「おい、気付いてるかシャンクス」
バギーがどこか顔色を青くしながらおれに話し掛けてきた。「なんだよ」。おれは武器を磨く手を動かしながら返事をする。バギーはさも猟奇的な事件を目の当たりにしたかのようにわなわな震えながら、おれを指さして言った。
「スオウさんって、セクハラは誰にでもするけど、キスはお前にしかしねェんだぜ」 「…………………へェ」 「へェ、って、おま…っ!驚かねェのかよォ!?」
声が裏返っているバギーはスオウさんが誰にでもキスをすると思っていたらしい。確かにおれもそう思っていたけど、違うと気付いたのは随分と前だ。口紅を無理矢理塗りつけて、ニヤニヤ笑いながら、ちゅう。まるでそれが宴会芸のようになっていたから、標的になったやつは逃げるし周囲はげらげら笑っている。だけど実際にキスまでされていたのはおれだけだ。バギーなんかはピエロのようだと笑われているし、他のやつらも口の中にやらしく指を突っ込まれたり唇を撫でられたりするだけでなんだかんだとキスする前に解放されている。
「うーん、何でだろうな?」 「ヘンタイなんだよヘンタイ!やべェってあの人オメェのケツ狙ってンだよ!」 「ははは、バギー、あの人がヘンタイなのは前々からわかってたことじゃねェか」 「アホかァ!知らねェぞテメェが男に掘られたらおれは思いっ切り軽蔑してやっからな!」
ぷんすか怒りながらバギーは武器を放り投げて、またサボるためにどこかへ行こうとする。
「今度こそ、バギーもキスされちまうかもな」
…あ、戻ってきた。
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