「おいこらシャンクス、待て」 「うわっ」
背後から腕が伸びてきて、あっさりと捕まってしまった。おれを追い掛けてきたスオウさんは、「なに逃げてんだ」と耳元で囁くと、仄暗い納戸の中におれを引きずり込む。ぎゅうぎゅう抱きしめられて、ばくばくうるさい心臓がスオウさんにも知られてしまいそうだ。顔が熱くて堪らない。直接好きだとも言われたわけじゃないのに、言葉で表された独占欲はおれに真っ直ぐ向かってきていた。好きだと言われているみたいに。だからなんだか、恥ずかしい。
「…うわ」 「な、なんだよ」 「シャンクスお前、すごいな」 「なにが!」 「赤くて熱い。なに、照れてんの?」 「ちげェよ!」
否定はしたけど、その通りだ。知られたくなくてスオウさんから離れようと暴れてみても、スオウさんはおれの抵抗なんて無いもののようにおれを抱え直して押さえ込み、正面からじっと顔を見られてしまう。動けない。視線を逸らして「やだ」と拒んだはずの声は自分でもわかるくらい甘ったれていて尚更恥ずかしくなった。
「…かわいいな、お前」 「うるせェへんたい」 「悪い口だ」
ちゅ、とスオウさんが何も塗られていないおれの唇にキスをする。「お前、おれのこと好きだろ」。問うよりも確認の意味が強い口調に、隠しようもなくまた顔が熱くなった。
「…好きだよ、悪いか」 「いいや、悪くねェ」 「…スオウさんは?」 「何が?」 「おれのこと、大好きだろ」
心臓が壊れてしまいそうだ。痛くて苦しい。大して走ってもいないのに息が切れてる。 スオウさんはおれの顎を掴んで視線を無理矢理合わせると、目を細めてにんまり笑った。
「それは前から言ってるはずだろ?」
シャンクス、おれはお前が、だァいすきだよ。
いつもとおんなじ顔と、いつもとおんなじ台詞のはずなのに、目の奥は全然笑ってなかった。
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