シャンクス長編 | ナノ


「スオウさんとレイリーさんって付き合ってんの?」

ぶばっ、とハデな音を立てて、スオウさんの唇から綺麗に酒が噴射する。スオウさんらしくもない動揺した反応は、それだけでおれの疑問を否定した。スオウさんは恐ろしいほどの真顔で静かに濡れた口元を拭うと、おれの腰を引き寄せて膝の上に乗せる。顔が近い。「…なんでそうなった?」。聞く声がいつになく真剣だ。

「…いや、だって、昔から仲良いみたいだし」
「同郷だからな」
「よく一緒にいるし」
「話が合うからな」
「あとは…よくセクハラしてるし」
「コミュニケーションだ」

逐一律儀に答えたスオウさんは、一息ついてもう一度酒を呷る。「年長のあいつが先に海に出て、追い掛けるつもりはなかったがおれも色々あって海に出て、それでまた会った。それだけだ。ロジャーがいなけりゃ、あいつとおれは一緒にいねェよ」。

「…じゃあ別に、好きだとか抱きてェとかいうのはねェんだ?」
「当たり前だろ、あれはおれのおもちゃ」
「うわ、スオウさんサイテー」
「うるせェ」
「本当はレイリーさんのこと大好きなくせに」
「嫌いなわけねェだろ、おもちゃなんだから」
「…じゃあ、」
「ん?」
「おれは?」

おれも、スオウさんのおもちゃ?

じっとスオウさんの目を見て聞いたけど、スオウさんは何も言わない。背中を丸めて、触れそうなほど近付いた顔は表情が読めない無表情だ。
ごつん。額がぶつかる。もう見慣れた至近距離が、いつもとは違う空気をまとっていた。
ちがう、とも、そうだよ、ともスオウさんは言わない。「お前はどう思う?」。いつもこうだ。はぐらかす。だからおれは、この人の言葉を額面通りに受け取ることが出来ない。

「遊んでるだろ、おれで」
「…そう思うか?」
「そう思うよ」
「ふーん」

人を弄ぶ化け猫みたいに、スオウさんはにんまりと笑って、言った。

「シャンクス、おれはお前が、だァいすきだよ」


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