「つまりな、昔はお前もかわいかったという話だよ」
レッド・フォース号、船長室。 客人のはずなのにおれより余程くつろいで、おれの膝枕でうとうとしながら昔話を始めたスオウさんは、怨みがましくそう呟いておれの赤い髪をちょいと引っ張った。 あれから歳月を重ねて、おれはおじさんと呼ばれてもおかしくない歳になったし、スオウさんなんてもう初老だ。お互い変わらずにはいられないのは分かっているだろうに、それでも拗ねた顔をするスオウさんは昔よりずっとかわいくなった。そう思えるようになったのは、この人の理解出来ないところが理解出来るようになったかもしれない。
昔から、素直なようで素直じゃない。嘘は言ってないはずなのに一番大事なところを隠してしまうから、バギーなんかは今でもこの人のことを誤解している。誰にでも簡単に手を出す節操なしだと思っている。 本当は昔も今も、おれのことが大好きだ。そりゃあもう、他なんて眼中にないくらいに。
「…何にやにやしてる」 「んー、別に」 「そういうところが、かわいくない」
むくりと起き上がって、スオウさんはおれの口に噛み付いた。 間近で見る顔は一番古い記憶の中のスオウさんより沢山皺が増えていて、かさついた肌も低くゆっくりと話すようになった声も老いの象徴でしかないというのに、衰えの見えない肉体や年を重ねて一層含みを持った表情は相も変わらず色っぽい。この人だったら老若男女思い通りのはずなのに、おれみたいな『かわいくない』おじさんにグランドラインくんだりまでわざわざ会いに来てセックスしていく理由はひとつしかないんだ。スオウさんは独り身が寂しいとかなんとか言うけど、週3でレイリーさんと呑んで、他にもちょいちょい遊びに行くくせして、寂しいわけがない。おれのことが好きで好きで会いたくて堪らないから来るんだって言えないこの人は、やっぱり、かわいい。
「…わ、ちょっと待てって、まだやんのか?」 「おれより若いんだから余裕だろ」 「あんたすごいねちっこいから疲れるんだよ」 「疲れるのはお前がすぐヨガるからだ」
誰がこんな体にしたと。 言いかけた言葉を飲み込んで、胸元を滑る大きな掌に息を飲んだ。自他ともに認めるヘンタイのこの人は、おれが分別のつく『大人』になるまで我慢した分、『大人』になってからが本当にヘンタイだった。今から何をされるか考えただけで、おれの下半身は熱くなる。
「…かわいいシャンクス。おれはお前がだァいすきだよ」
おれの反応を見透かして、ニンマリ笑うチェシャ猫のような口。いやらしくって、ぞくぞくする。この口がおれを追い詰めて辱めて、それからいっぱい、きもちよくするんだ。
「…さっきまでかわいくないって拗ねてたくせに、現金なじいさんだよ」 「はっは、あんまり生意気な口を聞くと虐めちまうぞ」 「うわ、ちょっ、待っ…!」
前言撤回。 やっぱりこの人、かわいくない。
|