「お前がこの船の見習いで良かったと思うよ」 「…なんで?」 「おれより弱くて格下で単純で、その気になればいつでも手込めに出来るから」
あんまりだ。この人はきっと、人の口説き方というのを知らないんだろう。こういう時ってもっと、お前に出会えて良かったとか歯の浮くようなこと言うもんじゃねェのかな。 けれど腕の中から抜けだそうと暴れるおれに、スオウさんは顔中に柔らかいキスを降らした。無理矢理手込めに出来ると言ったわりには、怒ったおれを宥めるようなキスだ。くすぐったくて気持ちいい。
「シャンクス、やらしい顔してる」 「…あんたもな」 「口にキスしていいか」 「…なんで今更聞くかなァ」 「いつものキスじゃないからだよ」
にんまり笑う顔が、いつもと違って意地悪じゃない。優しくて穏やかで、嫌だって言ったらすぐに解放してくれそうだ。 おれは何にも言わずに、ただ顎を引いてスオウさんの目をじっと見た。 「舌、出せ」。静かな声と、ぴったりくっつい体にすごくどきどきする。薄く口を開いて、言われた通りに少しだけ舌を出すと、スオウさんの掌がおれの視界を覆って目の前が見えなくなった。舌に何か触れて、体がびくりと震える。何かはすぐにおれの口の中に捩込まれて、ぬるぬると粘膜を擦った。
「ん、ん」
背筋がぞくぞくして、弓なりに沿った体にスオウさんが覆いかぶさってくるのが解る。顔が見たい。今、この人はどんな顔してるんだろう。 瞼を押さえる掌を掴むと、スオウさんの舌が口の中から器用におれの舌を引きずり出して柔らかく噛んだ。赤ん坊みたいにちゅうちゅう吸われると、やばい。ちんこ勃ちそう。こんな密着してたらすぐにばれちまう。 腰を引こうとして、だけどスオウさんのもう一本の腕に強く掴まれているからそうもいかない。それどころか跨いでる腹をぐりぐり押し付けられて、直接刺激を与えられたらどうしようもなくなる。気持ちいい。いきそう。
「んん、ふ、ぅっ、う」 「…やらしい、勃ってる」 「だ、って、こんなんされたら…」 「うん」
相変わらず顔は見えないけど、唇だけ触れたまま喋る声が、いつものスオウさんらしくなく、嬉しそうに上擦っている。この人も興奮してるんだと思ったら体ががどうしようもなく熱くなって、スオウさんにしがみついた。このままやられちまうのかな。スオウさんだったら、まあ、いいかなァ。
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