだろう。きっとみんなそれを解っていて、その上でおれをからかって遊んでいる。
「 そういうのは本気で否定するから逆に怪しくなるんだよ。軽く流しときゃァすぐにみんな飽きる」
甲板の上でハンモックに揺られながら新聞を読むスオウさんは、しれっとした顔で言った。あんたが悪いくせに。口に出さなくてもおれが言いたいことが解ったんだろう、スオウさんは新聞から少しだけ視線を外しておれを見ると、にやっと笑った。「お前だって、キスしても嫌がらなかったじゃないか」。確かにそれは、そうだけど。
「あんたが何度も何度もするから、慣れちまったんだよ」 「へェ」 「嫌がっても無理矢理押さえつけてするくせに」 「しねェよ」 「嘘つき」 「お前が本当に嫌がったら、しない」
静かに言った声が、この間の告白より余程告白らしくて驚いた。きょとんとしてしまったおれの顔を見て、一層にやぁっと笑う顔に気付く。またからかわれたんだ。くそ。
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